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最強のSランク冒険者?…実は神の使徒です  作者: VAN
第2章 アーリジャ大陸編
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第十一話 どうして…



両者睨み合う中、先に動いたのはヘルディだった。


《剛拳衝破》


僕とヘルディさんの距離など気にせず放たれたその拳から、物凄い拳圧が放たれた。


――――ブォォォォォ――――――

――――バキバキバキバキッ――――


拳圧で僕の後ろにあった木がどんどん折れていく。

僕は必死に耐えていた。


すると一瞬でヘルディは僕の目の前まで来て


――――ボコッ――――――


僕は吹っ飛ばされた。


―――――ピシッ―――――


僕の鎧にヒビが入った。


なんて威力だ…

僕は咄嗟に拳を防ぎ鎧にヘルディの拳は当たらなかったのだ。

それなのにヒビが入った。


もし…拳を防ぐ事が出来なければ、鎧は粉々になっていただろう。


炎拳(えんけん)

雷拳(らいけん)


ヘルディの右手は炎を、左手は雷を纏った。


《炎拳弾》

拳を振ると、巨大な握り拳の炎が僕に向かってきた。



《風雷一閃》


――――シュッ―――――


僕は剣を振り、炎を斬った。


風雷一閃…風魔法で振りのスピードを、雷魔法で貫通力・斬れ味を高めた僕のオリジナル魔法?オリジナル剣技だ。



「この炎を斬るか…本当…凄えな」


――――ドッ――――


「グハッ……」


いつの間に僕の懐に…


僕はヘルディの雷拳をくらった。

僕の鎧にはヘルディの拳の穴が空いた。


どうやらヘルディの雷拳も、貫通力を高める効果があるらしい。


(強い…これがSランクか)


それにしてもこの拳…物理攻撃…もしかして…


「ヘルディさん…1つ聞いてもいいですか?半年ほど前、ガドーネス王国の神殿に行きましたか?」


僕はあの崩れた神殿がヘルディの仕業ではないかと思った。



「ああ行ったぜ。つーか…まどろっこしい話は無しだ。お前、使徒だろ」


「え!?」


驚いた。僕から確かめようと思っていた事を、ヘルディが言ったのだから。

これで、ヘルディが神の使徒というのは確定だろうな。

……問題は…どっちの使徒だ?


「ヘルディさんも使徒ですか?」


「ああ。そうだぜ。やっぱり…お前は使徒だったか、んじゃ悪いが死んでくれ」


そういうとヘルディさんは全身に雷を纏った。


「6速に雷。さっきのに反応できなかったお前には防ぐことはできねぇ」


――――バチッバチッバチッ――――


纏った雷が音を立てる。



《七剣星・氷結》


――――パキッパキッ――――


氷でできた7本の剣が僕の周りに出てきた。


一本が僕の近くに落ちる。


―――パキパキパキパキッ―――


落ちた剣を中心に地面に氷が広がっていく。


ヘルディの足元にも氷がいった。


ヘルディがジャンプした。


―――その瞬間を狙い、残り6本をヘルディ目掛けて飛ばした。



《極熱炎拳》


魔力を右手に集中させ、強力な炎が右手を纏っていた。


向かってくる拳を一飲みにする程の炎を放つ。


一瞬で残り6本が解かされた。



……かに思われただろうが、違う。


ヘルディの拳を氷漬けにした。



「うぉおおおお!!」

炎の出力を上げ、必死に解かそうとする。


僕がその隙を見逃すわけがない。



――――シュッ――――


―――パキパキ――――


僕が振った剣をモロに受け止めて、鎧は崩れていった。


丸腰になったヘルディ。もはや勝負は見えた。


「くそっルージア神の使徒に負けるとは…」


ん?ヘルディさんは今、ルージア神の使徒…と言ったのか?


「ヘルディさん。僕ルージア神の使徒ではないです」


「じゃあ…お前も…地球神の使徒?」


「はい」


「そうか…悪かったな、殺そうとして」


僕達は戦うのをやめ、握手した。


「それで、聞かせてもらえませんか?何故、ガドーネス王国の神殿を破壊したんですか?」


戦いが終わり、僕は聞きたい事を質問した。



「あ〜…そうだな。コーキと一緒にいたカリンも地球神の使徒なのか?」


「いえ、彼女は聖女ですが使徒ではないです」


「そうか…ならギルドで話すよりここで話した方がいいな」


そう言うと、ヘルディさんは岩の方へ歩き、座った。

僕もそれに続き、適当な岩に座る。



「俺と同じ、地球神の使徒に会うのはコーキが初めてだ。だが、俺はルージア神の使徒とは会った事がある」


なんと、ヘルディさんは既にルージア神と遭遇していた。


「いいか、コーキ。お前はルージア神の使徒ならSランク冒険者になっていると思い、俺の元に来たのだろう?だがな、ルージア神の使徒が冒険者とは限らねぇ」


ヘルディさんは真剣な表情で僕の目を見て言った。


「ガドーネス王国の神殿を俺が壊したと言ったな。あの神殿の神殿長はルージア神の使徒だった。だから俺は戦った」


遭遇したどころか戦ったのか…。



「つまり、ルージア神の使徒と戦った結果、あの神殿が壊れたと…。ヘルディさんはルージア神の使徒を倒したのですか?」


僕の問いに、ヘルディさんは顔を曇らせた。


「それがな。追い詰めてトドメの一撃を当てたら、スーッと消えたんだ…」


消えた…?


「…って事は、逃げられたって事ですか?」


「そうかもしれないし、倒した時に死体が残らない様にしたのかもしれない。ただ確実に言えるのは、消えた瞬間、奴の気配は完全になくなった」


逃げた場合でも気配は無くなるだろう。

本当にどっちだか分からないな…。


「ルージア神の使徒…どうでした?」


やっぱり…使徒だから強かっただろうな。

だが僕達地球神の使徒は、ルージア神の使徒も授かるであろう加護に加え、祝福も授かっているのだ…。

正直負ける気はしない。


「あ〜…強かったぜ。何故かあいつ、力を出しきれていない様だった。それなのに俺と互角以上に戦ったからな。最初に一撃与えるまでにかかった時間は、コーキよりも長い」


「ヘルディさんの6速で僕はすぐに一撃をくらいました」

僕は鎧の穴の空いた部分を指差しながら言った。

「ルージア神の使徒はそれすら避けたのですか?」

僕は苦い表情をして質問する。


「ああ、さっき使った6速に雷を纏ったやつ、あれで何とか一撃を当てる事ができた」



なるほど、僕はあれを見た瞬間やばいと思い、《七剣星・氷結》を使った。

あの魔法は7本の剣が属性効果を持ち、自在に操る事ができる魔法だ。

今回使ったのは氷属性。

落とした一本目で広範囲に氷を張り、足止めしつつ防御壁を展開するのが目的だった。

そして残りの6本でヘルディさんを倒すつもりだった。


結果的には防御壁を発動する前に勝てたが、もし失敗したらヘルディさんのスピードを見切れず、僕が負けていたかもしれない。


そのヘルディさんが何とか一撃を与えたと言っているのだ。

相当手強いな……


「コーキ。お前はまだルージア神の使徒と戦っていないんだろう。よく覚えておけ。ルージア神の使徒は加護の他に()()と言うのを授かっている」



……才…能…それって…地球が滅ぼされる前、まだ地球神が神だった頃、人間に授けていたと言っていたものだ。


どうして……ルージア神の使徒が才能を……


―――僕は驚き、沈黙してしまった。

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