表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクリファイス~主従の契約  作者: くみたろう
第3章 スタンピードと気持ちの連鎖
24/35

6

カーマインのは、ほぼ一日を街で過ごしていた。

スタンピードが来ている今、 リアルド達に出来る事は何も無い。

それはカーマインも同じだった。

幼いジーヴスや妊婦以外居ない今、 自分の事は自分でしないといけない。

ほとんどのリアルドは恐怖と理不尽さにイライラしていたが、 それでもジーヴスを心配しているリアルド達は街の出入口に一日何度も足を向けた。

いつ帰ってくるのかと、 期待を胸に抱いて。


「……………カーマイン」


「クーフェン?大丈夫?だいぶ痩せたね」


「ご飯が喉を通らないんだよ。そう言うカーマインだって、 元々痩せてるのに今じゃ木の枝じゃないか」


「せめて丸太にしてよ」


「贅沢だな、君は!」


2人は並んで街の外を見た。

まだ地震は続いている、 スタンピードの数が増えているんだろうか。

ジーヴスが出発してから既に1週間が経過していた。

つまり、 もう6日以上戦っているのだベルライナ達は。


「………毎日夢を見るんだ。サテラが血まみれで倒れている夢を。駆け寄って抱き起こすと、 ジーヴスだから……こんな目にあうのか?ご主人って…………………言うんだよ……面倒な主人で、 迷惑ばかり掛けてる私だけど……それでも困った人だなって…笑いながらいつも一緒に…いた…のに」


スカートを握る手がプルプルと震える。

頭を下げて言う声は振り絞るようだ。


「っ……ねえカーマイン!サテラは、ベルちゃんは!帰ってくるよな!?ちゃんと私達の元に帰ってくるよな!?……………ねえ!!」


とめどなく流れる涙をそのままにカーマインに縋り服をにぎりしめるクーフェン。

地面を睨みつけるように見ていたクーフェンの頭に手が乗った。


「………信じるんだよクーフェン。帰ってくるって俺達が疑っちゃダメだよ。」


「……………………うん」



疑っちゃダメだ。

疑ったらベルライナは、 もう帰ってきてくれないかもしれない。

そんな不安を押し殺すように、 帰ってくると何度も何度も口にした。

それを聞いていた他のリアルド達も唇を噛み締め泣きながら遠くを睨みつける。


早く帰っておいで、 俺の愛しいベルライナ。

早く、 俺の胸に帰っておいで。














あれから4日が経った。

地震は既に止まっていて街の復興が少しずつ進んでいる。

そんな昼を過ぎたときだった。

街の入口がざわついている。


丁度街に来たカーマインは、 クーフェンとばったり会いいつもの日課になっている街の出入口に向かうと騒ぐ声が聞こえるのだ。

2人は顔を見合わせた後、 すぐに走り出した。

人混みに2人で突っ込み、 身長の低いクーフェンが埋まらないように手を引きながら何とか顔を出すと


「ジーヴスが帰ってきた!!」


その声が聞こえた。

自分のサクリファイスを見つけたリアルド達は駆け寄り抱きしめる人や、 倒したのか!!と詰め寄る人、 遅いんだよ!と怒鳴る人がいる。


そんな中、 カーマインは目を凝らしベルライナを探す。

隣には泣きながらサテライトを探すクーフェンもいる。


「………………ベル!!ベル!!」


後ろからフラフラと顔を出したボロボロのベルライナ。

それを目にしたカーマインは駆け寄りベルライナを抱きしめる。

気付かなかったベルライナは体を硬直させ驚いたが、 すぐにカーマインだと気付き力を抜く。

そして溢れ出た感情をそのままにカーマインに腕を回した。


「ベル!ベル!!良かった、 帰ってきてくれて良かったっ………!!」


「……カーマイン………さまぁ……………」


「会いたかった!」


「ベルも…………ベルも………会いたかったです………!」


体が軋むのではないかと言うくらいに力を入れるカーマインの胸に顔を埋めて泣くベルライナは、 カーマインに包まれてやっと帰ってきたと実感する。


「……………おかえり」


「っ!ただいま、 かえりました!」


顔を見合わせ笑い合う2人。

やっと、 2人の不安は解消され穏やかに笑いあった。






























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