討伐部隊“勇者”、前途多難
やぁ! みんな!
このシリーズも最後って事で登場したよ~。
...。
まぁ、それだけなんだけどね~。
~道具屋“オードリー”の従業員、ハリガネの友人ミドル=ヘップバーン~
「まぁ、色々と慌ただしかったですが、これでソイ=ソース国出身の元兵士であるミツカ=サウスタウンさんの本部隊加入を認める事となりました~。...って事で、拍手~! 」。
ハリガネがそう言いながら手を叩くと、ミツカは照れくさそうな様子で椅子から立ち上がった。
「そういう事で~! 皆さ~ん! 今後ともよろしくお願い致しま~す! 」。
ミツカはそう言うと、隊員の前で深々とお辞儀をした。
「よろしくお願いしますっ! ミツカ勇士っ! お互い国から見放された者同士っ! これから支え合っていきましょうっ! 」。
「...お前は勝手に出て行った側だろうが」。
涙を流しながらミツカと固い握手を交わすヤマナカに対し、ハリガネは冷たい視線を向けながら静かにそう言い放った。
「パチパチパチパチ~! やんややんや~! 」。
パルスは両手を強く叩きながらミツカを歓迎した。
「ミツカさんが部隊に入ると頼りになりますね~」。
シアターも顔を綻ばせてそう言いながら拍手をした。
「...」。
そんな中、腑に落ちない表情を浮かべる男が一人。
「ゴリラ隊員~、何か不満でもあるんすか~? 」。
ハリガネは怪訝な表情を浮かべてゴリラ隊員にそう問いかけた。
「いや...こんな危険な地域に...。いくら有名な兵士とはいえ異国の人間を部隊に引き入れるのは危険なんじゃないか...と」。
「え?? よく聞こえなかったんですけど! 今、何て言いましたぁ~?? 」。
ブツブツと呟くような小さい声で答えるゴリラ隊員に、ハリガネはわざとらしく耳を傾けた。
ドゴォッッ!!
憤怒するゴリラ隊員は顔を真っ赤にしてハリガネの頭に鉄拳を見舞った。
「痛ってぇ...っっ!! 」。
ハリガネは苦悶な表情を浮かべて頭を抱えた。
「好きにしろと言ったんだッ!! 馬鹿者ッ!! 」。
ゴリラ隊員はすっかり機嫌を損ねた様子で皆から背を向けてしまった。
(嘘つけよ、ブツブツ小言言いやがって…。この脳筋野郎がよ)。
ハリガネは歯を食いしばって痛みを堪えながらゴリラ隊員の背中を睨み付けた。
「ハリガネた~ん、かわいそ~! 良い子、良い子~! 」。
アネックスがハリガネの背後に近づき、愛でるように頭を撫で始めた。
「おい、俺の頭を気安く撫でるな。あと、“たん”はやめろ。そして、元の場所へ戻れ」。
ハリガネはぶっきらぼうにそう言いながらアネックスの手を振り払った。
「むぅ~! ハリータン、冷たぁ~い! 」。
アネックスはそう言いながら口を尖らせ、背後からハリガネの首に抱きついた。
「そしてそして、捕虜の分際で後ろから俺に抱きつくな。そしてそしてそして、そのイギリスの某小説内に出てくる主人公みたいな呼び方はやめろ...あっ!! 」。
ハリガネはアネックスの谷間に挟まっている何かに気がついた。
「お、俺のドッグタグっ! 何でそんなとこにあるんだよっ!? 」。
「む...? お前のドッグタグならテーブルの上に...あれ? 無いぞ? 」。
ゴリラ隊員は怪訝な表情を浮かべてテーブル上を見渡していた。
「ふふふ~ん! ハリたんが戻ってこなかったら、これをハリたんだと思って大切にしようと思ってたの~! 」。
「だから、その“たん”はやめろっつーんだよ」。
ハリガネは躊躇する事無く、アネックスの谷間から自身のドッグタグを抜き取った。
「やぁ~ん! ハリたんのスケベ~! 」。
アネックスは自身の両肩を抱きしめ、あからさまに恥じらった様子をハリガネに見せた。
「ほら! とっとと戻れ! 」。
ハリガネはアネックスに戻るよう促しながら...。
「くわばら、くわばら」。
そう呟きながらドッグタグを裾で磨き、自身の首に掛け直した。
「むぅ~」。
アネックスは頬を膨らましながらハリガネから離れていった。
(はぁ~、こっからは前途多難だな...。しかし...)。
ハリガネはそう思いながら深い溜息をついていた時、ゴリラ隊員が神妙な表情を浮かべつつ腰に手を当てて基地内を見渡していた。
「おい、しゃきっとせんか。隊長はお前なんだぞ? 」。
ゴリラ隊員はハリガネを横目で見ながらそう言った。
「はい...あっ! そうだった! ソイ=ソース国の隊長から御言付け預かってたんですよね~」。
「...むっ? 隊長から言付けだと? 」。
ハリガネの言葉にゴリラ隊員は怪訝な表情を浮かべた。
「はい、パルメザンチーズ山脈内では賊団と交わる機会があるかもしれないけど、戦士としての魂と誇りは決して忘れるな...との事です」。
「...フッ、当然だ」。
ゴリラ隊員はそう言葉を返して微笑を浮かべた。
討伐部隊“勇者”が山脈付近のチェダチーズ山に基地を構えて数日間が経った。
個性の強すぎる隊員。
もともと敵対関係ではあったが、部隊の捕虜となった白装束ホワイトを含めるノンスタンスの残党。
現在、行方が分からず未だ謎の多い遊び人ジューン。
部隊の新隊員となったソイ=ソース国の英雄ミツカ=サウスタウン。
山脈に拠点を構える賊団、その山脈に潜んでいる赤髮のデイ。
そして、山脈に生きる最凶竜族魔獣、“炎の守護神”アルマンダイト=ガーネット。
様々な欲望や危険が入り交じったパルメザンチーズ山脈を目の前に、隊長のハリガネが率いる討伐部隊“勇者”の苦難はまだまだ続くのであった。
こんにちは、作者の田宮 謙二です。
この度は『破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~』の御愛読ありがとうございました。
この勇者ハリガネ第三シリーズに関しては、過去作と比べて大分話が長くなってしまいました。
正直、難しい内容が多く、自分としても色々と葛藤がありながらも一年以上かけて何とか完結する事ができました。
やり切った自分としては悔いはありません。
物語自体はまだまだ続くのですが、私の身の回りが落ち着いたら新シリーズの執筆を始めたいと思います。
重ねてですが、勇者ハリガネシリーズの御愛読ありがとうございました。
田宮 謙二




