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ハーフだけではない。
種族を越えて子を成した時、 その母親は区別なく死別するのだ。
それは、 リアルドとジーヴスの体の作りによるものである。
2種の体は根本的に作りが違う、 遺伝子が違うのだ。
そんな2種の子を宿した母体は、 持ちえない相手の遺伝子に耐えられず一気に衰弱する。
そして子を産んでから1年、 長くて2年で命が尽きるのだ。
リカルドも、 ジーヴスも関係なく。
そして、 ベルライナのようなハーフが生まれる。
ベルライナの様な子が母体となり子を宿した時、 純粋なリアルドとジーヴスが子を宿した時とはまた違った現象が起きる。
それは
「…………私が子を成せば純粋なリアルドかジーヴスが生まれます。ジーヴスであれば、 後のあなたに残すことが出来ますが、 よろしいのですか?」
「……そんな事、 俺は願ってもいないよ」
どちらの遺伝子も持つハーフが母体で子を宿すと、 相手の種族の子供が純粋種として生まれる。
つまり、 ハーフまでは居るがクォーターは存在しないのだ。
ハーフから生まれるのはリアルドかジーヴスだけ。
そして主従につくジーヴスが女性の場合、 産んだ子を後のサクリファイスとして仕えさせることが可能。
短い命の中で、 ベルライナが唯一大切な主君に残せるもの。
しかし、 カーマインは将来のサクリファイスの為にベルライナの命を削って欲しくないのだ。
出来るならカーマインの命が尽きるまで、 生涯サクリファイスはベルライナとしか結びたくないとすら思っている。
もちろん、 そんなことは有り得ないのだが。
「…………どうしてベルはハーフなんだろうね」
「ご主人様……」
「ふふ…そんな事を言っも仕方のない事だよね」
カーマインはベルライナの細い体を優しく抱きしめた。
そしてソッと口を開く。
「ベル……ベルライナ……今だけでいいから抱きしめてくれるかい」
「………はい、 カーマイン様」
2人はお互いを大切に想いあっていた。
それは主従でも恋愛でもない、 人として尊敬し大切にする相手だと、 カーマインは15の歳の時に感じ、 ベルライナは己を大切に扱ってくれる主人に心からの信頼をよせた。
これは世間で言うサクリファイスと形が変わっているのだろう。
しかし、 カーマインとベルライナはそれでいいと思っている。
何よりも大切にする人を見失わなければ、 それだけで短い人生を豊かに過ごせる。
人と同じでなくていい。
だって、 全てが同じではない。
リアルドとジーヴスも1個体として考えて悩み生きるのだから。
そこから選び取り、 学び、 満足のいく人生を過ごせるジーヴスは少ないだろう。
どうやってその生活を手に入れるのかジーヴスの努力では難しい
心から慕う人に出会い、 生涯を共にできる喜びを受けれるジーヴスは少ないのだから。
だからこそ、 その奇跡のような確率で出逢えた理想のリアルドとの出会いに感謝してベルライナはこの生涯を大切に生きる。
自分自身の為に、 なによりベルライナという個体を見て尊重してくれる主人、 カーマインの為に。
「ご主人様が私を大切にして下さるのと同じように、 私もあなたを守ってみせます。私はサクリファイス、 あなたのジーヴスです。短い命が尽きるその時まで、 あなたを守り続けてみせます。」
「………………うん、 ありがとう」
細く儚い、 頼りなく見えるベルライナが、 何よりも安心する存在に変わる。
カーマインは少し力を入れて抱きしめると、 優しく頭を撫でられる感覚がした。
「……ベル、 好きだよ」
「はい、 私はお慕い申し上げています」
「………うん」
僕のジーヴスが君でよかった。
それは、 あの15の歳にベルライナに出会った時から変わらない気持ちであった。