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破離刃離☆勇者ハリガネⅢ~俺達は“炎の守護神”と恐れられている魔獣を討伐しないと王国へ帰れま1000!! ~  作者: 田宮 謙二


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ミツカの信念


好きな事と好きな物~?


トレーニングと建築だね~!


建築では土地を整備してコンクリートと躯体工事に、内装も...。


え? 一式全部やるのかって~?


もちろんだよ~!



~ソイ=ソース共和国軍施設部隊、ミツカ=サウスタウン工兵~



基地内でミツカを含めた隊員たちがテーブルを囲んで席に着いていた。


「とりあえず、みんなには座ってもらったついでに、一旦話を整理しましょうか。ミツカさんは当時のソイ=ソース帝国の主権を掌握していたハセガワ皇帝の出征を拒否し、終身刑を受けて軍事刑務所に投獄されました。その皇帝の失脚後、主権が国民に移行してもミツカさんは釈放される事はありませんでした。そんなミツカさんが突如、国家反逆者という立場として昨日国外へ追放されました。しかし、追放されたはずのミツカさんはソイ=ソース国内では獄中で亡くなった事になっています。それで、ミツカさんはソイ=ソース国が共和国に移行しても自身が釈放されず、刑務所に長期間収監されていたのには大統領が関係していると言ってましたが...。それは今のツッゴ大統領がミツカさんの件に関係しているという事なんですか? 」。


ハリガネがそう問いかけると、ミツカは神妙な面持ちでモニターに映った記事を見つめたまま小首をかしげた。


「まぁ...僕の推測に過ぎないんだけどね~」。


「でも、数々の功績を残してきた功労者であるミツカさんを、何故にソイ=ソース国はずっと刑務所へ収監させたんでしょうかね~? 」。


ハリガネが続けてそう問いかけると、ミツカは照れ臭そう苦笑いを浮かべながら自身の頭を掻いた。


「功労者かぁ~! う~ん! そんな功労者が反逆者まで一気に成り下がっちゃうなんて、今改めて考えてみると落胆を通り越して何だが笑けてくるね~! はっはっは~! 」。


「は、はぁ...(全然笑えねーよ)」。


ハリガネは顔を引きつらせながら高笑いをしているミツカにそう相槌を打った。


「仮に貴様がミツカ工兵であるとして、何故にそんな境遇になってしまっているのだ? 」。


ゴリラ隊員は厳かな表情のまま眉間にしわを寄せ、両腕を組みながらミツカにそう問いかけた。


「まぁ、ハリガネ君がさっき言ってた通り、僕は当時の主君に歯向かって刑務所に投獄されてしまったんだ。それからソイ=ソース国は民衆の革命により帝国から共和国となっても、派閥の政権争いにより歴代の大統領を始め有力な権力者達が粛清され続けた。そんな醜い争いが国内に繰り広げられていた後、それが落ち着いて現在ソイ=ソース国の大統領を努めているのがツッゴ大統領なんだ。ツッゴ大統領はハセガワ皇帝政権下の官僚だったから、今のソイ=ソース国の実権を握っているのは皇帝派だというのが僕の見解だね。それで、帝国から共和国になって以降、僕は共和国に移行した国家に数度と自身の終身刑に関しての再審を請求してたんだけど全然通らなくてね~。同期の兵士達を通じて国民の皆様にも協力してもらってたんだけど、なかなか進展が無くてね~。ずっと刑務所に閉じ込められていたんだよ~」。


「その、ツッゴ政権下のソイ=ソース国はミツカさんを釈放する事はなかった。これには亡命しているハセガワ皇帝の指示だと考えらえるという事ですか? 」。


ハリガネがそう問いかけると、ミツカは顔をしかめて再び首をかしげた。


「いやぁ~! それは分からないな~! まず、亡命したハセガワ皇帝の生存自体が分かってないからね~! ただ、さっきも言ったけどツッゴ大統領は帝国期のハセガワ皇帝政権下においては、官僚のトップだった皇帝派の人間だからね~。だから、その考えも無きにしも非ずって感じかな~? 」。


「なるほど~、国家による見えない何かが働いているという可能性もあるみたいですね~。ソイ=ソース国軍の部隊のみんなも、何かミツカさんと再会した時に複雑な表情浮かべていましたし...」。


「まぁ~、軍のみんなも僕のために一生懸命訴えかけてくれたんだけど...。結局、こういう事になっちゃったからなぁ~。なんか、申し訳なかったな~」。


ミツカはモニターを眺めたまま寂しげな表情を浮かべていた。


「でも、どうしてソイ=ソース国は今になってミツカさんを国外へ追放したんでしょうね? てか、ソイ=ソース国はミツカさんが国内にいると何か都合が悪いんですかね~? 」。


「それも分からないけど...。当初、帝国期から共和国の初期にかけて国内の情勢が不安定だったから、刑務所にいた僕等は国からすっかり忘れられてたんだ。まぁ、戦地に向かうよりは大分マシだったけどね~。それで共和国になってしばらくして、皇帝の僕に対する処分は主権乱用であり人権侵害だという事で、帝国時代に受けた終身刑は無効であると国家に一度目の再審を請求していたんだ。それに、国家も実質変わっているわけだからね~」。


