皇帝の陰謀か
好きな事と好きな物?
う~ん、急に言われてもな...。
寿司と寝る事かな。
あと、酒は飲まない。
~エミールのメンバー、ファイド~
「昨日、国家反逆罪により終身刑が確定し服役中のミツカ=サウスタウン受刑者が、収容されていたコイクチ軍事刑務所内で急性心不全により死亡した事をソイ=ソース共和国軍が明らかにした。ミツカ受刑者は十年前のソイ=ソース帝国時代、当時の君主であったハセガワ皇帝の勅令によるソイ=ソース国南部(現在はウスター=ソース独立国領土)経由からケチャップ共和国への侵攻出動を拒否し、国家反逆の罪に問われ終身刑の判決が下っていた。その後、国内の国民革命により失脚したハセガワ皇帝は国外へ亡命し行方不明。そして、本国が共和国へ移行し君主国家が崩壊すると、軍事刑務所で収監されたミツカ受刑者の釈放支援運動が国内各地で展開された。ミツカ受刑者による三度目の再審請求中に起こった出来事であった...」。
ハリガネはモニターに表示された記事を読み上げると、しばらく基地内に沈黙が流れた。
「一体、どういう事だ...? 死亡したはずのミツカ=サウスタウンが何故、我々と共にいるというのだ? 」。
ゴリラ隊員は眉をひそめてミツカを睨みながらそう言った。
「...」。
一方、そのミツカは神妙な面持ちでモニターを見つめたまま黙り込んでいた。
「ミツカ勇士は昨日付けでソイ=ソース国から追放処分を受けたとの事ですがっ! これは一体どういう事なのでしょうかっ!? 」。
ヤマナカは動揺を隠せない様子でミツカの顔を横目で見ていた。
「おいッ!! これはどういう事だッ!? ソイ=ソース国では貴様が死んでる事になっているではないかッ!! やはり、貴様はミツカ=サウスタウンに成りすましてこの部隊を欺こうとしていたのかッ!? 」。
ゴリラ隊員はそう言いながら血相を変えてミツカに詰め寄った。
「...私は皆さんを騙すつもりなんかないですし、皆さんを欺くメリットが僕にはありません。ですが、何故に国内で僕が死んだ事になっているのかも分かりません...」。
ミツカは神妙な面持ちでモニターを見つめたまま、静かな口調でゴリラ隊員にそう答えた。
「この期に及んで白を切るつもりかッ!? 」。
「待ってくださいゴリラ隊員、何かおかしくないですか? 」。
ハリガネはゴリラ隊員を制止しながらそう問いかけた。
「おかしい...? 何がおかしいと言うんだ? 」。
「だって、ミツカさんは昨日ソイ=ソース国から追放されたんですよ? ソイ=ソース国が速報で伝えているミツカさんの死亡日も同じ日の昨日なんて、あまりにも不自然じゃないですか? 」。
「そ、それは...情報を内部で先にキャッチした軍の関係者とかが、ミツカ=サウスタウンに成りすましたりとか...」。
「そんな事して何の意味があるんですか? ソイ=ソース国の軍人が何でこんな危険な山脈付近で単独に行動したり僕等と接触する必要なんかあるんですか? むしろ、ソイ=ソース国の軍関係者が僕等と接触するなんて事を諸国に知られたら、国際問題になっちゃうじゃないですか」。
「まぁ...それはそうなんだが...」。
ハリガネがそう言うと、ゴリラ隊員は返答に困った様子で口ごもった。
「でも、ミツカさんを投獄したハセガワ皇帝が失脚して帝国も崩壊したのに、何でソイ=ソース国はミツカさんを解放しなかったんだろう? 終戦後の今の時代を考えると、反戦側の立場だったミツカさんが皇帝に異議唱えた行動はソイ=ソース国内でも評価されているはずです。しかも、ミツカさんは兵士として国内に尽力してきた功労者なのに、共和国となって再建を経ても変わらず十年間も獄中生活を送る事になっただなんて何か妙ですね...。ミツカさん、何か心当たりとかあります? 」。
ハリガネがそう問いかけると、ミツカさんは小さく溜息をついて口を開いた。
「あるとすれば...。今の大統領...かな」。
ミツカさんはハリガネにそう答えると、目付きを鋭くさせてモニターをずっと睨んでいた。




