133.ダンジョンへ奔走するルビス
ステージ内にある要塞の屋上で観戦していた三年生の男女複数人は、ジェニファーチームの戦いを見ながら違和感に気付いていた。
「おひょう!!これは盛大な戦いだな!?」
「あれ?でも、さっきここのルートを通ったチームは、ワイバーン型のボスじゃなかったよね?」
「娯楽性を高めるために、班によって設定するボスを変えてるんじゃないか?」
「でもルビス先生は課題の途中で急にコンセプトを変更したりするタイプじゃないよね。それに、二年生になったばっかりの心苗の日常課題で魔竜ベルティアートを入れるなんて、やりすぎじゃない?」
ダンジョンの玄関ではルビスがコントロール核を開き、第二班と第三班、合わせて10組のライブ映像を見ている。
予定のないダミーボスの出現に、ルビスは表情をいっそう険しくした。
石壁に直径2メートルの円形の章紋が光った。先の見えない真っ暗な穴の中から、アランに連れられて京弥とアニターが連れ戻されてくる。二人は棄権したのだった。
「ああ~悔しい悔しい!骸骨のゴロ石トラップから逃げたのに、コースアウトして迷子になるなんて!」
アニターは赤髪ツインテールを振り回している。棄権したというのに、まだまだやる気に満ちている。悔しいと言いながらも、どこか楽しげだ。
「だから俺の服を引っ張るなって何度も言ってるだろ!おかげで俺までトラップに巻きこまれちまったじゃねぇか」
ダンジョンに入ってから棄権するまで、京弥は何度トラップを作動させたかわからない。何という災難だと、京弥は嘆いた。
「へぇ~?そんなふうに思ってたの?せっかく力を見せるチャンスをあげたのに」
「お前の下手なムーブメントのせいで、トラップの無間地獄だったぜ?ポンポンの野郎は作戦に全然従わねぇで暴走しまくるし。あいつあのままじゃ、味方まで殺すぜ?」
どんなに文句を言われても、アニターは笑みを絶やさない。
「にしし、それは同感だよ」
アランはギブアップした後輩の救出に当たっていた。彼らのような口喧嘩も何度も聞かされており、やれやれと苦笑した。
ルビスがアランを見た。
「Mr.ハンゲイト。私を案内してくれ」
真剣な表情のルビスに、アランも少し気を張った。
「今度は先生ですか。さて、どこへ行かれますか?」
その頃ジェニファーは魔竜ベルティアートを相手取っていたが、攻撃はことごとく弱点から外れていた。
その間にのぞみたちはゲートの扉まで辿り着き、半壊した回廊の屋根と柱の下に身を隠す。ベルティアートと戦うジェニファーの姿を盾に映し、のぞみたちは息をひそめる。
「あの女、化石の暴君相手に、こんなに耐えられる体力があるのか」
クラークは少しジェニファーを見直し、ヌティオスも興奮している。
「ダミーとはいえ、伝説の魔獣をこんなに戦えるなんて、凄いぞ!」
のぞみは柱の後ろに隠れながら、30メートルほど先の石壁の裂け目を眺めた。そしてその裂け目の奥に、初音がたった一人で魔獣の群れに囲まれているのが見えた。
(舞鶴さん!どうして一人で戦っているの?!)
初音のことは心配だが、ボス魔獣からも目が離せない。攻撃を避けるだけで手一杯のジェニファーは、なかなか攻撃のタイミングを見つけられなかった。その様子を見て、いてもたってもいられなかったのか、藍が叫ぶ。
「早く応援しないと!ツィキーさんが危ないです!」
「ならば、広範囲の破壊技でもやってみるか!」
そう言うとヌティオスは下の二本の手を胸の前に合わせ、黄土色の光弾を作る。数秒後には直径1メートルにも達する源気の塊ができた。
「食らえ!豻王咆哮弾!」
ヌティオスは振り向きざまにそれを投げ出す。光の玉は魔竜ベルティアートに直撃し、大爆発が起こった。被弾したドラゴンは衝撃波に呑まれ、黒煙が上がる。クラークが嬉々とした声を上げた。
「やったか!?」
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