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ベルは…………ベルには夢があります。
それは、 ご主人様が居ないと叶わない夢です。
ベルの大切なご主人様が奥様を迎えてお子を宿した時、 ベルはご主人様、 奥様とお子様にお仕えしたいと思うのです。
ベルに優しいご主人様、 きっとあなたが選ぶ奥様はとても良い方だと思うのです。
ベルにして下さるように育み愛されると。
ベルはちょっとだけ今までの生活が無くなることに本当にちょっとだけ残念に思うと思いますが、 きっとそれよりも幸せな毎日が来ると
ベルはそう思うのです。
3人にお仕えして、 ベルの短い人生を終える。
残念なのは、 大切な大好きなご主人様にベルは何も残せないと言うこと。
言葉通り、 ベル達ジーヴスは死んだ後砂になります。
むしろ、 お掃除を増やしてしまいますね。
ベルは毎日のお仕事を一生懸命して覚えて頂く事しか出来ません。
でも、 この数日間ベル達の生活が目まぐるしく変わりました。
ベルは、 あんなに泣いたご主人様を初めて見ました。
ベルの為に泣かせてしまってごめんなさい。
でも、 ダメだけれどもベルは嬉しく思ってしまいました。
ベルは、 ご主人様に愛されていると錯覚してしまったのです。
なんて不敬なのでしょう。
でも、 そう思うくらいにあの数日はベルにとって特別でした。
いけない夢を抱いてしまうくらいに。
神様はいじわるです。
変わらない平凡な日々を過ごしたいだけなのです。
ご主人様がいてベルがいる、 そんな当たり前な生活をしたいだけなのです。
神様はいじわるです。
ベルは……………ベルライナは死にたくありません、 カーマイン様の元に戻りたいだけなのです。
カーマイン様をお慕いしているだけなのです。
「目を覚まして!!」
何か水のような物が体に掛けられるのがわかった。
叫び声と頬に来る衝撃にベルライナは目を覚ました。
叩かれたのだ。
ベルライナはボーッと叩いた相手の顔を見ると、 相手は安心したように笑った。
「よかった、 怪我治したから行って!!」
それだけ言った女性は走り去っていく。
真っ白な翼を風でふわふわと揺らしながら。
「………え?リアルド様………?」
上半身を起こして見たが、 既に彼女は人混みに紛れた後だった。
なぜここにリアルド様が……?と頭が回らない状態で考えたがベルにはわからない。
「………あ、 行かなくては」
ハッ!と意識を覚醒させて立ち上がる。
痛みはない、 防具が割れてしまっているが体に問題は無さそうだ。
武器も一緒に置かれている。
1番後方に運ばれていたベルライナは立ち上がり駆け出す。
大切なご主人様の元へ帰る為に。




