第01話 ハーレムバカ!
ハーレムってさ、みんな好きだよね?
「「「おはよう、お兄ちゃん!」」」
目が覚めると水着姿の少女三人が、俺が寝ているベッドを囲んで座っている。
その三人の少女は俺の妹である。キラキラしている瞳やサラサラしている髪、端正な顔立ちで超美少女。
年齢は下から、13、14、15、とそんなには変わらない。
妹達はツンデレ、ドジっ子、ちょいビッチだったりするが、かなりのブラコンである。
妹達が俺にしてくることを楽しみ、生活している。妹達は朝になると決まって俺を起こしに来る。
自分で起きれるのに――そう思っているが、可愛いので何も言わない。
「ボーっとしてないで早く起きてお兄ちゃん! 今日は水着姿で起こしに来てるんだから!」
「そうです! ちょ、ちょっとは恥ずかしいけど、お兄ぃに見られるくらいなんとも……」
「水着だしー、早く起きて、可愛がってよぉー 」
三人が可愛い顔と輝きを増している瞳で見つめられると、眠気なんか一瞬で吹き飛ぶ。
いつもこんな感じで目を覚ますのだが、今日はいつもと少し違うようだ。
どんな違いかというと妹達が口にしていた、水着を着ていること。
昨日までは普通の服で俺を起こしに来ていたが、それだと少し目覚めが悪かったので水着を着ているのだ。(たぶん)
「毎日恒例! のアレしちゃお♥」
そういうと妹の一人が俺に口を近づけてくる。あ、いつものアレかと思い俺も顔を動かさない。
あと、数ミリで唇と唇が重なる、――チュ。
優しく唇が重なる。それに続くように妹2人もチュ。
妹3人は顔が赤くなっている。
毎日恒例のアレとはキスのことである。妹達は兄にキスをするのは、常識だと思い込んでいるし、俺は聖なる儀式と思い込んでいるので誰も疑問は抱かない。
「うーん、まだお腹空かないから、まだアレしちゃおっか」
「「賛成!」」
1番下の妹が提案すると、2人もそれに賛成した。
「じゃ、今日は三人でしよう」
三人は目を見開くと、すぐに顔を赤くさせ、着ている水着を脱ぎ捨てた……
――以下、妹達とその兄とによる、ただただ、おかしいとしか言いようがない家庭の日常が描かれる。
「これは、ナニ……?」
原稿を読んでいた、日菜が首をかしげて尋ねる。
「え、これの素晴らしさが理解できないのか?」
少し混乱している人もいると思うので説明しておこう。先ほどの妹と兄の日常は、底辺WEB作家によって作られたもの。
抑えきれない欲望を、この小説にぶつけたバカの名前は……原野守。
ネットでもこの名前で活動している。もちろんペンネームではなくて本名。
守は高校一年生で、夏の暑い日差しが差し込む中、小説を書き続けている。
先ほど、新作が頭に浮かんできた! と急いで執筆に取り掛かり、日菜に原稿を見てもらっている最中だったのだ。
ちなみに日菜は守の妹で中学二年生。日菜は気まぐれに、原稿を読むことがあるのだが、守が作る小説のほとんどはハーレム系なので大抵は理解できない。
今の新作だって日菜にとっては、何を言っているのか理解できなかった。
「だって、なんで、こう…妹が兄とキスするの……何も違和感なく!」
「そりゃ、ハーレムの世界だからだ」
日菜は呆れていて半眼で守を見つめる。そして、堂々とハーレムだという守に、二の句が継げない。
「で、どうだ今回の新作は?」
「あんたねぇ…… ハーレムだからってWEBで人気になるわけじゃないよ、しかもこんな欲望の塊みたいな作品は論外」
「欲望の塊とか、い、言うな! ハーレムは男のロマン! それを否定するなど許されるはずがない!」
「ハーレムを否定して何が悪いのよ……」
守はWEBで小説家をやっており、作った作品は多いもののその大半は、人気がなく、ブックマークは数件しかつけられない。
最近は一旦ハーレムから離れると日菜に話していて、異世界転生の作品を書いているはずだったのだが、
「ハーレムがどうだとかは、置いといて、この前の異世界転生の話どうしたの?」
「あ、ああ、あれは先が思い浮かばなくてな、全然投稿してない。つまり、ボツだ」
「まぁ、そんなことだろうとは思ったけど、それでこんな作品を作ったってこと?」
「そんな感じだ。自分がもっとも好きなハーレムに妹を加えたらどうなるのか試していたところなんだ」
守は必死に弁解しているが、日菜にとっては作品が人気ないから新しく書いているという言い訳にしか聞こえなかった。
はぁーとため息をつく。
「守さぁ、あんた小説を書き続けたことある?」
「なんだ急に」
「守の小説、10話くらい書いてすぐにネタ切れじゃん。だから人気ないんじゃないのって話」
「確かにその通りだな……」
