表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/104

偉大なる救世主、ハリガネ=ポップ


私は魔法は使えませんが、フィジカルには自信がありますっ!!


一週間は睡眠取らなくても稼働できますし、潜水も三時間は可能ですっ!!


毒物もある程度の毒素であれば、体内で浄化できる能力がありますっ!!


暗闇でも夜行性魔獣と同様で、その場の判別が可能ですっ!!


隊長も動体視力や身体能力は桁外れの域に達していますっ!!


我々は格闘や剣術を操る物理的攻撃をメインとする戦士ですが、このように魔法使いや魔術師には持ち合わせていない圧倒的な身体能力があるのですっ!!





~討伐部隊“勇者”ヤマナカ=マッスル隊員~






「うぃ~す」。


ハリガネは間の抜けた挨拶をしながら洞穴の中へ入ってきた。


「お疲れ様ですっ! 隊長っ! 」。


ハリガネが洞穴の中に入ると、入口付近で立哨りっしょうしているヤマナカが敬礼して迎えた。


「お疲れヤマナカ。中の様子はどうだ? 」。


「はいっ! 捕虜は既に起床しており、現在ジューン氏から調査を受けておりますっ! パルスさんとシアターさんは奥の方で薬の調合をしておりますっ! 」。


「ああ、丘で薬草の採集をしたもんな」。


「はいっ! 」。


ハリガネがヤマナカと言葉を交わしてた時、洞穴の奥でノンスタンスのメンバーと話をしていたジューンと目が合った。


「おっ!! 勇者く~ん!! お疲れ~!! 」。


ジューンが手を振ってハリガネに微笑みかけると、ノンスタンスのメンバー達がハリガネの方へ視線を向けた。


「あ...あっ...!! 」。


ノンスタンスのメンバーは血相を変えて椅子から立ち上がり、急いでハリガネの下へ駆け寄ってきた。


「...ッッッ!!! (あのオッサンッッ!! 奴等に何か吹き込んだのかッッ!? )」。


危機を察したハリガネが反射的に携えていたライフルの銃口を向けようとした時、ノンスタンスのメンバー達はハリガネの足元にひれ伏せた。


「おはようございますッ!! 偉大なる救世主ッ!! 我等の勇者ハリガネ=ポップッ!! 」。


「...は?? 」。


「ささっ! どうぞこちらへっ! 」。


呆気に取られるハリガネを余所に、満面の笑みを浮かべるノンスタンスのメンバー達はジューンの下へ誘った。


「ささっ! ハリガネ様っ! お座りくださいっ! 」。


「救世主様っ! お水をどうぞっ! 」。


「我々のために夜通しで周囲の見張りを務めになられるなんてっ! 無力な我々をお赦しくださいましっ! 」。


両指を組んで神を崇めるごとく、畏敬の念を示しているような眼差しでハリガネを見つめるノンスタンスのメンバー達。


「...」。


椅子に腰かけたハリガネは仏頂面で黙ったまま、対面でくつろいでいるジューンを睨み付けた。


「グッモ~ニ~ン! ミスター勇者~! 良い朝だねぇ~! 外の風景はまだ見てないけど。外はどんな感じだった~? 」。


「そんな事はどうでもいい。それより、ノンスタンスの連中に何を吹き込んだんだ? 」。


「ほえ?? 」。


険しい表情で問いかけるハリガネに対し、ジューンはキョトンとした顔で間の抜けた返事をした。


「とぼけるな!! おかしいだろう!? 昨日までだんまりしてた人間達が急にあんなテンションになってるんだぞ!? お前の仕業以外に何があるんだ!? 」。


ハリガネが机を両手で叩きながら身を乗り出して詰め寄ると、ジューンは両手で顔を覆って泣いてる様な仕草を見せた。


「ぴえ~ん! 酷いよぉ~! 勇者君はどうしてボクを信じてくれないのぉ~! ボクと勇者君との仲じゃないかぁ~! 」。


「ああっっ!! もう面倒臭ぇなぁっっ!! ちゃんと答えろっっ!! 連中に何を話したんだよっっ!! 」。


「う~ん?? 何って、ノンスタンスの現状を確認してただけだよ~? まぁ、君のお父さんとも関係性があるからチラッと君の事も話したのは事実だね~」。


「だからっ!! 何を話したんだって聞いてんだよっ!! 」。


ハリガネが声を荒げてジューンにそう言った時、ホワイトが二人の下へやって来た。


