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天下は中華鍋でとるもの  作者: 左脇
2/6

天中2話

「意外だな。」


最初、森と聞いたときジャングルみたいな密林を思ったんだが


「まさかこんな閑散とした普通の雑木林だったとはな。」


「どんなのだと思ってたのよ。」


「てっきりもっと鬱蒼とした密林というかジャングルだと。」


「それはもっと下の方にいかないとないかな?」


日本と似た名前といい気候といいこの辺りに送ってくれた悪魔には感謝だな。

そんなことよりこの子大丈夫かな。地図を東西南北じゃなくて上下左右でみてるよ。よくこんな子が旅を出来るな。

さっきから話を聞いている限りこの世界の気候は地球とあんまり変わらないらしい。1つ違うのは大陸が1つしかない事だパンゲアみたいだ。


「あとどれくらいで着きそうなんだ?」


「多分日没ちょっと前くらいだと思うよ。」


「多分て……行ったことないのか?」


「こんな道から行くのは初めてだからねー。」


こんな旅で果たして大丈夫なのかと不安になった。

…………一応焚き火用の枯れ木拾っておこう。


――――――――――――――――――――――――


その不安は見事に的中した。


「夜になっちゃうよー!」


「とりあえずもう野宿した方が良くないか?道も暗くなってきて見え辛いし。何より猛獣とかと出会ったら大変だし。猛獣っているの?」


「うん。この辺りだとクマかキツネだねー。」


「うん?狐って猛獣か?」


たしか猛獣指定はされてなかったはず。


「キツネと出会ったら多分明日はないよー。ここら辺じゃ1番大きくて強いよ。」


「…………まじか。」


この世界の狐どんだけだよ!熊よりデカくて強いのかよ!


「じゃあ流石に夜は飯抜きか。昼間でもうほとんど無くなっただろ。」


「うーん、お腹空いたけど仕方ないかな。私たちがごはんになっちゃうのは嫌だしね。」


そんな話をしていると少し前方に大きくて黒い動物が現れた。


「あれ、熊じゃね?」


「うん。クマだね。」


しかも気付かれてるよ。普通熊って人の方に近寄らないんじゃないのか。ユイ泣きそうな顔で諦めてるし。


「もう気付かれてるよ。どうする?武器とかになりそうなものって……ないんだったな。」


「一応魔法が使えるけど……あんなの私の魔法じゃどうしようもないよー!」


魔法……あるんだ。初めて異世界っぽいものを見れそうだったのに……転生1日目にしてまた死ぬのか。呆気なさすぎやしないか。


「何もしないであいつの飯になるくらいなら少し抵抗してみるか、撤退してくれるかもしれないしな。その後火を起こしておけば獣もやってこないだろ。」


「そうだね!やるだけやってみよう!私の魔法で戦闘できるレベルの魔法はないけど、炎出して火だるまにするくらいなら出来そう!」


それ全然くらいじゃないだろ!しっかり殺してんじゃねーか!

俺たちの持ち物の中で使えるのは俺の拾った中華鍋とユイの食料入れくらいである。状況は絶望的だが俺は中華鍋を両手でしっかり握りしめた。

熊が近づいてくる間俺たちは出来るだけ遮蔽物の多い木々の間に移動して熊が来るのを待った。


――――――――――――――――――――――――


その瞬間はすぐに訪れた。

急に加速した熊は俺に向かって一直線に走って来る。俺は右へ逃れようとした、しかし目前まで迫って来た熊が右前脚の爪で引っ掻いてきた。ほとんど反射だった。中華鍋を盾にその前脚を防ごうとした。


ガンッ!


「え?」


あっさり弾き飛ばされるか、そのまま薙ぎ倒されると思っていだか俺はしっかり中華鍋を握りしめ、熊の攻撃を防いでいた。そのまま俺は中華鍋の底を思い切り熊の腹にぶち当てた。なす術なく吹っ飛ばされる熊。そして遠くの木に激突し落ちて動かなくなった。

俺は呆然とした。


「どうなってんだこれ。」


ありえない。俺は熊に腕力勝ち。その腕力は熊の体重を軽々吹き飛ばすほどの力があるということだ。


「す、すごいよ!ヒロシ!クマをやっつけちゃうなんて!全然ごはんにされないよ!むしろ出来るよ!」


「あ、ああ。」


呆けながら動かなくなった熊に近づくと熊が急に起き上がりまた襲いかかってきた。


「ブゴォォォ!!!!」


俺は焦って中華鍋の縁の方で熊を殴ってしまった。すると


スパン!


熊の足が取れた。綺麗に切断された。遅れて熊は右に倒れ、起き上がれなくなった。

俺は目を見開いた。今、自分の腕がありえない速度で熊の足を薙いだからだ。俺のからだ

というか


「普通、中華鍋でこんなことしたらベコベコになるだろ……。」


「まあいいや。とりあえず今日の俺たちの飯になってもらうかこいつは。」


俺は両手を切って引っ掻かれないようにした後、首を落とし、熊をユイの下へ持って行った。


「ねえねえ、ヒロシって魔法使いなの?」


「え?」

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