討伐部隊と戦場ジャーナリスト
どうもっ!! 皆さんっ!!
己の肉体っ! 鍛えてますかっ!?
私はポンズ王国に仕えていた元兵士でありっ! 武道家のヤマナカ=マッスルですっ!
前々作ではノンスタンスの起こした反乱を鎮圧するために、ゴリラ隊長...隊員やハリガネ軍曹...隊長と共に部隊で奮闘しておりましたっ!
今回は隊長と共に魔獣討伐へ向かうわけでありますっ!
しかし、違和感がありますなぁ~!
隊長といえば今まで王国軍だった時の部隊では、ゴリラ隊員が当時の隊長でしたっ!
しかしながら何かパワーバランスが変わってしまって、未だに躊躇している今日この頃でありますっ!
ですが、御二方の事は今でも大変尊敬しておりますっ!
~討伐部隊“勇者”ヤマナカ=マッスル隊員~
「チェダーチーズ山までは大分先だと思うので、場合によってはその手前のゴーダチーズ丘でテントを張って一夜を明かす事になりそうです」。
ハリガネは地図を眺めながら隊員達にそう答えた。
「まぁ、出発が遅れてしまったから仕方がないな。それで、ゴーダチーズ丘の周囲環境はどんな感じだ? 」。
ゴリラ隊員はハリガネの持っている地図を覗き込みながら問いかけた。
「丘には“モリオン”や“タンザナイト”といった鳥族魔獣の生息が確認されています。他にも狼族魔獣の“モスコバイト”がチェダーチーズ山から下りてくる可能性もあります。奴等は素早いし爪や牙も凶器そのものですね」。
「うむ...。奴等は人や獣の死体の腐肉も平気で食い尽くす。ゆえに病原菌も持っているかもしれん。噛みつかれないよう要警戒だな」。
「はい」。
引き続き、荷車と共にパルメザンチーズ山脈を目指していく討伐部隊“勇者”。
そして、そんな部隊“勇者”を後方から飛行絨毯に乗ってついていく男二人。
「おい、部隊内の打ち合わせだぞ。ここはしっかり撮っておけよ? 」。
チャールズは台本らしき本を持っており、カメラマンのフユカワに指示をしていた。
「了解っす」。
フユカワは両手から青白く光る円形の魔法陣を浮かび上がらせ、その魔法陣を利用してハリガネ達を背後から撮影していた。
「そうそう、予め言っておくけどさ~」。
ハリガネは不意に振り返り、後方で撮影していたチャールズ達に話しかけた。
「はい、何でしょう? 」。
「別に撮影するのは構わないけどさ~。その代わり自分達の事は自分等でやってくれよ? 自分達の食料とか寝床とか。そこまでは面倒見切れないからな~」。
「あ、そこら辺はちゃんと自分達でやっていきますんで大丈夫で~す! どうぞ、お構いなく~! 」。
「ああ、それなら良かったわ」。
「ところで、一つ申し上げてよろしいですか? 」。
「一つ...? 何さ? 」。
ハリガネは眉をひそめてチャールズにそう言った。
「ちょっと、隊員の方々と並んでもらっていただいてもいいですか? 」。
「何でよ? 」。
「いや、ちょっと部隊の集合画像が欲しいので...」。
チャールズの要望にゴリラ隊員は眉間にしわを寄せ、納得のいかない様子で表情を更に険しくしていた。
「あ? お前、ふざけてんのか? これからピクニック行くんじゃねぇんだぞ? 」。
「いやいや、ふざけてませんよ~。ちゃんと戦闘シーンも撮っておきますから~」。
そう言い返すチャールズに対し、ゴリラ隊員は凄い剣幕で再び詰め寄った。
「ふざけんなッッ!! アクション映画の制作に協力するつもりはねぇんだぞッッ!? 」。
「...」。
ハリガネはエキサイトするゴリラ隊員の肩を無言で叩いた。
「あぁッ!? こっちは取り込ん...」。
「...」。
ハリガネは呆れた表情を浮かべ、無言のまま少し離れた場所の方向を指差した。
ゴリラ隊員はハリガネが指差す方向に視線を向けると、他の隊員三人はフユカワの指導を受けながら撮影をしていた。
「こんな感じっすか~? 」。
パルスは鞘から剣を抜きポーズを取っていた。
「あ、もうちょっと上に手を挙げてくださぁ~い! 」。
「...ッッ!! い、何時敵に襲われるか分からない境遇に置かれているというのに...ッッ!! 」。
(あ~あ、怒ってらぁ~)。
ハリガネは肩を震わせて憤っているゴリラ隊員を横目で見つめていた。
「う~ん、頭に被っている防具で顔が見えないですね~。ちょっと外してもらってもいいですかぁ~? 」。
「了解っす~」。
パルスはフユカワの言われた通り、被っていた兜を外して素顔を周囲に晒した。
「ん...? 」。
「あれ...? 」。
チャールズとフユカワは怪訝な面持ちで、パルスの顔をまじまじと見つめていた。
「貴方はもしかして、失踪した...」。
チャールズがそう言葉を発した時、パルスは慌てて兜を被り直した。
「こ、こんな事してる場合じゃなかったっ!! 勇者隊長殿ぉ~! 早くゴーダチーズ丘へ向かわないと夜になってしまいますぞぉ~! 先を急いで拠点地を確保しましょうぞぉ~!! 」。
パルスはそう言うと、その場から逃げるように先へと歩き始めた。
「...」。
ハリガネ達は疑いの眼差しでしばらくパルスの背中を睨んでいた。