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ウイルター 英雄列伝 戦場のガーベラと呼ばれた巫女  作者: 響太C.L.
日常鍛錬に隠す殺意篇 下
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153.教室の変化 ②

 高音ながらも美声である男の声に、その場の五人が振り向く。


「フェラーさん?!海外のミッションを受けているんじゃなかったんですか?」


 最初に反応した藍に、男は美しいグリーンの瞳を細めて笑いかけた。


「皆さん、ただいま。ご無沙汰しています。ようやくヒーラーの問診ツアーの護衛任務から帰還しました」


 洒落た金髪になめらかな白い肌。高い鼻にも高貴な雰囲気がある。

 ティフニーがその男に声をかけた。


「おかえりなさい。任務が無事に終わったようで何よりです」


「ハヴィテュティーさん、相変わらず、その源の気配に癒されますね」


 初めて会う美少年に、のぞみも声をかける。


「あの、あなたはどなたでしょうか?」


「のぞみさん、先ほどお話にあがったフェラーさんですよ。彼がA組の実績評価一位の心苗です」


 フェラーは藍からのぞみへと視線を移す。


「ランさん、恐れ入ります。あなたはカンザキさんですね。私はティム・フェラーと言います。あなたのことはトヨトミ先生とハヤガタさんたちから伺いました。色々とお困りのようですね?」


 話しぶりからも知性を感じさせるフェラーに、のぞみは反応が遅れる。


「ええ、はい……」


「私は対人戦よりも、誰かを守る方が得意です。何かあれば気軽にお声かけください」


「は、はい。よろしくお願いします」


 のぞみは勢いでフェラーに頭を下げた。

 藍やのぞみと話しているのをじりじりと待っていた修二は、ようやく好機を得たとばかり声を上げた。


「ティム、俺と闘競しようぜ」


「フハさん、前から言っていますよね。私は医術で人を救う。あなたは剣術で人を助ける。その実績で勝負をしましょうと」


「ああ。だが、闘士(ウォーリア)同士として、時には武力で手合わせするのもいいだろ?まさか逃げないよな」


 子どもの喧嘩を見ているようで、ティムは軽く溜め息をつく。

 だが、理性的な笑みをこぼすと修二に向き合った。


「仕方ありませんね。あなたがそこまで情熱を持って私に挑みたいと仰るなら、受けて立ちましょう。フリーバトルならいつでも構いませんよ。ですが……。あなたがすぐに負けてしまわないか、今から心配です」


「案ずるな、今回はお互いに息が乱れるまで戦おうぜ!」


「ええ、お気持ちにお応えしますよ」


 修二とのバトルが決まったティムは、教室の様子があまりに閑散としていることを気にかける。


「それにしても、ずいぶん人が少ないんですね。自主修業している人がいるにしてもこの数では……。何かありましたか?」


「クラス評価のことでドイルさんがちょっと威張りすぎたんや。反発した心苗(コディセミット)たちが彼女を敬遠して来んようになってしもた」


 ティムは軽く顎を触った。


「私も個人意志の尊重は大切だと思いますから、ドイルさんの考えも理解できます。ですが、彼女は評価順位の先にある目標を見つけた方がよさそうですね?」


「ライさんの言うとおり、この時期にバトルの強要は逆効果やったな」


「カゼミさん、あなたもクラス評価は気にしている方だと思いますが、今回の件に関してはどうお思いですか?」


「基本的には重視してるけど、それを要求するのは今やない。中間テストの評価が出てきてからでも遅くないやろ」


 実際に現場を見ていないのぞみは、勝手にしょんぼりしていた。


「いえ……。多分、ホームルームに皆さんが来ないのは私のせいでしょう。今も教室の外で先輩方が警護しています。こんな状況であれば、離れていた方が気楽ですよね……」


 バトルも決まり、ランチボックスの中身を完食してホクホク顔の修二が顔をあげた。


「何で神崎さんのせいになるんだ?」


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