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ウイルター 英雄列伝 戦場のガーベラと呼ばれた巫女  作者: 響太C.L.
ハイニオスに転学 編 下
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59.相手の思うままに戦法 ②

 煙が消えると、蛍ほたるはのぞみの後ろの柱に立っていた。先程の爆撃でまったくの無傷だったかのように笑っている。


「おバカさん!どこ狙ってるのかしら!」


 のぞみを乗せた盾は、空を水平に旋回し、さらに蛍を狙い撃つ。光弾を連続で撃ち出すが、蛍は三本の柱の間を俊敏に移動する。その動きがあまりにも速いため、まるで分身のように見えた。


「遅い!あんた、本当にド素人ね!」


 当たらなかった光弾が落ちると、ステージの海域にいくつもの水柱が立った。


 のぞみは高度を下げ、柱の上に着地する。左手には盾を、右手には金色の刀を持って、前に跳び進んだ。


 バトル開始以来、初めて積極的に攻めるのぞみの様子に、レイニは興奮したように実況する。


「カンザキさん!一直線に攻めていきます!」


「ふん?やっと負ける覚悟が決まったの?!」


 蛍はまた手裏剣を繰り出し、のぞみの動きを牽制する。


 のぞみは盾を真正面に翳し、手裏剣を防ぐ。そのまま蛍に接近すると、刀を振り出した。その瞬間、ふっと、蛍の姿が消える。


 次の瞬間、のぞみの頭上に、脇差しが振り下ろされた。


 その時、バトル序盤にのぞみの手から落ちた金色の盾が飛んできた。その盾は、攻撃を繰り出す直前を突いて蛍に激突する。


「なに?!」


受け身を取る間もなく、蛍はその衝撃で撃ち飛ばされた。


 無防備なところを奇襲された蛍は、30メートルも先にある柱の上の床に転がる。


 レイニが感激したように叫んだ。


「おぉ!!これは予想外の一撃です!」


 蛍が手の甲を見ると、青ゲージは3870まで上がっている。


 すぐに立ちあがった蛍の額には、青筋が浮かんでいた。


 同じDレベルの操士(ルーラー)を相手取るのは初めてだった蛍は、すぐに勝てるものと気楽に構えていたが、今、その余裕はなくなり、狼狽の色が表われている。


 とはいえ、闘士は日常的に過酷な身体訓練を積んでいる。のぞみの盾の一撃は、石柱を崩れさせるほどの重さがあるはずだったが、蛍の体はさほどダメージを負っていない。


 のぞみの姿を確認すると、怒りの表情がすっと消えた。むしろ、静かな笑みが浮かんでいる。


「な~に?さっきの攻撃。あんなんじゃ効かないわよ!(グラム)の使い方、教えてさしあげましょうか?暗器にこんな使い方があるってこともね!」


 蛍が右手でベルトに触れてから、新たに手裏剣を投げた。


 距離を取って手裏剣を防いだはずののぞみだったが、腕と脚が切れた感触が残った。見ると、六方手裏剣の中に、源で作ったのではなく、実体のあるものが混ざっていたようだ。


「……こんなに距離を取ったのに?」


 のぞみは痛みに耐えながらも、光弾で反撃する。


 蛍はさらにスピードを上げ、それを避けた。


「さーて、あんたにギフトをあげるわ!神薙流奥義『迅雷六紋剣』!」


 蛍の片手には、120センチはあろうかという恐ろしく大きな手裏剣が握られていた。石板から跳びあがると、のぞみをよく狙うように腰を大きく振り、ブン、と投げ出す。


 あんなに大きな源気の塊を受ければ斬られてしまう。かといって、避けてもまた爆発が起こるだろう。のぞみは何とかそれを避けた。


「アホ!!それはアカン!」


 つい、声が出てしまったというように、綾が言った。


 何とか避けられたと思っていたのぞみだが、蛍はもう反対側に回っていた。それまでの真剣な表情から突如、悪意に満ちた顔つきになった蛍は、重い蹴りを打ちこむ。のぞみは


一直線に砂原へダイブした。


「ああっ!!」


 衝撃を防げないまま受けた蹴りのダメージは大きく、情報ボードの赤のライフゲージは9670まで伸びた。


「今度はモリジマさんが、無防備なカンザキさんに一撃を食らわせました!これはダメージが大きい!カンザキさん、立ち上がれるでしょうか?」


「オヨヨン……、これは酷い一撃だヨン……」


 蛍との抗戦を見てきた(ラン)は、目頭を熱くして叫んだ。


「のぞみちゃん!!負けないで!立ち上がって!!」


 やられたらやり返す。満足げに笑いながら、蛍が声をあげる。


「あはは!弱者はさっさとくたばりなさい!」


 ドヤ顔でのぞみを見下す蛍に、観覧席からブーイングの嵐が降り注ぐ。


「人殺し!!」


「不適切者!」


「異端者ヘラドロクシーめ!帰れ!」


 どんなに野次が降ろうとも、闘競バトルは勝者のものであると蛍は考えている。


「うるさい!観客は黙って見てなさい!」


 蛍が叫ぶと、野次はさらにヒートアップした。


「わからずや!」


「器が小さいぞー!」


「お前が今立ってるのはカンザキの優しさだぞー!」


「みなさん、やめてください!」


のぞみの叫び声に、フミンモントルの心苗たちが座っているエリアからの野次が鎮まった。 のぞみは痛みに耐えるようにお腹を支えながら、ゆっくりと立ちあがった。


宣言(ディクレイション)闘競(バトル)はフェアプレイです!罵り合いはバトルの雰囲気を腐らせるだけです」


「ふーん?まだ戦う気?」


「もちろんです。これから、私の本気をお見せします」


 そう言うと、のぞみの体を纏っていた光が二倍に広がった。その源気は、まるで満開の椿の花のように芳しく香り立っている。



         青    森島蛍  : 神崎のぞみ    緑


  ダメージポイント    3870 : 9670


  源気数値(GhP)   6320 : 5460


  残り時間           12:99


                                    』


つづく

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