天中5話
期間がだいぶ空いたので乱れ気味です。
古くから生きている動物は魔法が使えるらしい。己に流れる魔力を認識し、行使することを長い年月を生きることで覚えるのだそうだ。
更に、知能の高い動物は人の言葉を理解し魔法によって空気を振動させ人語を話しているそうだ。よって人語を話せる動物は並大抵の魔法使いでも勝てない。
――――――――――――――――――――――――
「そういえばヒロシ、やっぱりヒロシは魔法使いだよ。さっきキツネさんと戦ってる時魔力纏ってたよ?」
「嘘だろ!?俺は魔力を纏う方法なんて知らないぞ!」
「その娘の言っていることは事実だ。貴様は魔力を纏い我と戦っていた。」
「マジかよ……。俺には隠れた才能があった。みたいなそんな主人公補正があるのか……。」
絶対持ち腐れる気がするが悪い気はしないな。主人公みたいに巻き込まれることが無ければ。
「しかし妙なのだ。魔力の発生源は間違いなく貴様なのだが、制御が貴様ではなく寧ろ中華鍋が行なっているように見えたのだが……。」
「つまりはどういうことなんだ?」
「中華鍋がヒロシの魔力を使って魔法を行使してるってことだよ。」
ユイが補足してくれた。
これには驚愕した。ならば俺は今までの超人的な身体能力は全て、中華鍋が魔法で俺を強化していてくれたからなのか。
「道具、無機物が魔力を操れる物なのか!?」
「一応普通の人が魔法を使えるように魔道具っていうものを媒介として使うことはあるけど……道具が主体になるなんて聞いたことないよ。」
魔道具なんてそんな便利なものがあるのか。
しかし、中華鍋は魔道具というより呪具みたいだな。
「とりあえずその中華鍋を使うのは控えた方が良いと思うよ。魔力を纏えば魔力の消費は抑えられるけど、身体能力は高等魔法なんだし消費も激しいんだから、それが無意識のうちに使われてるとなると魔力切れを起こしかね無いから。まあもうすぐヒロシの村だしもう使うこともあんまりないかもだけどね。」
「あっそっかぁ……。」
忘れていた。そういう設定にしていたのだった。
「そっかぁってヒロシ自分の村だよ?忘れちゃったの?」
「いや、大丈夫だよ。あまりにも濃い日が続いたからぼんやりしていただけだよ。」
正直ユイとの旅は名残惜しい。こんな衝撃的で刺激的な毎日、ユイに付いて行ったらこんな日々が送れるだろうか。
「そっか、でもヒロシあんまり嬉しそうじゃないよ?どうしたの?」
「ちょっと名残惜しくてな。」
「まあそうだねー。ヒロシと一緒に森に入ってからクマと会ってこのキツネさん達と会って、凄いこと一杯あったもんね。」
「ユイと離れたくないな……。」
「え!?」
ユイが急に赤面した。どうしたのだろう。あ……。
「いや、そういう事じゃなくて!違わないんだけど、語弊があって……。」
「う、うん。分かったよ。」
まだ若干顔が赤いけど納得してくれたようだ。
本音がポロっと漏れるなんて……現実ではないと思っていたんだがな。
「何だ貴様ら夫婦ではないのか?我はてっきりそうなのだと思っていたのだが。」
何を言っているのだろうこの狐は。まあ確かに周りから見たらイチャついた感じはあった気がしなかった訳ではないが。
「ち、違うにょ!」
ユイが再び赤面し始めた。思い切り噛んでるし相当焦ったらしい。
「違うぞ狐。俺たちは一昨日近くの廃村で会ったんだ。ユイには道案内をしてもらっているだけだ。そんな特別な関係じゃない。」
「う、うんそうだよ。私は廃村でヒロシに助けてもらったからそのお礼に村まで案内してるの。」
どうしてかユイがそこはかとなく意気消沈しているのだが、どうしてだろうか?何かまずい事でも言ったのだろうか。
「そうか。昔は貴様らくらいの歳の童でも夫婦となっている人間が多くてな。最近はそうではないのか?」
「あんまり私達くらいで結婚してる人なんていないかなぁ。皆大体20〜30歳くらいの間だよ。」
そこら辺はこっちの世界も大差ないようだ。
「そういえばユイは幾つなんだ?俺と同じ位に見えるが。」
「17歳だよー。ヒロシは幾つなの?」
「俺は16だよ。ユイ年上だったのか全然見えないな。」
「酷いよー。でもヒロシ1つ下だったんだね。ちょっと意外だったよ。」
まあまだ俺はこの世界では分からないが、元の世界では誕生日が来てないだけだから同い年の可能性も捨てきれない。
「キツネさん達は何歳なの?」
「さあな。永く生き過ぎて分からんよ。800年程ではないのか。この子は1年だ。」
「キュー!」
狐の平均寿命って確か5年とかだったから……この子は人間で8歳くらいか?そう考えるとキツネの親父バケモンだな。
「もうそろそろこの森を出るだろう。改めて娘を保護してくれた件、感謝するぞ。」
「うん!キツネさんも案内ありがとねー!」
「狐の親父も娘さんも元気でなー!」
狐の親父、最初こそ襲って来たけど話し合うと良い奴だったな。
「じゃあ、ヒロシの村に行こう!」
さて、俺の方は身体の傷よりもユイに吐いた嘘をどうにかしないとな。