缶の中の葉っぱ
権藤刑事が殺された。
この報せは翌朝、二十三日になって臨月署から僕の元に届いた。
スーツに袖を通すと、小雪さんに急かされてライトバンに乗り込む。そして、殺害現場である薄暗い森の中に足を踏み入れた。
そこには数人の刑事がいるだけ。
僕は彼らから説明を受けて、現場を見て回る。
彼らの調べによると、権藤刑事は死亡時にうつぶせで倒れていたらしい。左手には昨日発売の缶ビールが握られていて、その缶の中にたくさんの葉っぱが詰められていたという。
また、右の腿が拳銃で撃ちぬかれており、それを引きずってゴミ箱まで這っていった、真っ赤で重々しい形跡があった。
この行動の意味するところはきっと
「ダイイングメッセージかしらね」
と小雪さんがすぐに結論を出した。
今日は仕事モードだ。最初からスイッチが入っている。
「はい、僕もそう思います」
僕は手袋をして、件の缶を手に取る。葉が入っているということは、何か意味があるのだろう。
「これを持ち帰って考えてみます」
とは言ったものの、今日の天気と同じように僕の頭の中には暗雲が立ち込めていた。
それは新たに犠牲者を出してしまったことだ。しかも、捜査を同じくする仲間から。
立ち止まるな。
落ち込むのは全部終わってからだ。
思考回路を強引に切り替えて、この状況をもう一度検証する。
小雪さんは小雪さんで顎に手を当てて、何やら考え込んでいた。
「権藤刑事、なぜこんな場所に……」
記憶をたどる。
そうだ、昨日彼は議長を探るといっていた。となれば、議長に接触した可能性が高い。しかも、権藤刑事ならこんな密会をするような場所を選ぶとは思えない。だとすれば、これは権藤刑事が議長に呼び出されたからだろう。
ここまで推測して、疑問が一つ浮かぶ。
何故殺したのだろう?
殺すということは証拠を残すことだ。ましてや、殺しの専門家でもない議長が手を下したとすれば下策でしかない。
殺さざるを得なかったのか?
権藤刑事は何か決定的な証拠をつかんでしまったのか?
仮定ではあるが、これなら辻褄が合う。
そして、それを残したのがこのダイイングメッセージというわけか。
「凛ちゃん、戻ろうか。ここの刑事さんたちはやる気ないみたいだし、ここにいてもあんまり収穫ないでしょ」
「そうですね」
小雪さんの意見には同意だ。
もしかしなくても、どこからかの圧力がかかっていることは明白だ。
北風が吹き始めた。
数秒間続いたそれが終わるときに
「……もしかすると……」
僕は一つの可能性を閃く。
論理回路が回転を始めた。
「小雪さん、ちょっと教会に行きましょう」
「何? あのロリっ子シスターに会いに行くの?」
「いえ、そうじゃないんです。弓張さんがいれば、ちょっとお話を聞きたいなと思いまして」
小雪さんは僕の考えていることに見当がついたのか
「わかった。行こう」
と返事が返ってくる。
その瞳はとても哀しそうに、権藤刑事の遺体を映していた。
こんばんは、jokerです。
更新が遅れてすみません。
さてここで権藤さんが退場。次はどうなるか?
宣伝ですが、間もなく異説鬼退治Ⅲを掲載します。スタイリッシュジジババアクションコメディ第三弾! 乞うご期待!
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




