自然からの恵みもの
私は魔法が使えるのっ!
基本的には炎出したり、爆風放ったりで攻撃系の魔法が多いかなぁ~。
え?? 誰に教わったって??
私達ノンスタンスのリーダーであるデイ様から教わったのっ!
親のいない私達にとって、デイ様は親代わり...というよりお兄ちゃんかな~!
~ノンスタンスのメンバー、ワンムーン~
「いやぁ~!! えらい熱中してもうたなぁ~!! 」。
「でも、薬はたくさんできましたね~! 」。
人工的に掘って作られたと思われる奥の穴から、ホワイトやノンスタンスの青年達が姿を現した。
ホワイト達は金属製の鍋や薬の調合に使う道具を抱きかかえていた。
「パルスは~ん! 魔力薬を作り終え...あっ!! 」。
ホワイトは椅子に座って食事をしている彼女達の姿を見て驚愕した。
「ホ、ホワイト様っ!! 」。
ホワイトや青年達の姿を見た彼女達も目を丸くし、立ち上がるなり急いで彼等の下へ駆け寄った。
「み、みんな生きてたかっっ!! 大丈夫かっっ!? け、怪我とかはないかっっ!? 」。
「ホワイト様ぁ~!! 」。
「うぅ~!! 」。
「ひっぐっ...グスッ」。
「あぁ~! 良かったぁ~! ホンマに良かったぁ~! 」。
ホワイトは安堵感に満ちた表情で啜り泣く彼女達の頭を撫で、仲間達との再会を心から喜んでいた。
「おい、基地の隅っこに掘ってあるあの穴は何だ? 」。
そんなノンスタンスメンバー同士との再会を余所に、ゴリラ隊員は穴を指差して青年の一人に問いかけた。
「え~と、あの穴は地下の空洞に繋がっているんですよぉ~」。
「地下? 空洞? 」。
「まぁまぁ、ゴリラさん。穴に入ってみてくださいな~」。
「は、はぁ...」。
ゴリラ隊員は躊躇しながらも、パルスの言われるがままに穴の中へ入っていった。
穴の中は一本道となっており、大人一人が余裕で通れる程の薄暗い空間が展開されていた。
(俺は朝っぱらから見張り番で外にいたが、基地内からは確かに騒がしい音が聞こえてはいた。しかし、基地の内部でこんな穴が掘られているとは思わんかった...。一体、何で穴なんか掘ったんだ? )。
ゴリラ隊員は不審に思いながらも掘削された通路を歩いた。
通路は緩やかな下り坂となっており、すぐ先には眩しい光が差し込む入口が目の前に現れた。
「こ、これはっ...!! 」。
入口に入ると、ゴリラ隊員の目の前に青色の湖が広がっていた。
そして、眩しい光の正体は白く光る魔法陣であった。
その魔法陣の光が周囲を照らしており、白い岩壁がその光に当たってキラキラと輝いていた。
「洞穴の地下にこんな地底湖が存在していたのか...」。
ゴリラ隊員が辺りを見回しながらそう呟いた時、パルスが後方から姿を現した。
「いやぁ~!! 午前から夕方にかけてヤマナカさんや捕虜のみんなに発掘の手伝いをしてもらってたんですよ~! 」。
「発掘...という事は、パルスさんはこの地下の存在を御存知だったのですか? その...ダウジングとかを使ったりとかして」。
感慨深しげに白い岩壁を触るゴリラ隊員の問いかけに、パルスは笑いながら手を叩いた。
「はっはっは~!! ダウジングとかは使ってないっすよぉ~! ほらぁ~! 昨日の夜に、隊長やゴリラさんがこの先に水流の音が聞こえるって言ってたじゃないっすか~! 自分も洞穴にずっといた時、なぁ~んか基地の真下から、魔力が魚族の魔獣みたいにウヨウヨと動く気配がするなぁ~って感じてたんですよぉ~! それで、ちょっとヤマナカさん達に発掘してもらったら空洞...というか、地下が鍾乳洞だったわけですよぉ~! しっかし、ヤマナカさんは凄いねぇ~! あっという間に地下と地上を繋ぐ通路を作ってくれましたよ~! 」。
パルスがそう答えた時、湖から青い魚族魔獣の“ラリマー”が水上を飛び跳ねて再び水中に潜っていった。
