天中1話
主人公の発言に若干淫夢語録が挟まりますがま、多少はね?
―俺の名前は有明弘高校2年生だ……いや、高校2年生だった。高校に入学したもののある事件をきっかけに不登校になった。そしてそのまま中退し、親の脛をかじるだけの生活になった。
ここで唐突にだが俺は今日死んだ。
死んだのに何故こんなにも話せているのかというと……
「私はドュルーズ。転生を司る悪魔です。」
なんか転生させられるっぽい。
「ラノベとかの鉄板ってここで女神が出てくるんじゃないんすか?」
正直かなり胡散臭い。
「それはあくまでフィクションの中のお話です。実際私達悪魔は哲学や宗教などの始祖でもあり……」
「あーもういいっす。とりあえず転生の説明をおなしゃす。」
「そうですね。貴方には別の世界に行ってもらいます。」
「……それだけっすか?」
「それだけですが?」
「普通そういうのって世界を救ってもらいますだのなんとかあるんじゃないっすか!?しかもそれだと転生じゃなくて転送じゃねーか!」
ふざけんな!適当すぎんだろもう少し目的もって転生させろよ!
「え?何……」
「もういいです。」
「なら転生させますねー。」
俺の足元に魔法陣のようなものが浮かびそれが光り輝いたと思うと、俺はもう別の世界にいた。
「……見渡す限りの平原に送られてどうしろと?」
広がるのは見事な大草原だった。さらに村どころか人1人すら見えないのは絶望的だった。
「これはまさに大草原不可避ってやつだな。」
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初めに言うが俺は家事が出来ない。料理だけ多少は出来るがそれもお粗末な男料理くらいだ。
まず大体のこういう異世界モノは村に転送され第二の人生を謳歌しているのだが……草原スタートはねぇだろ。
幸い半日歩くと村は見つかった。しかし、人の気配がなく、完全に廃村だった。
「最悪だよ。まあ、野宿するより幾分マシだよな。」
「でもどうすんだよ、なんでフライパンとか普通の鍋じゃなくて中華鍋なんだよ。」
この村は捨てられてから長いのか劣化したものが多く使えそうなものが中華鍋しかなかったのだ。
「まあ、料理できそうなものが手に入っただけでも僥倖だな。でも食材どうしようか。」
そう言って中華鍋を手に取ると屋外、それも遠くから何かが倒れるような音が聞こえた。
村人がいるのかと思うと喜び音源に向かって駆け出した。
「結構遠いな……よくあんな所の音聞こえたな我ながら。」
とりあえず倒れている人の介抱くらいはしないとな。
「おい!大丈夫か!?」
そこにいたのは綺麗な銀髪を輝かせた可愛い女の子だった。
「お腹が空きました……そこの人食べられるものは……」
気を失ったらしい。しかしなんでこの子は肉や魚を持っているのに、こんなにも空腹になるようなことになったのだろうか。
「仕方ないな。丁度俺も食材には困っていたんだ少し分けさせてもらうか。」
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「さて、あの女の子が持っていた食材をどうしようか。」
中華鍋は万能鍋とも言われるほど多機能な鍋である。揚げる炒める焼く蒸す大概のことは出来る優れもの、しかし素人には少々扱い辛い代物だったりする。
「食材も器具も俺の手に余るし……何より調味料がないのがなぁ……。」
とりあえず素焼きにすることにした。
食材を焼いている時床が軋む音がした。
「あの子起きたのかな。それにしてもなんで今あんな所の音まで聞こえたんだろう。」
調理音もあり、更にここから寝床までそこそこの距離があるにも関わらず床が軋む音が聞こえるというものおかしな話だ。
「あの……助けて頂きありがとうございます。それで貴方は何をしているのですか。」
「おはよう。ちょっと君が持ってた食材借りてるよ。お腹空いてるんだよな?少し待ってて。」
「ええと……ありがとうございます。」
結構礼儀正しいな。もっと騒がれると思ったんだが状況が飲み込めてないだけなのか。
「はい、出来たよ。素焼きにしか出来なかったけどいいかな?それとちょっと俺の分の食材も分けてもらったんだけど……」
「全然大丈夫です。お食事ありがとうございます。」
「そんな堅くならなくていいよ。俺の名前は有明弘。君は?」
「私はユイ=カナメ。ところで一体ヒロシはこんな所で何をしていたの?ここは何十年前に廃れた村だよ?」
俺は結構驚いた。初対面で名前呼びされるとか、ラノベみたいな展開じゃないか!
それにしても困ったな。異世界からここへ飛ばされましたなんて言っても信じてもらえないだろうし……
「ちょっと道に迷ってね。そんなことよりユイはなんで倒れてまでこんな所に来たの?」
「え……あ、あ、うん私はね、最近旅を始めたのそれで持ち物取られちゃって……。」
目を見開いて驚いている。何故だ?
「でも食べ物があったぞ?」
「それは隠してあったんだ。でも食べられる物が無くて周りも草原で火も起こせないし……」
「それでこの村まで来たはいいものの緊張緩んで倒れたわけか。」
この子結構ドジなのかな。まあまだ旅を始めたばかりらしいしありがちな事なのかもしれないな。
「ご馳走様。ご飯のお礼にヒロシの村まで連れてってあげる。この辺りだとアダチ村かな?」
なんだかさっきから日本みたいな名称が多いな。ユイの名前といい。まあとりあえず最寄りの村まで連れてってくれるならありがたいな。
「そうだよ。ちょっと遊びに行ったら帰れなくなったんだ。」
「まああこからここまでって森だもんね。」
森!?まあ辻褄合わせには丁度いい。
「とりあえず出発しよう森で野宿になっちゃう!」