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「…………………これがスタンピード」
かなり遠くではあるが煙を巻き上げ押し寄せる大群が見える。
地平線を埋め尽くす黒いモンスター達はひしめき合い進軍しているのを遠く離れたベルライナにもわかった。
その先頭で何かがぶつかりあっている。
ベルライナ達よりも前にある街や村たちのジーヴス達が戦っているのだ。
どうやら計算はずれ、 ベルライナ達は戦闘に間に合わなかったようだ。
「………行くぞ！！」
リーダーが声を上げ一斉に走り出す。
そんな集団の後方にいるベルライナは苦虫を噛み潰したよう顔をした。
「…数が違いすぎる」
「こっちの数の10倍はいるんじゃないかな」
そう、 スタンピードで現れたモンスターの数は尋常では無い。
今戦っているジーヴス達の10倍はいるのではなかろうか。
ベルライナ達が合流したとして、 その差は縮まるものでは無い。
だが、 ジーヴスには戦う術がある。
生涯たったひとつ、 覚えることの出来る魔法。
15歳の時に自分の適正にあった魔法が発現するのだ。
それは魔法攻撃であったり、 守護魔法であったりと様々だが必ずジーヴスは使えるようになる。
主人を守る為に具現化した力は様々な場面でジーヴスを助けてくれた。
だから、 今回も信じる。
静かに口に出したその言葉はそばにいたジーヴスたちにも聞こえていた。
「………ベルは必ず勝ってカーマイン様の元へ戻ります。絶対です！」
目前に迫ったスタンピードの群れに、 リーダーを先頭に突っ込んで行った。
「我らジーヴスよ！！誇り高き魂は決して屈したりしない！！行くぞ！！」
鬨の声を上げて突っ走るリーダーに、 ベルライナとサテライトも頷きあい走り出した。
ここからは命をかけた戦い、 ベルライナはカーマインの元に帰るために駆け出したのだった。
「遅くなった！」
「え…援軍だ！援軍がきたぞ！！」
リーダーの声に反応した後方にいるジーヴスが声を張り上げた。
喧騒と叫びや悲鳴、 モンスターの叫びに掻き消えないように。
何人かが振り返ると同時に傷が癒されていく。
援軍で来たジーヴス達の回復魔法が一斉に発動したのだ。
「た……すかっ…た…」
行きも絶え絶えに礼を言う戦っていたジーヴス達。
もう何人もの命が散ったのだろう、 そこここに倒れているジーヴス達の傷が痛そうだ。
顔を歪めるが目はそらさない。
もしかしたら、 数分後には自分もそうなっているかもしれないんだ。
ベルライナは倒れふす命の鼓動を止めた者達を見つめ、 少しだけ目を伏せる。
しかし、 瞬きをした瞬間には強い光を宿した瞳は真っ直ぐ前を見すえていた。
前方で、 行くぞ！と剣を高らかに掲げて号令を出すリーダー。
その声にヤル気を出し従うもの、 イヤイヤ動き出すものとバラバラだが向かう方向は一緒である。
ベルライナ、 そしてサテライトもそれにつづいたのだった。
