人の不幸は蜜の味
作者がペンネーム変えた??
別にどうでもいいわ、そんな事。
~討伐部隊“勇者”ハリガネ=ポップ隊長~
「...む? 」。
ハリガネ達から背を向けた隊長の視線の先には、入口付近に置かれている荷車があった。
「何だ? 荷車の中に見知らぬ銃があるじゃないか? 」。
ゴリラ隊員は荷車のところまで歩み寄り、その中から一丁のライフルを取り出した。
「ああ、それはソイ=ソース軍からいただいたんですよ。その兵器はもともと山脈にいた賊人達が身に着けていた武器で、ソイ=ソース軍の部隊がその賊人から剥ぎ取った物を分けてもらったんですよ。さすがに軍の武器はいただけなかったですがね~」。
「む? 賊人...? ミツカ工兵が撃退した賊人から剝ぎ取った物って事か? 」。
ゴリラ隊員は眉をひそめ、手に取ったライフルをまじまじと眺めながらそう問いかけた。
「あ、そう言えば基地に戻ってからはミツカさんの話をしてたから、偵察の事に関してはほとんど話してなかったですね~」。
ハリガネは山脈に拠点を構えた賊団、ゴクアクボンドのメンバー達とカッテージチーズ高原で遭遇した事を隊員達に話し出した。
「なるほど、ソイ=ソース国の人間と接触して取引をするために山脈から下りてきたところバッタリ遭遇したって事か。しかも、山脈のテリトリーや内部事情まで聞き出したのか。これは大きいぞ」。
ゴリラ隊員は感心した様子でそう言いながら、隊員達と共にハリガネがテーブル上に広げた地図を眺めていた。
「まぁ、下っ端の団員達だったみたいですけどね。あと、ゴクアクトンボはポンズ王国に潜伏してノンスタンスとも接触していた事も分かりました」。
ゴリラ隊員は眉間にしわを寄せながらハリガネに視線を移した。
「ゴクアクボンドがノンスタンスと接触...? お前がこの間にあの遊び人と話してたあのパブの場所で、その二組が接触していたという事か? 」。
ゴリラ隊員がそう問いかけるとハリガネは小さく頷いた。
「ええ、ただノンスタンス...というよりは、デイと戦闘組がパブの売上を失敬したりゴクアクボンドの縄張りに入ってドンパチやらかしたりと結構暴れまわってるらしいですよ」。
「ポンズ王国でも散々暴れ倒したってのに、山脈でも賊団に喧嘩売れるだけの力がまだあるというわけか」。
「ちなみ、その賊人達の話によると僕等と王国で対戦したあの夜に、奴等は王国軍の関係者達にそのパブの利益を一部を納めて軍の本部や現地兵士の監視を外してもらっていたらしいです。王国へ侵入する時やユズポン市内を陣取ってた時も軍が絡んでいたみたいですよ? もしかしたら、ゴリラ隊員が現場から外されたのと何か関係してるかもしれませんね」。
ハリガネがそう言うと、ゴリラ隊員は天井を見上げながら苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。
「...バイキンのクソ野郎が絡んでるかもな」。
「バイキン中佐ですか? 」。
ハリガネがそう問いかけると、ゴリラ隊員は頷いた。
「奴はメディアの露出が多くて露骨なくらい革新派の平民院や労働党の国会議員に媚び売ってるからな~」。
ゴリラ隊員がそう答えるとハリガネは怪訝な表情を浮かべた。
「え? バイキン中佐って出馬するんですか? 」。
「軍内ではそういう噂が広まってたんだ。数年前から奴は革新派の関係者と親交を持っていたと聞いてはいたから、その時期にノンスタンスや反社会的勢力組織とも接触していたかもな。今の王国は国王に対する不信感が高まっている反面、革新派の支持者が増えてきている。ソイ=ソース国や他の民主国家のように、王国民も君主制から民主制の国家に変わる事を望む声が年々高まっているんだ。だから、奴はそこに付け込んで民衆を味方につけ、革命家として王国の主権を奪取するつもりなんじゃないかって軍の連中は言ってたんだよ」。
ゴリラ隊員はそう答えながら手に持っていたライフルを荷車の中に戻した。
「なるほど、先の事を考えてノンスタンス達も自分のコントロールしやすいように手懐けておくつもりだったのかもしれないですね~。表ではメディア越しで庶民の味方ってアピールして、裏では国王の失脚を狙ってノンスタンスを含めた反社会的勢力集団を利用する気だったのかもしれないですね~」。
「まぁ、俺達もノンスタンスも王国からいなくなったわけだから、今更そんな事考えてもしょうがないかもしれない...がな」。
ゴリラ隊員は肩をすくめながらそう答え、椅子に座り直した。
「隊長っ! 」。
その時、立ち上がってパフォーマンスを繰り返していたヤマナカとミツカも椅子に腰を下ろした。
「何だ? ヤマナカ、大会に向けてのリハーサルはもう終わったのか? 」。
ハリガネが座り直したヤマナカを横目で見ながらそう問いかけた。
「隊長っ! 意見を申し上げますっ! 」。
ヤマナカは挙手しながらハリガネにそう言った。
「何さ? 」。
「私もミツカ勇士の部隊加入に大賛成でありますっ! 」。
真剣な眼差しでそう答えるヤマナカに対し...。
「知ってたよ」。
半ば呆れ気味な様子のハリガネは素っ気なくそう返答した。




