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それからクーフェンは30分もしないで帰って行った。
帰ったあと、 結局何しに来たんだ?と2人で首をかしげたが。
「ちょっ…………本気で言ってるのかい!?」
「………やっぱりダメでしょうか」
「ダメって言うか……嬉しいと思うよ、 でも同じくらい悲しむと思う。…………ちゃんと相談した方がいいよ、 ベルちゃん1人で決めていい事じゃないんだから……ね?」
「………はい」
スタンピードがあり、 ベルライナの周囲は目まぐるしく変わった。
それにより、 ベルライナの考えも変わってきた。
あることを強く望み迷っていたのだが、 きアイリスが来たことによりその望みは強くなった。
クーフェンに相談をし、 1人で決めるなカーマインと相談して。
そう言ったクーフェンに、 ベルライナは俯きながら頷いた。
「………えーっと、 ベルさん?いったいどうしたのかな?」
「カーマイン様、 ベルは大切な話があります」
「う…ん?大切な話?」
「はい、 ベルとカーマイン様の大切な話です」
真剣な表情でカーマインの顔を見ながら言う。
そんなベルライナなカーマインは困惑していた。
なぜなら
「えー…っと、 ベルさん、 なんでここに座ってるのかな」
「大切なお話だからです」
「…………それを俺の膝に座って言うんだ」
苦笑しながら言うカーマインは椅子に座っていて、 そのカーマインの膝に対面になる様にベルライナが座っている。両手はお膝の上である。
「まあいいか。それで?話ってなんだい?」
嬉しそうに笑ったカーマインが、 ベルライナの腰に腕を回して微笑んだ。
ベルライナは顔を赤くしながらも、 緊張で眉を寄せながらカーマインを見て言った。
「………ベルは、 カーマイン様とのお子を宿したいと思っています」
「………え?」
ベルライナの衝撃な発言にカーマインは思考停止、 優しく微笑んでいた顔がみるみるうちに困惑に変わる。
「カーマイン様、 ベルは…」
「まって、 まってベル」
「はい」
カーマインはベルライナの両腕を掴み話し続けるベルライナを遮った。
「………ベル、 何言ってるかわかってる?俺と子供をっていうのは凄く嬉しいけどね、 でもそれはベルの…」
「はい、 ベルの命が短くなります。」
「わかっているならどうして……」
「………わかっています。ベルはカーマイン様を残して先に逝ってしまいます。それは覆しようのない事実です。……そんなベルが残せる唯一の宝です。ベルが形として残せる唯一の」
「…………ベル」
「お願いします。ベルの夢を叶えさせてください。カーマイン様とベルの子供を2人で抱きしめさせて下さい」
ベルライナはカーマインの頬を手で包み込み微笑んだ。
そんなベルライナの手を握りしめて泣きそうな顔をして言った。
「………………ベルがそう言ってくれるのは凄く嬉しいよ。ベルとの子供も出来るなら欲しい……でもさ…でも、俺はベルと一緒にいたいんだよ」
「………はい、 ベルはずっと一緒にいます。ずっとです」
「………ずっと?」
「はい、 ベルはカーマイン様のお傍を離れても心はずっと一緒です」
ベルライナの意思は固い。
微笑みカーマインが頷くのを待っている。
カーマインは困ったように微笑み優しく抱きしめたが、 次第に力が篭ってくる。
「…………ベルの願いを叶えよう。ベルをお母さんにしてあげるよ」
「はい…ベルがカーマイン様をお父様にしてさしあげますね」
「………………できる限り…できる限り長く…生きて」
「………はい」
カーマインにはそれしか言えなかった。
愛しいベルライナが望んだのは、 カーマインにとってもいつか欲しいと望んでいた子供。
口には出せなかった、 ベルライナとの子供が欲しいと願っていたのだから。
それをベルライナが望んだ。
嬉しかった、 でもベルライナの命を削る行為にカーマインは心の底から喜べなかった。
それでも、 2人の宝が生まれる
その事は言葉に出来ないくらいに幸福な事だ。
2人は顔を上げて見つめあった。
ベルライナは優しく笑い、 カーマインはまだ満面の笑みは浮かべられない。
それでも2人は決めた。
見つめあってからお互いの額を合わせて目を瞑る
「「…………天帝に誓う。我らが望みし子宝を与えたまえ」」
ゆっくりと2人の唇が重なり合う。
そのまま首に手を回したベルライナに合わせるようにカーマインも腰に手を回して抱きしめあった。
幸せな時間だった。
どれくらい触れ合っていたのか、 数十分か、 もしくは数分だったのかもしれない。
リップ音と共に離れた唇。
ゆっくりと目を開けて見つめあった。
「……恥ずかしいです」
「ふっ……ベルやめてよ」
「……え?」
「可愛いこと言うのやめてよね」
ふふっ……と笑って頬にキスをしたカーマインにベルライナは真っ赤になり俯いた。




