番外編 レイジェント家
お久し振りです。
端末替えログインできなくなり、長らく執筆ができず申し訳ございませんでした。
期間がかなり空き消そうかと思いましたが、読んで下さった方が少々いらっしゃいましたので残す事にします。
当初の予定ではあと4章分執筆予定でしたが、今更再開しても…と言う思いと、短縮してでも完結まで執筆したいと言う思いがあります。
もし、2021年2月.3月辺りに読んで下さった方々で、今でも続きが読みたいと言う方がいましたら再開しようと思います。
※この番外編は2021年3月に投稿したものであり、最新の投稿ではございません。
前書きを追加しただけです。
「コーキが旅立って…かなり経ったな」
サランド領の領主邸にある執務室。
たくさんの書類に囲まれながら、忙しく働いていたダムルスが一息つき呟いた。
「そうね。元気にしているかしら」
ダムルスの第2夫人であり、僕の母ミルシアがソファに座りながら相槌を打つ。
「あの子なら大丈夫だと思うけど…」
ミルシアはコーキがいるであろう方角を向き言う。
「思えば洗礼式を受けてから、コーキは変わったな。元から冒険者は目指していたが…加護でここまで変わる人間を見た事がない」
ダムルスは紅茶を飲みながら、当時の事を思い出している。
「私も…あの子がSランクになるなんて…」
ミルシアは心配した表情で言った。
「俺もだ。せいぜいCランク…そう思っていたらSランクになるし…爵位を与えられ侯爵になるし…王女様と婚約だ。もうコーキは、サランド領に留まっていい人間じゃない。俺はコーキの旅を応援している」
ダムルスはコーキを子どもではなく、1人の大人として扱うつもりのようだ。
「ええ。分かっているわ。だから貴方も、コーキの領地を代わりに運営してるんでしょ」
ミルシアは温かい目をダムルスに向けている。
「ああ。……といっても、コーキが旅出る前にある程度整備してくれたし、そこまで苦労はしていない。本当、コーキは子どもとは思えない」
ダムルスは紅茶を一口飲む。
「ゴースリア王国初のSランク冒険者が領主。それを聞いて移り住んできた領民が増えた。我がサランド領にも来てくれた領民も多い。これからどんどん、発展させていくぞ」
ダムルスは気合の入った表情で宣言した。
「ふふ。そうね。帰ってきたコーキを驚かせるくらいに!」
―――――――――――――――――――――――
コーキの兄、ジルは来週誕生日を迎える。
来週で15歳。そう、成人になる。
今はそのパーティーの準備で大忙しだ。
部屋の装飾はレイアとメイドさん達で行なっている。
パーティーに出す食事、飲み物、テーブルの配置等はジルが担当している。
他の貴族家では、当主が気合を入れて全てを決めてしまう。
だが、レイジェント家では成人する以上、パーティーを開く上での招待状、おもてなし等全て自分でやる…と言う教育方針だ。
だからダムルスは資金は出しても手は貸さない。
レイアが手伝っているのは、ジルに頼まれたからだ。
手伝う人材も、ジルが手配している。
「ジル様。パーティーに出すワインの候補が無事届きました。どれも最高級の一品です」
料理長の中年男性がジルに声かける。
「わかった。ありがとう。これから私と一緒テイスティングしてくれ。意見を聞かせてほしい」
「かしこまりました」
キッチンに向かうと、届いたワインが並べられていた。
「この中から2本選ぼう」
ジルと料理長は一本一本グラスに注ぎ、香りを確かめた。
香りを確かめた後は味見をする。
これを五本分やった。
「やはり高級品なだけあり、どれも美味しいですね」
料理長はワインを飲み、感想を告げる。
「そうだな。それぞれ特徴があり、どれも捨てがたい」
ジルは悩んでいた。
「お出しする料理を摘みながら飲む事を想定すると…甘味がありほんのり余韻の残るこちらのワインは相性がいいかと」
料理長は一本提案した。
「なるほど。立食中のことも考えると、たしかにその方がいいかもしれないな」
ジルは納得した。
「シャンパンは辛口で酸味のある品だったな。なら…もう一本はこの渋味のあるこれにしようと思うのだが…」
そう言ってジルは一本瓶を持つ。
「はい。いいと思います」
料理長が賛成した。
「ではこの2本を追加で注文しておいてくれ。足らないより余らせる方がいい」
「かしこまりました」
料理長は一礼し、部下に伝えに言った。
ジルは会場に戻る。
「どう♪?なかなかおしゃれじゃない?」
レイアがジルに装飾しているステージを見せる。
「いや……誕生日パーティーではあるけど…これは流石にないだろ…」
ステージの後ろには白いカーテンがある。
そのカーテンには…
【ジル君♪誕生日・成人おめでとう♪】
なんて文字が貼られている。
たしかに誕生日パーティーではあるが…
これは身内だけならともかく、他の貴族を呼ぶなら無しに決まっている。
「もう少し…レイア節を抑えてくれ…あと、これはおしゃれじゃないから」
「え〜……自信作だったのに…」
レイアはしょんぼりした。
レイアに頼んだのは間違いだったと、ジルはこの時後悔していた。
メイドさんが装飾してくれているところは文句なしなのに…
――――――ジルの晴れ舞台は、無事終えることはできるのか…