「まぁ、ミツカさんが出征拒否した事で収監されてしまったのは帝国時代の話ですしね~」。


「そうそう~。でも、それが通らなくて...。二度目の再審はツッゴ大統領が就任した時で、結局それも棄却されちゃってね~。だけど、五年前に国家戦争が終わって以降はハセガワ皇帝による君主政権が国民に非難され始めてて、僕が収監されている事が世間では非人道的行為であるとして僕の釈放を求める運動がソイ=ソース国全土で広まっていたらしいんだ。僕は面会を原則禁じられていたんだけど、弁護士とは例外的に面会が可能だったんだ。それで、僕はその弁護士を通じてソイ=ソース国内では僕自身の解放運動が活発になっている事を聞いて、それで思い切って三度目の再審請求をしたのがその五年前なわけ。しかし、それ以降は全く進展が無くて今に至ってしまったというわけさ~」。


ミツカの話を聞いたハリガネは、険しい表情で両腕を組みながら考え込んだ。


「う~ん、ミツカさんの話を聞いた上で改めて考えてみると、ソイ=ソース国はミツカさんへの報復を恐れて国内では死亡した事にしておいて国外へ追放したのかもしれないですね」。


「何? それはどういう事だ? 」。


ゴリラ隊員は眉をひそめてハリガネにそう問いかけた。


「ミツカさんの解放運動が軍や国内で展開されていた事を考えると、解放したミツカさんが国民や軍の中心となって政権を奪取されるのを国家側が恐れていたのではないかと思ったんです。それに、ツッゴ大統領は皇帝支持派だとすると、国民の印象も良くないでしょうし」。


「つまり、ソイ=ソース国が国家転覆を恐れたから脅威であるミツカ=サウスタウンを収監し続けていたという事か」。


ゴリラ隊員がそう言うとハリガネが小さく頷いた。


「はい、そもそもミツカさんは皇帝の命令で一方的に投獄されていたわけですしね。今のツッゴ大統領政権下が皇帝支持派である事も考えて、ミツカさんを解放したとしても帝国崩壊後にゴタゴタがあったとはいえ今までずっとミツカさんを拘束し続けていたわけですから国民の心象は悪いでしょうし...。やはり解放したミツカさんや国民に再び革命を起こされぬよう、国家はミツカさんが獄死してこの世からいなくなった事にして国内で起こっている抗議運動が激化しないよう努めているのかもしれないですね」。


「ふむ、記事を見る限り近年のソイ=ソース国では、過激な反皇帝派の思想家や政治活動家をことごとく粛清しているみたいだからな。努めていると言うよりは、国家に盾突く革命派の奴等は強引に消しているって感じだな」。


ゴリラ隊員はそう言いながらモニターに映っているニュースの関連記事を眺めていた。


「ミツカさんはそこら辺はどうお考えですか? 」。


ハリガネはミツカにそう問いかけた。


「ソイ=ソース国を恨む事は...まず無いな」。


ハリガネの問いかけに対し、ミツカは神妙な面持ちでそう即答した。


「でも、ソイ=ソース国から一方的に罪を着せられた挙句に追放されたわけですし、個人としては相当ソイ=ソース国に対して怒りとかあると思うんですけど...」。


「う~ん、やっぱり無いなぁ~。ただ、僕はソイ=ソース国に対して背信行為をしたなんて一厘も思ってないし、あの時皇帝に意見した事は間違ってないと今でも思っているよ。やはり、諸国との戦争はやるべきではなかった。結果、領土と国民を失ったわけだからね」。


ミツカさんは顔をしかめて考え込んでいる仕草をしながらハリガネにそう答えた。


「なるほど、国家に恨みは無いけど、自分の信念も間違っていないと...? 」。


ハリガネも神妙な面持ちでそう問い返すとミツカは力強く頷いた。


「うん、母国...祖国を恨む事は無いさ。僕や、家族が愛したかけがえのないたった一つの国さ。その気持ちは追い出された今でも変わらないなぁ~。勿論、国家転覆も考えていないし仮に僕が釈放されて国内に留まる事ができた時、民衆がそれを実行に移そうという流れになっていたら全力で説得していたはずさ。そんな事をしても、戦争と同じく無駄な血が流れるだけだからね。やはり、話し合いで解決すべきさ」。


「なるほど」。


「ただ、僕は家族もいるし今は無理でも、いつかはソイ=ソース国に戻りたいと思ってるよ。それまではこの部隊で“アルマンダイト”の討伐に協力したいと思ってるよ。“アルマンダイト”を討伐すれば国家もその戦果を認めてくれてソイ=ソース国に帰れるかもしれないしね~! それに、どんな形であれ自由の身になったわけだからね~! 今まではソイ=ソース国内のボディビル大会にしか出れなかったから大陸間の国際大会にも出てみたいな~! 」。


「ぼ、ボディビル...? 」。


「うん! 刑務所内から大会の映像を見ていたんだけど、僕もボディビルダーだから正直居ても立っても居られなくてね~! この山脈でしっかりとトレーニングして体重増やさなきゃね~! 山脈の事も全然知らないから冒険するみたいな感じでワクワクしちゃうな~! 」。


(国家から追い出されたのにどうしてこんなに楽しそうなんだろう...? この人は...)。


ハリガネは椅子から立ち上がって活き活きとバックダブルバイセップスのポージングを取るミツカを半ば呆れ顔で見つめながらそう考えていた。





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