「ハリガ...じゃなかった。救世主様ぁ~! 」。


ホワイトはお盆に載せていた銀色のボウルと木製のスプーンを机上に置き始めた。


ボウルの中には赤いスープが入っており、立ち昇る湯気からは強い香辛料の香りが漂ってきた。


「ハリガ...救世主様ぁ~! お疲れ様ですぅ~! お食事まだですよね~? どうぞぉ~! 魔獣のスープですぅ~! 温まりますよぉ~! 」。


「ホワイト、お前まで何だよ」。


ハリガネは怪訝そうにホワイトを見ながらスプーンを掴んでスープを掬った。


「いやぁ~! ジューンさんから聞きましたわぁ~! ハリガネはんがハリボテ様の御子息で有らせられる事やポンズ王国軍の兵士であった事はもちろん知ってましたが、まさか御父上ハリボテ様と共に王国内で階級社会の反対と魔獣混血民族の救済運動に尽力されていたとはっ!! 」。


「...はぁ? 」。


ハリガネはホワイトの言葉に眉をひそめた。


「ポンズ王国軍と僕等ノンスタンスが争った際にも、弾圧を装ってノンスタンスがその場から避難できるように安全の確保をしてくださったとっ! そして、僕達が王国内に侵入した時も逮捕された仲間達の無実を裁判で主張してくれたみたいやないですかぁ~! 」。


「え? い、いや...」。


「勇者様は兵士の身を追われてしまったものの、我々の様な社会的弱者に対しての社会保障を王国に訴え続けていたと聞きましたっ! ハリボテ様と共に我々に物資を支援してくださっていたとは知りませんでしたっ!! 」。


メンバーの青年がそう言って目を爛々と輝かせた。


「国家に屈することなく人権を守るべく戦い続ける勇者ッ!! 偉大なるハリボテ=ポップッ!! ハリガネ=ポップッ!! 万歳ッ!! 」。


「万歳ッ!! 万歳ッ!! 万歳ッ!! 」。


「...おい。どういう事だよ、これは」。


ハリガネは嬉々とした様子で万歳三唱するメンバーを横目で見ながら、ジューンにそう問いかけた。


「いやぁ~! 調子に乗ってちょっと盛っちゃったかなぁ~! 」。


「盛ったとかそういうレベルじゃねぇだろ!! 他人の過去を勝手に改ざんしてんじゃねぇ!! 」。


「いやいや、俺は仕入れた情報をありのままの形で彼等に伝えてるだけだよ~! 」。


「何がありのままだ!! 話を聞いてたらどれもこれも事実無根じゃねぇか!! 」。


「ええ~?? 」。


ジューンは不満そうに口を尖らせた。


「はぁ~、アンタと話してると本当に疲れるわ...。ふぁ~あ~! 」。


ハリガネはガックリとうなだれた後、口を大きく開けて欠伸をした。


「そういえば、勇者君は昨日から一睡もしてないんだっけ? ゴリラさんと交代したみたいだし、寝たら? ほら、ベットも空いてるし」。


(何を我が物顔でそんな事ぬかしてやがんだ、このオッサン...あっ!! ここでリラックスしている場合じゃなかったっ! )。


ハリガネは急に椅子から立ち上り、ヤマナカの下へ歩み寄った。


「ヤマナカ、周囲の探索に行ってくる。地図を貸してくれないか? 」。


「はいっ!! 」。


ヤマナカはハリガネに地図を差し出した。


「勇者君、お出かけかい? この周りにはお店なんか無いよ? 」。


「何言ってんだよ。とりあえず、周囲の地形確認だよ。あと、ここら辺だとブルーチーズ川から近いはずだから、そこら辺の様子見とかもしたいって思ったし。川の先の湖や渓谷とかにノンスタンスのメンバーの目撃情報あったから気を付けないとな~」。


ハリガネはジューンにそう答えながら地図を懐に閉まった。


「いいですね~! ブルーチーズ川にも薬草や魚族の魔獣が多く生息してそうっすね~! 」。


パルスは乾燥させた薬草を道具ですり潰しながら話に入ってきた。


「そうですね~。川を発見できれば水が確保できますしね~。それじゃあ、ちょっくら行ってくるわ~」。


「隊長っ! お気を付けてっ! 」。


ヤマナカは洞穴から出ていくハリガネの背中に敬礼した。


(...?? そういえば隊長、()()を忘れていったような気が...はて? )。


ヤマナカは腑に落ちない表情でそう考えながらハリガネを見送った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