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破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


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隊長のチョンボ


...むっ!?


王国兵士の恋愛事情だとぉ!?


フンッ!!


くだらんッッ!!


女子おなごうつつを抜かして戦場で生き抜いていけるものかッ!!


...と言いたいところだが、兵士の恋愛となると戦争から戻って地元の人間と結婚しているというのが多いな。


実際、俺もそうだからな。


むっ? 魔獣討伐に関して家族はどう思っているかだって?


それは心穏やかではないに決まっているだろう。


しかし、俺も反逆者のレッテルを張られてしまった人間だ。


家族には本当に申し訳ないと思っている。


だからこそ、全ての方々に自分が償える選択としては王から命を受けた討伐任務を果たすしかないのだ。




~討伐部隊“勇者”ゴリラ隊員~





昼下がりのチェダーチーズ山。


モッツァレラチーズ渓谷で“アルマンダイト”に遭遇したハリガネは、目にも止まらぬ速さで基地である洞穴の入口まで戻ってきていた。


ドゴォンッッ!!


「痛っってえぇぇぇっっ!! 」。


そして、戻って来るなり基地の周辺を監視していたゴリラ隊員に兜越しから拳骨を食らった。


「テンメェェェェエエエエエエエエエエッッッ!!! いい加減にしゃがれぇぇぇぇええええええええええッッッ!!! 戦場舐めてんのかぁぁぁぁああああああああああッッッ!?!? このぼぉぉぉぉおおおおおおおおおおおけぇぇがぁぁぁぁあああああああああッッッ!!! 」。


ゴリラ隊員の怒号が響き渡ると、木々に立ち止まっていた鳥族魔獣達が一気にその場から飛び立っていった。


怒りの収まらないゴリラ隊員はこめかみに青筋を浮き出させながらハリガネの胸倉を強引に掴み、鼻と鼻がくっつくところまで顔を引き寄せた。


「テンメェッッ!! 探索や魔獣偵察を実行するってのに、“警笛”を忘れるってのはどういう事だコラァッッ!! 入隊して一週間しか経たねぇ見習い兵士でもそんなミスしねぇぞコラァッッ!! 」。


「い、いやぁ~。多分持っていったと思うんですけど~、ちょっと何処に入れたのか忘れちゃったみたい...ぐはぁっ!! 」。


ハリガネは弁解している途中、ゴリラ隊員に投げ飛ばされ地面に叩きつけられた。


「すっとぼけてんじゃねぇッッ!! 」。


ゴリラ隊員は怒声を上げ、仰向けに倒れたハリガネの身体に“警笛”を投げつけた。


「じゃあ、何で荷車の中に“警笛”が一つ余ってんだッッ!? 他の隊員は“警笛”を持ってるっつーのに、だったら余ってる分はお前のしか考えられねぇだろうがッッ!! 」。


