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サクリファイス~主従の契約  作者: くみたろう
第3章 スタンピードと気持ちの連鎖
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2

リアルドがジーヴスを大切にしているのは、 カーマインとクーフェンだけではなかった。

今まであまり外では見せない自宅でのお互いの距離。

最後かもしれない、 もう会えないかもしれない。

その思いが爆発している。

手を繋ぎあっている人や、 お互い見つめ合い泣き笑いする人。

様々だが、 その様子にカーマインは口端を上げた。



「……………リアルドも捨てたもんじゃないな」


「さあ、 時間だ。出発するぞ」


ジーヴスのリーダーに抜擢された恰幅の良い男性が声を上げた。

既に30歳を間近なのかその風貌は貫禄すらあった。


「………ご主人様」


「……うん、 いってらっしゃいベル。くれぐれも無理はしないで」


「はい、 ベルは必ずご主人様の元へ帰ります」


お互い笑顔を浮かべて言った。

約束通りに、 ベルライナが心配すること無く旅立てるように。

すぐ近くではクーフェンがサテライトに抱きついて、 いってらっしゃいと涙ながらに言っていた。


「……それではまた……………カーマイン様」


「!……うん、 気を付けて」


ザッと砂を踏み締める音を鳴らして歩き出したベルライナに、 泣くのを必死に堪えていた。

せめて、 せめてベルライナが見えなくなるまで……………




「………俺も……クーフェンのように泣きわめいて行くなと、 言いたかったよ……」


ツー………と瞳から涙が流れ、 目が潤み良く見えない。


「………泣くな、 ちゃんと帰ってくるんだから。泣くな……………ベルが……霞むじゃないか…………くそっ」



乱暴に袖で目を擦り顔を上げた後にはベルライナの姿は無い。

クーフェンの泣き声が響く中、 カーマインは血が滴る位に手を握りしめていた。













「…………スタンピード……俺達どうなるんだ」


「いやだ、 死にたくないよ……」


「なんで俺達なんだ………」


ジーヴス達は一様に雰囲気が暗い。

それもそうだろう、 死ぬ確率が高い場所へと向かうのだから。

だが、 そんなジーヴス達をちらりと見たリーダーが怒鳴り声を上げた。


「何しょぼくれている!そんな覇気のない奴は殺してくださいと言ってるようなものだ!」


彼は武道大会の常連で優勝候補に毎回名前が上がる実力者だ。

その周りには同じくチームの屈強な男性や、 杖を持つ女性が立つ。


「死にたくなかったら気合いを入れろ!感情を振るいたたせろ!!」


叱咤激励するリーダーに、 隣を歩くサテライトがため息。

ん?と首をかしげて見ると、 サテライトはリーダーを顎で示した。


「見てみろよ、 あれで着いてくやついると思うか?」


リアルドの長は、 強さをリーダーの素質と見て決めたが、 彼は傲慢で自分勝手だ。

他のジーヴスを下に見て指示し自分は動かない。

その証拠に細く戦闘力の無さそうな男性に大きな荷物を持たせ、 よたよたと歩く姿を見て笑っていた。


「スタンピードか、 そんなもん俺にとっちゃ肩慣らし程度なもんだろ」


彼は勘違いをしていた。

出てくる敵が森の洞窟から生まれる通常種だと思い込んでいた。

蟻くらいだろ?厄介なのは


はっはっは!と笑うリーダーにベルライナは眉を寄せて見ている。

そんなわけない、 と。


「そんな簡単なら先人達が壊滅に追い込まれる事なんてないだろ」


「ベルもそう思います」


ただのモンスターでは無いことくらい考えなくても分かるだろう。

なのに、 なぜそう感じれるのかベルライナには不思議だった。














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