そう、守の作品はタイトルと第1話は、いいものを作るが、すぐにネタ切れしてしまい新しい小説に取りかかる、といったことがサイクルになっている。
多少続ければブックマークとポイントはつけられるのではと考えたのだ。
「だが、日菜少しだけ間違っていることがある!」
謎の気迫に押されて日菜は少し動揺する。
「な、なに」
「俺は今まで作った作品はまだ諦めたわけじゃない! ただネタを考えている期間が長いだけだ! ……たぶん」
「さっき異世界転生の話しはボツだ~って自慢げに話してたじゃん。矛盾してるよ」
「す、すまないちょっと、カッとなった」
素直に日菜に謝る。すると日菜は守を見つめて、
「でもさ、私はさっきの作品何言ってるのかわからなかったけど、妹ハーレムってのは面白いかもね、今まで書いたやつで一番いいんじゃない?」
「……あ、うん、どーも」
日菜がまさかのことを口にしたので一瞬動揺して反応速度が遅れる。
「もし書き続けるんだったら私は応援するよ」
「その時はその時でよろしくな」
「うん」
二人は仲良く微笑んだ。
日菜と守は、半年前から、ニ階建ての一軒家で暮らししている。別に親と仲が悪くなったわけではない。
守達の親は放任主義で、守もそろそろ高校生になるし、と言って実家を二人に渡した。
二人は特に反対することもなかったので今の生活が続いている。ちなみに親はというと守達の家から10分ほどのところのマンションで暮らしている。
若干、守と日菜は年が離れているので思春期に入ると何を話していいかわからず必要最低限な会話しかしなかったが、
親が別のところに住み始めたころから、二人の距離は縮まった。変化したのは二人暮らしを始めて1日目の夜から。
夕飯を食べていた時に、守はネットで小説を書いていたことを告白した。
それを聞いた日菜は小説に興味はなかったが、兄が書いたのならといい、守の小説を印刷して読み始めた。
その時の守が書いていたのは、もちろんハーレム。エルフや美少女がたくさん出てくるやつ。
感想を求められるも、初めて見たハーレム文章に恥ずかしがってしまい、「小説というよりラノベじゃん……」としか言いようがなかった日菜であった。
何より日菜が嬉しかったのは兄の守が、秘密を打ち明けてくれたこと。それから一緒に日常を過ごしていき、会話も増え、先ほどのやり取りをするような仲になった。
子供のときも仲が良かったが、どちらの方が仲が良いかと聞かれたら、今だろう。
「じゃ、私自分の部屋に行くね」
「おう」
そういって日菜は守の部屋を後にする。守も一旦小説を書くのを止めて、学校の宿題に取り掛かる。面倒くさいのだが。
――日菜の部屋――
部屋に戻った日菜は、部屋に設置されたベッドに横になりスマホをいじる。だが、先ほどの内容が頭から離れずちょっと顔を赤くする。
「妹ハーレムってまさか、私に興味があるわけじゃ……」
さすがにそれはないかと思いその考えはすぐに脳内から消え去る。日菜に興味があるのならあんな小説を書くはずないのだから。
でも、確かにあの小説は男子には向いていると思う。うまく言い表せないがどことなく興味が持てるそんな気がした。
「私も守の手伝いをするんだから、ラノベ買おっかな」
そういってスマホでネットを開き、妹系おすすめラノベ、と検索するのであった。
丁度その時友達から連絡が来る。メッセージには、
『日菜、今から遊べる~?』
と書かれてあった。時刻はまだ午後1時。やることは多少あったが、今やることではないと思い、出かける準備をして家を出るのであった。
一方。
守は日菜が出かけるのを見送ってまた勉強に取り掛かる。だが――どうしてもやる気がでない。
参考書のページを開くと、そこには数字の呪文が。本当に呪文なわけではなく、ただの計算式。
「数学が苦手な、メインヒロインとか考えて、主人公が教える? なんて展開もいいかもなぁ」
勉強のはずだったのだが、どうしても小説のことばかり考えてしまう。
実は、先ほどの妹ハーレム原稿はまだネットには投稿してない。もう少し構成を考えて投稿する予定。
だから、妹三人の次に重要な立ち位置の女子キャラを考えなければいけない。また、そのキャラがが妹とどう絡むのかも。
宿題のことは忘れよう――そう思いまたパソコンを立ち上げる。
妹ハーレムを考えるのサイコー、そう思いキーボードを叩きまくる守だった。
だが、そんな守や日菜にも人には言えない秘密がある――
令和最初の投稿はこれだ! と決めていました。これからは今連載している作品と、この作品を同時進行でやっていきたいです。これは意外と自分をモデルにしているため、書きやすく楽しくやっております。
感想などをお待ちしています! 令和もよろしくお願いいたします。