第一章 束の間の休息①
「良く来たな、待っておったぞ」
リヴァイアサン討伐により、王国最大の危機を脱してから10日、俺たちはダンダルフに呼び出されていた。
「あれから、10日もたったのじゃな、本来であれば、今頃、リヴァイアサン討伐に出発しておったころじゃの」
「正直、今でもお主たちだけで、あのリヴァイアサンを倒したことが信じられん、何しろかつて女神様が唯一、引き分けになった相手じゃからの」
「もし、あのまま、戦いになったとして、いかほどの被害が出たことか・・・最悪、全滅もありえたじゃろう、グランドマスターとして改めて礼を言わせて貰う」
「マスター・・・」
「いやー、300年前は正直、負けに等しい引き分けでした、今回もハルトさんが居なければ負けてました。それに30年前にはデウスにも負けちゃってますし・・・」
エリス・・それは言っちゃダメな奴なんじゃないか?ダンダルフのやつが「やっぱり」って顔してるぞ?
「ところでマスター、今日はわざわざ礼を言われるために呼び出したのですか?」
「あ、いや礼と言えば礼についてなんじゃが、コルスロー男爵閣下からな、今回の事で、直接礼をしたいと申し出があった」
「コルスロー男爵閣下と言うと、私も直接はお会いしたことはありませんが、確か王国軍が誇る猛将、赤鬼のスズ・S・コルスローの事ですね?王宮に居る時は、名前だけは、よく聞きました」
フロリンデはコルスロー男爵の事を知っているようだ。
「うむ、その赤鬼からじゃ、武を好む閣下から国を、いや世界を救った英雄を一目見たいとのたっての願いでの」
「あのリヴァイアサン騒動で延期されていた海開きを行うので、そこへ是非招待したいとのことじゃ」
特に断る理由もないので、俺たちは招待を受けることにした。
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さて、コルスローには一度訪れたことが、あるので、実は移動は一瞬ですんでしまう。
なので、今日は王都の例のブティックを訪れている、特別注文をするつもりだ。
「なるほど、水着タイプですか?わかりました、7日ほど頂ければ作れると思います」
「おい、ケイトは本当に要らんのか?」
「要らん要らん、そんな窮屈なもの着けてられるか」
「しかし、普通の水着じゃ、下がアレだろ?」
「んなもん、適当にパレオでも巻いときゃ良いだろ?」
まあ、本人が良いなら良いか、でもおまえ、油断するとすぐに股が開いてるから、見えてしまいそうで怖いんだけどな・・・
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ブティックを後にした俺たちは屋敷に向かって歩いている。
「そう言えば、赤鬼については、他に何か知っていることはあるか?」
俺はフロリンデに赤鬼について尋ねてみた。
「そうね、コルスロー男爵家は代々武官の家柄なんだけど、特に当代のスズ閣下の力は傑出していると言われているわ」
「なんでも、一人で1000の野盗を退治しただとか、領内に出没したレッドドラゴンの単独討伐に成功しただとか、とにかく、その手の話には枚挙に暇がないわ。ちょっとした生ける伝説ですね」
「あと、夫婦仲が大変良いことで有名ですね、スズ閣下は正妻一筋らしく、この正妻との間に三人の息子をもうけています。
スズ閣下自身は王国軍の指揮が忙しいため、普段の領地経営は、この正妻に一任されているそうです」
「なるほど、それほどの男に英雄扱いされるとは少しくすぐったいような気もするな」
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そして海開き前日
「それでは行ってくる、留守は頼んだ」
「「行ってらっしゃいませ」」
今回は招待を受けているので、宿泊場所なども用意されている。
俺たちは留守をジークとミルフィーに頼むと、魔導車に乗り込み、前回野宿したペルテ村の近くへ転移する。ここからだとコルスローまで三十分程で到着できる。
俺たちが魔導車を走らせて暫くすると、馬車が横転しているところに出くわした。
ガラの悪い20名程の男たちと赤髪の少女が何か話している。
馬車のそばでは商人風の男が震えていた。
「ちょっと、あんたたち、私の町で何やってるのよ!」
赤髪の女の子がガラの悪い男たちに食って掛かってる。
「ああ?俺らは、このおじさんに、ちょーっと用があんだよ、なに?そっちの荷物を全部差し出しゃ、命までは盗らねえって・・・
お前は後でお持ち帰りしてやるから、それまで、おとなしく待ってな?」
「待ってください、に、荷物はすべて差し上げますから、その娘には手を出さないでください。その娘は私とは無関係です」
「知ってるよ、俺らが馬車ぶっ壊したら、いきなり町から走ってきて、俺たちに食って掛かってきたからな、よっぽど自殺願望でもあるんじゃねーか?