「いやぁ~、多分それは予備のやつかと...。いやぁ~、絶対に懐のどっかに...えっと...」。


ハリガネはよろめきながら立ち上がり、自身の懐に手を突っ込んで“警笛”を探し始めた。


「テメェッッ!! まだを白を切るかッッ!! 」。


「た、隊長すいませんっ! 」。


ハリガネとゴリラ隊員がそんなやり取りをしている時、ヤマナカが数人の子供達と共に洞穴から現れた。


「私も隊長が出動される時、何か違和感を覚えたのですぐ気づけばよかったのですがっ! 」。


ゴリラ隊員はヤマナカの後ろにいる子供達を一瞥した。


「それよりヤマナカッ! お前、何で捕虜を外に出しているんだ? 」。


「はっ!! 用を足したいとの事でっ!! 木陰の方まで致し方無くっ!! 」。


ゴリラ隊員の問いかけに、ヤマナカは直立不動でハキハキとそう答えた。


「...分かった、速やかに実行しろ」。


「はっ!! 」。


ヤマナカはそう返事して子供達を木陰の方まで誘導していった。


「やれやれ...。捕虜を管理するのも大変...ッッ!? 」。


ゴリラ隊員が血相を変え、ヤマナカとは別方向の草むらに顔を向けた。


「敵襲ッッ...」。


「...いや」。


ゴリラ隊員が草むらに銃口を向けようとした時、ハリガネがその行動を制した。


「...多分、()()()ですよ」。


「...()()()? 」。


ゴリラ隊員は目を凝らして草むらの方を見つめていると、息を切らしながら足取り重く近づいてくるジューンの姿が映り込んできた。


「はぁ...はぁ...。ひ、酷いよ、勇者君...。お、俺を置いていくなんて...」。


ジューンはハリガネ達の下へ辿り着くと、力尽きたようにその場で尻餅をついた。


「あれ? 生きてたの? 」。


「ちょっとっ!! 生きてたのってどういう事だいっ!! 」。


「いやぁ~、悪い! でも、相手が相手だったし俺も余裕がなかったからさ...あっ」。


「...()()?? 」。


ゴリラ隊員が片眉を吊り上げてハリガネを睨んだ。


ハリガネは狼狽した様子を隠せず、冷や汗をかきながら目を泳がせていた。


「い、いやぁ~! た、探索中にちょっとしたハプニングが...グォッ!? 」。


目が据わったゴリラ隊員は再びハリガネの胸倉を強引に掴んで凄んだ。


「洗いざらい全てを話せ。さもなければお前を今すぐ殺す」。


「...」。


ゴリラ隊員の圧に負けたハリガネはジューンの提案でブルーチーズ湖へ向かおうとした事から、パルメザンチーズ山脈から下りてきた“アルマンダイト”と遭遇して命からがら逃げてきた事までの一連の出来事を全て話した。


ハリガネの話を聞いてゴリラ隊員は納得...するはずもなく...。


ドゴォンッッ!!


「ぐはぁぁぁああああああああっっ!! 」。


ハリガネは再度ゴリラ隊員から脳天に拳骨を食らい、その場に倒れ込んだ。


「テンメェェェェエエエエエエエエエエッッッ!!! 本当にいい加減にしゃがれぇぇぇぇええええええええええッッッ!!! 何がちょっとしたハプニングだぁぁぁぁああああああああああッッッ!?!? ただの勝手な独断行動じゃねえかぁぁぁぁああああああああああッッッ!!! このぼぉぉぉぉおおおおおおおおおおおけぇぇがぁぁぁぁあああああああああッッッ!!! そのアクションで“アルマンダイト”が興奮して基地付近に接近してきたら、お前どうするつもりだったんだコラァァァァアアアアアアアアアッッッ!!! お前本当にぶっ殺されてぇのかぁぁぁぁああああああああッッッ!?!? 」。


「ま、まぁまぁゴリラさんっ! 俺が勇者君にお願いした事ですし、何だかんだで危ない場面があった時にも助けてもらいましたし~」。


「アンタは黙ってくれッッ!! これは俺達の問題だッッ!! 」。


「いやいや、子供達も怖がってますよ~? ほら~」。


ジューンがそうなだめながら視線を向けた先には、用を足して戻ってきた子供達が怯えた様子でゴリラ隊員を見つめる姿があった。


「...うむ」。


ゴリラ隊員は咳払いして平常心を装い、ジューンが片手で掴んでいる物体に視線を移した。


ジューンが掴んでいるのは紐の様な物で浮いている球体に繋がっており、それは黄色く光っていた。


「それはそうと、その黄色く光っている風船みたいなのは何だ? 」。


「あ、これ? 魔力で作ったバルーンだよ~! そうだな~、そろそろいいかな~? 」。


パッチン…ッッ!!


ジューンがそう言って指を鳴らすと…。


パァァアアアアンッッ!!


バルーンは音を立てて破裂し、黄色く光る魔力は四方八方に弾け飛んだ。


「キャッッ!? 」。


そして、破裂したバルーンからハリガネがブルーチーズ川で遭遇した四人の女性達が出てきた。


「イタタタ...。そうか、彼女達を魔力で閉じ込めて一緒に逃げてきたのか」。


地面に倒れていたハリガネは、苦悶の表情で拳骨を受けた頭を擦りながら上体を起こした。


「ワンムーンお姉ちゃんっ!! キュンお姉ちゃんっ!! 」。


「マーシュお姉ちゃんもいる~!! 」。


「アネックス姉ちゃ~ん!! 」。


子供達は笑顔で彼女達の下へ駆け寄った。


「い、一体どうなって...あっ!! アンタ達っっ!? 」。


駆け寄った子供達は彼女達の腰に抱きつき再会を喜んだ。


「あぁ...よかった...。生きてたのね...。よかった...うぅっっ!! 」。


女性の一人は涙を流して子供達を抱きしめた。


「...彼女達もノンスタンスのメンバーみたいですね」。


ジューンは神妙な面持ちでゴリラ隊員にそっと耳打ちをした。


「...そのようだな」。


ゴリラ隊員は険しい表情で両腕を組みながら彼女達を見つめつつ、ジューンにそう言葉を返した。


「イタタタタタタタタタタッッ!! イタイイタイイタイイタイッッ!! 」。


地面に尻餅をつくハリガネを足蹴りしながら...。




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