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サクリファイス~主従の契約  作者: くみたろう
第3章 スタンピードと気持ちの連鎖
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1



「……………………」


「ご主人様」


「……………ベル」


スタンピード討伐の為に出発する。

広場に集まったジーヴス達は顔を引き攣らせる、 強ばらせる者や、 震え泣くジーヴスもいる。

しかし、 ほとんどのジーヴスは腹を括り前を真っ直ぐに見ていた。

戦闘参加者は18歳以上のジーヴス。

出発の時間を黙って待っていた。




そして、カーマインとベルライナは少し離れた場所で向かい立っていた。


「ベル、 必ず生きて帰ってくるんだ」


「はい、 ベルは必ず生きて帰ります。」


「………ああ」


「ご主人様」


「なに?」


「ベルが安心して、戦えるようにご主人様は笑って待っていてくださいね」


ベルライナの言葉に、 カーマインはまた泣きそうな顔をする。


「……ベルは難しい願いばかり言うね……約束、 俺は笑って待ってるよ。だから、 ベルライナ、 君も笑って帰って来てくれるね?」


「……………はい」


抱きしめ額を合わせて微笑み合う。

きっと帰ってくる、 ここで終わりなんかじゃない。

全てが終わったら、 元通り平穏な暮らしに戻るんだ。

2人は気持ちをひとつにする。

出発の時間はもうすぐだ。





「いーやーだぁぁ!!君を行かせたりしないからなぁぁぁ!!」


「ちょっ…ご主人、 俺だけ行かないとか無理でしょ」


「無理なんかじゃない!無理なんかじゃなーーい!!君がいなかったら誰が僕を守るっていうのさぁ!!ねぇ、 行かないでくれよー!」


長身の白髪の青年の腰にしがみつく可愛い女性。

見た目は幼いが、 サクリファイスをしてジーヴスを連れている、 成人しているようだ。

ジーヴスは主人である女性を引きずりながらジーヴスが集まる場所へと向かっている。


「ちょっと……離してよ、 ご主人をジーヴスの群れに連れて行きたくないんだから」


「嫌だね!!離したら行っちゃうじゃないか!!ぜぇーーったい離したりしない!別にサテラ1人居なくたって大丈夫だよ、 バレたりしないってぇ」


「こんだけ目立っておいて良くそんな事を言えるな、 ご主人!」


女性の顔を片手で押さえつけ、 離そうと押すが、女性は腕どころか足も絡みつかせる。


「うわっ!蛇かあんたは!」


「離してやるもんかぁぁぁ、 君は僕と一緒にいるんだよぉぉぉ……」



既にいるリアルドとジーヴスの視線を集める2人はまだもみ合っていた。

行かせたくないリアルドに、 行かないといけないジーヴス。

ジーヴスは主人であるリアルドに何度も待ってろと言ったが、 なかなか聞き入れない。


「サテラを連れていかせたりぃぃ………いったぁ!!」


「まったく、 何をしてるのさ」


「カーマイン!!ベルちゃんも!」


ジーヴスにしがみつくリアルドの頭をグーで軽く殴ったカーマイン。

女性は驚きジーヴスを離して振り向いた。


「カーマイン!これが黙っていられるかい!なんでうちのサテラが行かないといけないのさ、 あんなモンスターの群れに!」


「それは俺だって同感だけどさ。 好きでベルを戦いに出したくないよ」


「そうだろ?君ならわかってくれるだろ!?」


「わかるけど、 しなきゃ皆死ぬ」


「………それは」


「クーフェンだってわかってるだろ?」


「わかるけど、 だけど!サテラと離れたくないんだもん!……そうだ、 僕も行くよ!それなら……」


「ご主人!」


必死に話すクーフェンに、 クーフェンのジーヴスが声を荒らげた。

今までにない真剣な表情、 口調にクーフェンはビクリと口を閉ざす。


「いい子だから待っててくれよ…あんたがいる場所を守るために行くんだから、 あんたが来たら意味がないだろ」


「………君がいないじゃないか…」


「いるよ、 あんたの隣に。いつも居ただろ?」


「……………………」


「あんたがいる場所を守るんだ。……あんたを守りたいんだよ」


俯きスカートを握りしめるクーフェンに、 ジーヴスはやっと優しい顔つきに戻った。


「クーフェン様」


「なに?ベルちゃん」


「ベルも行きます。サテライトと一緒にです。お互い補い戦います、 そうしたらより安全になります」


「あん……ぜん」


顔を真っ赤にして泣くクーフェンはベルライナを見た。

任せてください、 2人で無事に帰りますから。

そう言うベルライナに、 クーフェンはサテライトを見てから頷いた。


「……………サテライト…僕は君を待ってる、 ずっとずっと。だから、 ベルちゃんと帰ってきて。絶対だからね!」


腕輪と首輪がひかる。


サテライトの服を掴みボタボタと涙を流すクーフェンにサテライトは、 はんっ!と鼻で笑った。


「ご主人に言われなくたって、 無事に帰ってくるよ。 」


「はっ鼻で笑ったな!!可愛くないぞサテラ!」


「大の男捕まえて可愛いはないでしょ」


「なにおーー!!」


キー!と怒りながらサテライトの胸をポカポカ殴るクーフェンに、 カーマインはベルライナと顔を合わせて笑った。


まったく、 素直じゃないね。


でも、 これでクーフェン様が落ち着かれました


そう目で会話をしながら。



















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