ま。こんな上物殺しゃしねーけどな」
そう言って、男たちはゲラゲラ笑っている。
どうやら、盗賊の犯行現場を目撃した、女の子が一人で駆けつけて来たらしい、無茶をする。
「待て!、お前らの相手は俺だ」
俺は、例によって男たちと女の子の間に一瞬で移動した。
「うそ!私が見えなかった!」
女の子の目は驚愕で見張られている。
「なんだよ、てめぇは!ぶっ殺されてえのか?たく、次から次にめんどくせー!でもよく見りゃ、てめぇの連れてる女は、みんな良い女ばっかじゃねーか、へへへ、そいつらはみんな、まとめてお持ち帰りしてやるぜ?おめぇは・・・そこのおっさんと一緒に、魚のえさにでもなって貰おうか!」
やっぱり、殺さないと言う約束は守る気がなかったらしい、おれは杖を取り出し、片っ端からぶん殴って行く。
盗賊たちはあっという間に全滅した。
「つ、強い・・・あなた何者なの?」
「俺はハルトだ、それよりも、もうこんな無茶するんじゃないぞ?」
そう言って、俺は女の子の頭を撫でると、そのまま魔導車に乗り込み、コルスローの町へ走り出した。
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「ここが、ホテル・シャラダバだな」
俺たちは男爵が用意してくれたと言うホテルに来ていた。
「いらっしゃいませ、ご宿泊でしょうか?」
「俺はコルスロー男爵閣下より招待を受けている、ハルトだ」
「男爵閣下より、お話は伺っております。お部屋は最上階のロイヤルスイートになります、ごゆっくりお寛ぎください」
俺たちは部屋へと移動した。
「広ーい!」
「ふむ、王都でもなかなか見れない、良い調度だな」
「へー!なかなか良い部屋じゃねーか」
「お兄ちゃん、テラスから海が見えますー」
明日の式典が終われば、フリーだ、束の間の休日を楽しむとしよう。
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夜も更けて来たので、今日も嫁たちを平等にかわいがっている。
ケイトが「たまには攻受交代しないか?」と迫ってくるが、もちろん断固お断りだ。
翌朝、いよいよ式典だ、俺たちは正装に着替えて、式典会場へと向かう。
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会場へ着くと男性一人と、女性二人に迎えられた。
男性は25歳くらい、えらく若いが、この人が男爵だろうか?
女性はそれぞれ20歳くらいと16歳くらいだ。20歳くらいの女性が、正妻だろうか?16歳くらいの女性の正体がわからない。
男爵は正妻一筋らしいので側室と言うことはないだろう、妹かなんかだろうか?
「本日は招待を受けて頂きありがとうございます。私はスズ・S・コルスロー男爵の嫡男でアイク・S・コルスローと申します」
25歳くらいの男性が挨拶してくる、どうやら、この人は男爵の嫡男らしい。
「私はスズの妻でアリスと申します。よろしくお願いします」
なんと、この20歳くらいにしか見えない女性が男爵夫人らしい、どう見ても息子さんより若く見えるんですが?
「私はスズ!昨日はどうもありがとうね」
16歳くらいの女性は、よく見ると昨日町の入口で合った、あの赤髪ツインドリルの女の子だ。
ん?スズ?
「まさか・・・赤鬼・・・?」
「私の事を知っているのですね!光栄です。そうです、私がスズ・S・コルスロー、ここの領主を務めています」
「えぇーーーー!」
俺は平静を装うことに失敗した。




