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ベルライナがそれを見つけてから1週間が過ぎた。
カーマインに言わなくてはいけない、 しかしいざ言うとなると勇気が出ず中々言えなかったベルライナ。
何かを言いたそうにカーマインを見つめる為、 カーマインも何かを言いたいのだと気づく。
「ベル、 本当にどうしたの?」
「……いえ」
言い淀むベルライナをカーマインは訝しげに見る。
そして恐る恐る口にした
「……まさか、 好きな人が出来た……とか?」
「違います!」
すぐに否定するベルライナに、 じゃあどうしたのさ?と聞く。
「…………カーマイン様すみません」
「ん?」
ベルライナは無言でブラウスのボタンに手をかけた。
「え?ちょっとベル………っ!!」
最初は急にブラウスをはだけさせるベルライナに驚くが、 第3ボタンまで外して襟を開いたベルライナにカーマインは息を飲んだ。
正確に言えば、 ベルライナの鎖骨の中心に浮かぶものを見て、 だ。
「…………まさか」
「…………蕾が浮かびました。」
それは小さな小さな花の蕾。
それが鎖骨の中央にアザのように浮かび上がっている。
カーマインは一気な青白い表情に変り、 ベルライナを強く抱きしめた。
ベルライナは俯き、 そっと背中に手をまわす。
「…………いやだ」
「カーマイン様…」
頭上から聞こえるカーマインの拒否の声と滴る涙。
それをベルライナは黙って受け止めた。
ジーヴスの鎖骨の中心に蕾が浮かぶ。
それは死期が近付いている証拠だった。
なぜ蕾が浮かぶのか、 それは未だに解明されていないが、 ジーヴスに蕾が咲くと丁度1年後にその時を迎えるのだ。1年掛けて蕾は少しずつ咲き、 満開になったらジーヴスの命の火が消える。
だから、 蕾が出来たらすぐに主人に伝えることをジーヴスは義務付けられている。
次のジーヴスを探す為の期間になるのだ。
ベルライナに蕾が咲いた。
つまり、 死期が近いと言うこと。
それをカーマインは理解して嫌だと何度も呟いた。
通常、 ジーヴスは30年から35年を生きる。
長くて38年生き抜いたジーヴスも居るが平均して33年くらいだ。
まだベルライナは歳若い、 23歳だ。
普通ならまだまだ生きていける。
しかし、 リアルドであるカーマインとの子を身ごもりその命を縮めたベルライナ。
漠然とだが5年位は生きれるのではと、 そう考えていた。
リアルドの血が半分流れているから、 リアルドとの間の子供を妊娠しても大丈夫なのではないか……と。
しかし、 予想以上に早い蕾の出現にベルライナ自身とても戸惑ったのだ。
まさか、 早すぎます………と。
しかし、 1度浮かび上がった蕾は消えることはない。
ベルライナは1年後に消えるのだ。
体は消滅し、 綺麗に咲く花を一輪残して。
ベルライナは泣きだし自分に縋り付く主人を見つめ、 お昼寝をしている我が子を見た。
「こんなにも早くに、 蕾が現れるとは思いませんでした……」
「……ベル……俺は嫌だよ……ベルがいない人生なんてもう、 考えられないのに」
「……ベルも、 ずっと3人で暮らしていきたいです」
それは、 叶わない夢だった。
そんなただ一緒に居たいという事すら、 ベルライナには叶えられない。
「………本当に、 神様はいじわるです。」
カーマインの胸に顔を埋めて強く抱きしめると、 カーマインもそれに応えるように強く抱きしめ返した。




