空を自由に飛びたいな~
やぁ! みんな!
キャラがなかなか増えてこないから、作者はこの前書きに困っているみたいだよ!
だから、僕の出番もちょくちょくありそうだね~!
くどいようだけど、僕の詳細は破離刃離☆勇者ハリガネシリーズⅠとⅡを見てね~!
~某道具屋の従業員~
「このモッツァレラチーズ渓谷を越えればブルーチーズ湖に辿り着くはずだ」。
ハリガネはブルーチーズ川を外れた急斜面の険しい谷を登っていた。
「はぁ...はぁ...。勇者く~ん!! 川沿いの方に歩いた方が斜面が急じゃないから楽なんじゃないかな~? 」。
ハリガネの後方にいるジューンは息を切らしてそう問いかけた。
「馬鹿言うなよ。川沿いなんかずっと歩いてたら敵の的になるだけじゃねぇか。ただでさえ、川の近くは平地で岩とか木とかの遮蔽物とかないんだからさ。それに、湖やここら辺はノンスタンスの残党の目撃情報があるっつーのに、そんな無警戒に行動なんかできるわけないだろ」。
「そんなぁ~!! 」。
「そんなもへったくれもあるか。そもそもアンタがブルーチーズ湖へ一緒に行ってくれっていったんだからな。それに、忘れんなよ。さっきの話」。
「分かったって! ここでの用事が一段落着いたら王国へ戻って軍と取り合ってみるよ~」。
「約束だからな」。
「ところで勇者く~ん! ちょっとここで休憩しようよぉ~! 疲れちゃったよぉ~! 」。
ジューンは懐からハンカチを取り出して額に浮かんでいる汗を拭いながら尻餅をついた。
「なんだよ~、もうへばったのかよ~」。
ハリガネは呆れた表情を浮かべ、近くにある大岩に背中を預けて自身もその場で腰を下ろした。
「はぁ~! こういう時に魔法が使えないのが面倒臭いよなぁ~! 」。
ジューンは疲れ切った表情でハンカチに続き、青い液体の入っている小洒落た小瓶を懐から取り出した。
「魔法ってそんなもんなの? そういえば、今まで道具を使わずに宙を浮いて空を飛んでる人間なんか見た事無いな~」。
ハリガネがそう言うと、ジューンは小さく頷きながら小瓶に入った液体を口に含んだ。
「浮遊魔法に関しては王国の魔術機関でもまだまだ研究中だからね~。今の技術だと人間は一定の時間だけ浮かせる程度に留まっているね~。一瞬浮かせるのも魔力や体力を結構使うらしいよ~。なんせ有力な魔術師五百人分の魔力で一人の人間を、一分間浮かせるので精一杯だったらしいからね~」。
「え、そしたら日常で使ってる絨毯とか箒とかの道具って何で浮いてるのさ? 」。
「魔術師が魔法陣を描いたりして飛行物を作っているのさ~」。
「人間に魔法陣を描いたら浮かないの? 」。
ハリガネがそう問うと、ジューンは首を横に小さく振った。
「それができたら苦労はしないさ~。簡単に言うと、浮遊魔法を発動させる魔法陣を描くためには浮遊させる物にも魔力を注いだり、他にも色々と面倒くさい作業とかがあるんだよ~。そんでもって、今の科学では人間に魔法陣を描いただけでは空を飛ぶ事はまだできないんだよね~」。
「ふ~ん、そんなもんなんだ~」。
「勇者君も魔術を真剣に学ぶ機会があったらそのうち分かるさ~! それに、ここで安易に魔法なんか使ったら山中に生息してる野生の魔獣達に魔力を勘付かれて襲われちゃうからね~。あ、ところで勇者君も飲む? これ、魔力の入ったアイスドリンクなんだ~! 魔力の補強薬なんだけど、水分補給にもなるし美味しいよ~! 」。
ジューンはそう言いながらハリガネに小瓶を差し出した。
「要らん、誰が悲しくてこんなとこで男と間接キスせにゃいかんのじゃ」。
「う...酷い...」。
ジューンはハリガネに拒絶されると、両手で顔を覆って泣いている素振りを見せた。
「あと、どうでもいい事なんだけどさ」。
「ん...? 何? 」。
「アンタ、最初に出会ったパブではただの迷惑な酔っ払い客としてではなく、調査か何かで現場にいたのかい? 俺が留置場にいた時、その店の情報をわざわざ持って来たじゃないか」。
ハリガネがそう言うと、ジューンは含み笑いをして両腕を組んだ。
「まぁ、それもあるけど...。一応は君の職場だったみたいだからね~。ご挨拶がてら、その後の事も伝えてあげようと思っただけだよ。...ただ」。
「ただ? 」。
ハリガネが怪訝な面持ちで微笑を浮かべるジューンを見つめてそう聞き返した。
「あながち勇者君にとっては、どうでもいい話というわけではなさそうなんだ」。
「どういう事? 」。
ジューンは視線をハリガネから先に見えるパルメザンチーズ山脈の頂上へ移した。
パルメザンチーズ山脈は緑の生い茂るチェダーチーズ山とは打って変わり、草木が少ない分荒々しい黒色の岩肌が剥き出しであった。
「勇者君と出会ったあのパブの“PUBオニヤンマ=キャロルズ”の関係者が、国外の賊団と関りがあったって留置場で話をしたけど...」。
「それがノンスタンスだと」。
ハリガネが話の腰を折るとジューンは神妙な表情で頷いた。
「ふ~ん、でもそれは終わった事だし。パブの関係者とノンスタンスが繋がっていた事実を今になって知ったとしても、こんなとこにいる以上は役に立ちそうな情報でもないな~。結局、今の俺にとっては正直どうでもいい話だな~」。
「いや...」。
ジューンが真剣な表情を保ったまま、ハリガネにそう言いかけた時...。
ピキィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイン...ッッ!!
(...ッッッ!!! 複数の気配ッッ...!! )。
ハリガネの神経は迫りくる気配を察知すると、即座に携えていたライフルを構えた。
「こっちに向かってくるぞッッ!! 」。
ハリガネに声をかけられたジューンは黙ったまま小さく頷き、指を間接をポキポキと鳴らしながら気配のするブルーチーズ湖方向を睨み付けた。




