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ウイルター 英雄列伝 戦場のガーベラと呼ばれた巫女  作者: 響太C.L.
日常鍛錬に隠す殺意篇 中
141/345

140.背合わせ戦い二人 ①

 その頃。洞窟の底にある磯場では、のぞみと初音がゴブロスの群れと戦いを続けていた。


 本陣がのぞみに撃破されたため、一時的に群れはパニック状態に陥っていたが、案の定、すぐに初音の近くにいた一体のゴブロスが、ボスに進化した。ほかのゴブロスと変わらない緑色の皮ふだったのが、濃い土色に染まっていく。子分からボスへと進化することで、常に誰かがボスの座につく、魔獣の性であった。


 のぞみの展開した10個の金毬は、ゴブロスたちの捨て身の攻撃により、すでに消えていた。

初音は居合いのタイミングを失い、またピンチになった。


 その時、鳥の鋭い鳴き声が聞こえた。3羽の八咫烏(やたがらす)が三方から飛んできて、ゴブロスの群れを撹乱する。烏たちの奇襲を受けたゴブロスは、その(くちばし)や翼に触れたところから体を燃やした。


 烏の後ろから、のぞみも戻ってくる。二刀流の剣を構え、攻防同時の連撃で魔獣を一体ずつ捌いて突破口を作り、初音と背中合わせになる。


「舞鶴さん!大丈夫ですか?」


「はい…ご、ごめんなさい……。神崎さんが助けてくれたのに、足手纏いになって……」


 ゴブロスの個体はすでに10体を下回っている。


「そんなことを気にしないでください、残りの魔獣を一緒に倒しましょう!」


「でも、どうしたら……?」


「どうやら一気に全滅させなければ、次々に新たなボスが生まれてしまうようですね。……舞鶴さん、目を閉じていてくれますか」


「えっ?どうして」


 突飛な提案に、初音は驚いた。初音は目を閉じたままで技を繰り出す余裕などない。

 だが、のぞみには活路が見えているようにはっきりとした口調で続ける。


「私が魔獣たちの動きを封じます。それから、一気に倒しましょう」


「分かりました……」


 金毬を展開させた防衛陣も、八咫烏による魔獣の撹乱も、どれも優れた戦術だった。のぞみの戦略は大胆なものだったが、初音は今、それを安心して信じることができる。刀を鞘に収め、居合いの構えを取って目を軽く閉じた。


「目を閉じました」


 準備は整った。

 のぞみは狭い歩幅で、二歩、歩き出す。そして三歩目を踏み出すと、右足を前にした。左手を捻り、銀の刀の刃の角度を変えると、顔はしっかりと前方を見据える。目を閉じる。右手に持った金の刀を、銀の刀の峰に当てると、二つの刀を素早く擦り合わせた。

 金銀の刀が交差したとき、眩しい光が放たれる。


『日月明神剣・金剛切り』


 皆既日食の終わりに見えるダイヤモンドリングのように、眩い光が走る。一瞬で強い光に照らされ、無防備なゴブロスたちは一時的に失神し、戦闘能力を失った。


「舞鶴さん、今です!」


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