さすらいの遊び人
やぁ! みんな!
僕の事を覚えてるかな~?
詳しい事は破離刃離☆勇者ハリガネシリーズⅠとⅡを見てね~!
~某道具屋の従業員~
「...っっぶねーなっっ!! ふっざけんなっっ!! 洞穴の中だぞっっ!? 崩れたらどうすんだよっっ!! 」。
「...そうなっても、俺は逃げ切る」。
男は掌をハリガネにかざしたまま淡々とした口調でそう答えた。
「お前は助かっても他は死んじまうだろうがっっ!! それに“判決が下る前”の話だろっっ!? じゃあ、刑執行後の今となっては関係ない話だろうがよっっ!! 」。
「今もこれからも俺をオッサン呼ばわりする輩は粛清する。今、決めた。これ、絶対ね」。
「んだよ、それ。変な暴君だな」。
「...おい」。
ゴリラ隊員がハリガネの脇を小突いた。
「アイツ誰だ? 魔法陣で封じられた岩壁をすり抜けて入ってくるとは、只者ではないな...」。
ゴリラ隊員がハリガネにそう問うと、先程までオッサン呼ばわりされ(厳密にはそう呼ばれかけた)険しかった表情とは打って変わって、男は白い歯を見せて皆の前で深々とお辞儀した。
「いやぁ~! レディースアンドジェントルマ~ン! ポンズ王国軍とノンスタンスの諸君~! 初めまして~! 私はさすらいの遊び人、ジューンと申しまぁ~す! 以後お見知りおきを~! ちなみにみんな洞穴へ入っていく様子を遠くから見ていて、魔法陣の描かれていない岩壁から自分の魔法陣を使って勝手に入ってきましたぁ~! 」。
ジューンはそう自己紹介すると、一人一人に両手で丁寧に握手し始めた。
「いやぁ~! 勇者君~! 元気そうで良かったよぉ~! 」。
ジューンはそう言ってハリガネとハグを交わした。
「遊び人だぁ~? アンタは王国軍の関係者みたいな事言ってなかったか? 」。
ハリガネは眉をひそめてジューンにそう問いかけた。
「いや、軍の人間ではないよ。厳密に言うと、ポンズ王国軍の依頼で遊び人の俺が代わりに君の事情聴取していたってわけ」。
「え?? 何で?? 」。
「お、おいっ! ちょっと待てっ!! 」。
ハリガネがジューンに問いかけていた時、ゴリラ隊員が困惑しながら話に割り込んできた。
「話が全然理解できないぞッ! そもそも、お前等はどういう間柄なんだッ!? まず、そこから話せッ! 」。
「う~ん」。
ジューンはゴリラ隊員にそう問われると、急にもじもじし始めた。
「ハリガネちゃんとはぁ~。この前にパブで出会ってぇ~、そのまま一緒に飲んでてぇ~。その足で一緒にホテルに...」。
ドゴォッッ!!
「あたっ!! 」。
ハリガネがジューンの頭を携えていたライフルで叩いた。
「やめろ、シンプルに気持ち悪い」。
「ジョークだよ~! ちょっとした茶目っ気じゃ~ん! 」。
「危険地帯の中でそんなジョークはいらねぇ。しかも、つまんねえ」。
「え? 戦場でもやるんじゃないの? ミリタリージョークなんて国家との戦争時では日常茶飯事かと思ってたんだけど...」。
「...あるけど、日常茶飯事でもねぇよ」。
「ほらぁ~! ポーカーに負けたら敵のゲートを先頭に立って突っ込んで行けとか~! ブラックジャックに負けたら敵のテリトリーで全裸になって攻めろとか~! 」。
「それ、ジョークじゃなくて、度が過ぎた悪ふざけじゃねぇかよ」。
「おいッ!! 何だッ!! このふざけた男はッ!! 」。
そんな二人のやり取りに痺れを切らしたゴリラ隊員は、再び話に割り込んできた。
「あ、すんません。この人は変人なんですよ」。
「変人じゃないよ~。さすらいの遊び人だよ~」。
「何でさすらいの...」。
「ああッッ!! お前等もう黙れッッ!! 一向に話が進まんッッ!! 」。
「すんません、つい...」。
ハリガネはゴリラ隊員に軽く頭を下げた。
「フンッ! それで、この男とはどういう関係なんだ? 」。
「いや、あのですね...」。
ハリガネはジューンと仕事先のパブで出会った事から留置場や軍事刑務所での出来事を皆に話し始めた。




