表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウイルター 英雄列伝 戦場のガーベラと呼ばれた巫女  作者: 響太C.L.
日常鍛錬に隠す殺意篇 下
315/345

314.狂い、散る、尖兵

のぞみたちが柱の間に入ったおよそ三分後。


 サイバスチャンと四人の『尖兵(スカウト)』の交戦は続いていた。


 庭側にいた大剣を持つ男子心苗は、スーツの背とブーツに内装した源気(グラムグラカ)反転アクセルブースターで宙を飛び進む。一方のサイバスチャンは、搭載している戦闘機元(ピュラトファイター)の、接近戦に対応するステークアームを伸ばしてその攻撃を受け止める。


 サイバスチャンの隙を突くように、男は二度目のバスター砲攻撃を仕掛けた。

 だが、戦闘機元が展開したバリアにより、光弾は弾かれる。


 男がサイバスチャンの注意を引きつけている間に、庭側で待機していた小柄な女性『尖兵』は、盾をさらに変形させ、傘の柄の部分に当たるパーツが内装するグレネードでサイバスチャンを狙い撃つ。


「止まって……!」


 グレネードが爆発し、赤い煙幕が上がった。サイバスチャンは煙幕の刺激物質にやられたのか、激しくむせ、涙や鼻水も溢れだしている。


 男が三度目のバスター砲を撃った。

 サイバスチャンは戦闘機元を浮かばせて中空への退避行動を取る。


 そして戦闘機元を跳び離れると、それらは分解し、アーマーパーツに変化した。サイバスチャンはパーツを組み立てるように身につけていく。

 アーマーパーツのおかげで、生身で空を飛ぶことすら可能になったサイバスチャンは、手足を一度縮こめてから、強く投げ出す。その動きに合わせて、機元(ピュラト)装甲からレーザービームが乱射された。


 大剣の男は機敏な動きで距離を取り、ビームを避ける。


「……さすがは『尖兵』資格保持者。そう簡単には近付けないか」


 女性は盾の下に身を隠しながら、上空のサイバスチャンを見上げた。


「あははははははは!!!!!うるさい小バエども!死ねぇ!!」


 サイバスチャンの首や頬には血管がビキビキと強く浮かんでいる。狂気の中にある彼は、右腕の機関砲武装を使い、源気の弾丸を二人に浴びせた。


 庭の二人がサイバスチャンを引きつけている間に、リーダーともう一人の若い男が、スーツのパーツを使って宙に浮き、背後を取った。そして二人は銃身の長いバスターランチャーに源気を集め、撃つ。射出された液体弾が、サイバスチャンの背中にカラーボールのように付着する。ネバネバした紫色の液体が機元装甲の機能を無効化し、サイバスチャンは飛行能力を失い落下し始めた。


 リーダーの男が墜落するサイバスチャンに近付き、水晶化したダブルランサーを長く伸ばして彼を打つ。


「大人しくしろ!!」


 その一撃でサイバスチャンは意識を失ったまま地面に激突した。ネバネバの液体で自由を奪われてはいるものの、安心はできない。三人は距離を取ったまましばらく見ていたが、十数秒経っても大きな動きはなかった。


 リーダーは気を引き締めたまま、本部に連絡を取る。


「こちら、ヘーラ小隊。少し手間取りましたが、サイバスチャン・ロヴァートを制圧しました」


<イールトノンに連行してください>


「了解しました。ロヴァートを拘束します」


 落ち着いた様子のサイバスチャンに、四人が近寄る。


 突如、サイバスチャンの目が大きく見開かれた。彼は発狂したように雄叫びのような笑いを響かせる。粘着液で動きを封じられてはいるが、源気の強度が異常な勢いで上昇した。


「アッハハハ!!滅べ!全て滅べ!!!」


 サイバスチャンが妖しげな光を帯びているのを見て、一人が叫んだ。


「隊長!源気数値がデータ値を数倍に上回り、さらに上昇しています!」


「まずい!総員待避だ!!!」


 次の瞬間、サイバスチャンは自身の源気の限界を突破した。最大限に集中していたエネルギーは一気に放出され、恐ろしい光とともに爆発が起こった。

 直後、直径20クルものキノコ雲が浮かんだ。機関が結界を作っていたため、被害は最小限に抑えられたが、サイバスチャンの寮は壊滅状態で瓦礫が散らばり、空圧は半径2クル圏内に届いて樹木を強く揺らした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