「私は近くにブルーチーズ川の存在は把握してましたが、まさか基地の真下にこんな場所あったとは…。それに、自分は外にずっといましたから掘削作業をしていたとは気づきませんでした...。ここも“ラリマー”とかが泳いでいるし、水質もブルーチーズ川の水と似てますね。もともと川から分岐された地下水がここで溜まって地底湖ができたという事ですか? 」。
ゴリラ隊員の問いかけに、パルスは顔をしかめて両腕を組んだ。
「いやぁ~、どうかな~? 水層とかも関係してる感じがするんだけど、詳しい事はしっかり調べないと分からないかな~? 」。
「なるほど...。しかし、大丈夫ですか? 」。
「へっ?? 何が?? 」。
「い、いや...。あの、もう開拓しておいてこんな事を言うのはアレなんですが、洞穴の中ですから掘削作業したら地盤が狂って崩れ出す危険性とかはないですかね? ほら、特にヤマナカは加減を知らないんでより危ない気がするんですが...」。
「うん、一応その辺の事は掘る前に確認したんだけど、『もし崩れ出した時は、自分が絶命しても天井を支える人柱になってみせますっ!! 』って言ってましたぜ~! やっぱ戦士は凄いね~! こうでないとっ! 」。
(...“ホクトノケン”に出てくる“ライガ”と“フウガ”かよアイツは)。
ゴリラ隊員は顔を引きつらせてそう思っていた。
「まぁ、見ての通りでここの鍾乳洞はそんな広くないし行き止まりなんで、外敵がここを通じて基地に侵入してくる事はまず考えられないでしょう~! 」。
「そうですか...。そういえば、捕虜にさっきここで何か作業をさせていたみたいですが...」。
「うんっ! この湖の水と採集した野草で薬の調合を手伝ってもらってたんだ~! 水質も良いから高品質な魔力薬も作れましたよ~! 」。
「水も確保できて薬も生産できるのはかなり大きいです! 流石はパルスさん! 敬服しました! 」。
「いやぁ~!! はっはっは~!! 」。
「パルスさ~ん! 照明の光加減は大丈夫ですか~? 」。
地下の撮影をしていたチャールズが光っている魔法陣を指差し、気を良くして高笑いをしていたパルスに問いかけた。
「良い感じっすよ~! 周りも十分明るくて最高っすよ~! チャールズさんとフユカワさん、照明魔法陣の設置を手伝ってくれてありがとうございや~す! 」。
パルスが二人に礼を言うと、チャールズも微笑みながら小さく頷いた。
「はっはっは~!! こんなの朝飯前ですよぉ~!! それよりパルスさん、この後インタビューの協力お願いしますよぉ~!! 映像の方はバッチリ撮りましたからね~!! タイトルはそうですね...。“王国に抗う精鋭部隊を支える最強参謀の究極思考”なんていかがでしょうか? 」。
「いやぁ~!! まいっちゃうなぁ~!! はっはっは~!! 」。
「...」。
気分良さげに高笑いをするパルスとチャールズを余所に、ゴリラ隊員は湖の水面に映っている神妙な表情を浮かべた自身の顔を見つめていた。
(水を確保できる場所がまさか基地の地下にあったとはっ...! 完全に地図を過信し過ぎた...っ! ブルーチーズ川が付近にあるから水流の音はそっちかと思ったが...ここだったかっ!! 音は察知できても魔力の気配そのものを感じ取るという事は、魔力に適性が無い俺には不可能だッ!! そこが魔法を使える奴と使えない奴の違いだな。それよりも...)。
ゴリラ隊員の表情が見る見るうちに苦虫を嚙み潰したような表情に変わっていく。
(何かアイツに悪い事したな...。アイツも基地の地下にこんな場所が存在しているなんて知る由もなかっただろうからな)。
ゴリラ隊員は自身の頬を人差し指でポリポリ掻きながら、アイツに対して罪悪感を抱いていた。