2
リアルドがジーヴスを大切にしているのは、 カーマインとクーフェンだけではなかった。
今まであまり外では見せない自宅でのお互いの距離。
最後かもしれない、 もう会えないかもしれない。
その思いが爆発している。
手を繋ぎあっている人や、 お互い見つめ合い泣き笑いする人。
様々だが、 その様子にカーマインは口端を上げた。
「……………リアルドも捨てたもんじゃないな」
「さあ、 時間だ。出発するぞ」
ジーヴスのリーダーに抜擢された恰幅の良い男性が声を上げた。
既に30歳を間近なのかその風貌は貫禄すらあった。
「………ご主人様」
「……うん、 いってらっしゃいベル。くれぐれも無理はしないで」
「はい、 ベルは必ずご主人様の元へ帰ります」
お互い笑顔を浮かべて言った。
約束通りに、 ベルライナが心配すること無く旅立てるように。
すぐ近くではクーフェンがサテライトに抱きついて、 いってらっしゃいと涙ながらに言っていた。
「……それではまた……………カーマイン様」
「!……うん、 気を付けて」
ザッと砂を踏み締める音を鳴らして歩き出したベルライナに、 泣くのを必死に堪えていた。
せめて、 せめてベルライナが見えなくなるまで……………
「………俺も……クーフェンのように泣きわめいて行くなと、 言いたかったよ……」
ツー………と瞳から涙が流れ、 目が潤み良く見えない。
「………泣くな、 ちゃんと帰ってくるんだから。泣くな……………ベルが……霞むじゃないか…………くそっ」
乱暴に袖で目を擦り顔を上げた後にはベルライナの姿は無い。
クーフェンの泣き声が響く中、 カーマインは血が滴る位に手を握りしめていた。
「…………スタンピード……俺達どうなるんだ」
「いやだ、 死にたくないよ……」
「なんで俺達なんだ………」
ジーヴス達は一様に雰囲気が暗い。
それもそうだろう、 死ぬ確率が高い場所へと向かうのだから。
だが、 そんなジーヴス達をちらりと見たリーダーが怒鳴り声を上げた。
「何しょぼくれている!そんな覇気のない奴は殺してくださいと言ってるようなものだ!」
彼は武道大会の常連で優勝候補に毎回名前が上がる実力者だ。
その周りには同じくチームの屈強な男性や、 杖を持つ女性が立つ。
「死にたくなかったら気合いを入れろ!感情を振るいたたせろ!!」
叱咤激励するリーダーに、 隣を歩くサテライトがため息。
ん?と首をかしげて見ると、 サテライトはリーダーを顎で示した。
「見てみろよ、 あれで着いてくやついると思うか?」
リアルドの長は、 強さをリーダーの素質と見て決めたが、 彼は傲慢で自分勝手だ。
他のジーヴスを下に見て指示し自分は動かない。
その証拠に細く戦闘力の無さそうな男性に大きな荷物を持たせ、 よたよたと歩く姿を見て笑っていた。
「スタンピードか、 そんなもん俺にとっちゃ肩慣らし程度なもんだろ」
彼は勘違いをしていた。
出てくる敵が森の洞窟から生まれる通常種だと思い込んでいた。
蟻くらいだろ?厄介なのは
はっはっは!と笑うリーダーにベルライナは眉を寄せて見ている。
そんなわけない、 と。
「そんな簡単なら先人達が壊滅に追い込まれる事なんてないだろ」
「ベルもそう思います」
ただのモンスターでは無いことくらい考えなくても分かるだろう。
なのに、 なぜそう感じれるのかベルライナには不思議だった。




