『お姉ちゃんにおまかせ♪』 (その5)
【続・○○○姉さんに花束を♡】
『お姉ちゃんにおまかせ♪』
(その5)
5、
泥田坊さんの騒動から1週間ほど経過したある日の午前中。
私たちアパートの住人は、いつも通りに1階奥の大部屋に皆んなで集まり、いつも通りに皆んなで朝食を終え、いつも通りに皆んなそれぞれが好きな行動をして『有意義なひととき』を過ごしていた。
で、最近の皆んなはどんな『有意義なひととき』を過ごしているのか?と言うと…。
ぽんくん と わらしちゃん の二人は何やらクレヨンを使ってのお絵描きに夢中で、それを たぬちゃん がお姉さん目線で見守っているわねぇ。
ミケタマちゃんはユウキ先生と小学校のドリルを使ってお勉強会。
『ミケタマちゃんの中の女の子』は、病弱でちゃんと小学校に通えなかったらしいからね。
先生とお勉強するのは憧れだったらしいの。
(ちなみに、ユウキはもともと名門お嬢様学校の優等生ですからね。先生ポジションはピッタリよね!
…あ、でも、どうせなら、お馴染みの眼鏡をかけた女教師スタイルでやって欲しかったかなぁ)
大家くんとぬら爺は相変わらずの長編小説の読書大会。
二人とも、かなり巻数が進んでいるみたいね。
そして私も、定番の『まりあ先生作品』の読書大会だわね。
…なんか私だけ、単に漫画読んでるだけな気がするけど、ま、良いか♪
そんななか、突然わらしちゃんが顔を上げてアパートの玄関口の方向を見た。
「あれえ?玄関にお客さんが来たんだけど、何か動かないでじっと立ってるよお?変なのぉ??」
「え?玄関に変なお客さんですか?
…けど、わらしちゃんの結界の中に入って来れたって事は、不審者というワケでは無さそうですけどねえ。どなたでしょうか?」
そう言いながら大家くんが玄関口に向かった。そして、その「お客さん」と言うワードに、ピン!ときた私とたぬちゃんも一緒に付いて行った。
で、玄関口に立っていたのは、若い女の子でした。
外見的に女子高校生くらいに見える女の子。と言う事から「あ、もしかしてこの娘かな?」と私とたぬちゃんは思ったのですけど…。
ただ、何でだか判らないけど妙に緊張していて、私たちが廊下を歩いて来るのを見て、さらに緊張状態が激しくなったのです。
そんな妙な雰囲気の彼女を眺めながら、私とたぬちゃんは
(何かこの前 ここのつさん から聞いていた自由奔放な女の子って言うイメージとかなり違うんだけど、この娘じゃ無いのかしら?)
(う〜ん。見た目が女子高校生っぽい。…ってのは合ってるんだけどね。どうなんでしょう?)
なんて会話を小声で交わしていた。
「え〜と、どちら様でしょうか?
あ、失礼。僕はこのアパートの大家・管理人をしている神谷と言いますが」
「は、はいっ!ご挨拶が遅くなり申しわけありませんっ!
私は、7本尻尾の『あやかし』で「ななつ」と申しますです。あ、姉の「ここのつ」よりこちらのアパートにお伺いして、お世話になる様に厳命され、本日は参りました!何とぞ、このアパートのお部屋に私めを住まわせていただくご許可をいただきたく!」
私とたぬちゃんは思わず顔を見合わせてしまった。
やはり良く判らないけど、とにかく彼女が ここのつさん の妹さんである事は確実だ。
しかし、何で彼女は。〜ななつちゃんは、あんなに緊張してあたふたして喋ってるのだろう?
何やら言葉遣いも珍妙だし、いったい ここのつさん は、彼女に何と言ってこのアパートに来させたのやら……。
「ああ、はいはい。そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。お話しは既にうちの住人から伺ってますからね。もちろん、私たちはあなたがココの住人となる事を歓迎いたしますから安心なさってください。では改めて、このアパートにようこそ♪『 7本尻尾のななつさん』」
大家くんも若干彼女の言動に振り回され気味だけど、まぁとにかく、彼女が無事に私たちの仲間になった様なので、先ずはひと安心かな?
大家くんの言葉を聞いて、とりあえず落ち着いた感じの彼女の後ろから、突然ふたりの子どもが姿を現した。さすがに私たちはビックリしたわよ!いったい何事?
「あ、そうだ。この子たちも私と一緒に住まわせてあげたいんですけど、……あの、ダメでしょうか?」
「あ、いえいえ。空いている部屋はまだたくさんありますから、それは問題ありませんが。……この子たちはいったい?このおふたりも、ななつさんのご家族の方なんですか?」
ここのつさん からは「妹がひとり居る」とだけ聞いていたけど、あれ?でも、この子たちって、二人とも「白狐」では無いけど、あの有名な『あやかし』よね?
「この子たちって、私がアッチコッチ人間界を見て回っていた時に見つけた子たちなんです。
二人とも、それぞれ住む場所、行き場所が無くなって寂しそうにしていたんで、私、連れてきちゃいました!」
(いや、私、連れてきちゃいました!って……。)
「こっちの男の子が廃屋の子供部屋に居た座敷わらしの『わらしくん』で、こっちの女の子が廃校になった小学校のトイレに居た『花子ちゃん』です。
二人とも凄く良い子なんで、アパートの皆さんのご迷惑になる様な事はしません。私が責任を持ちますからよろしくお願いします」
ななつちゃんが頭を下げると、ふたりのチビちゃんたちも合わせて頭を下げた。
あぁ、初めてアパートに来た時のたぬちゃんとぽんくんを思い出してしまった♪
で、そのたぬちゃんは可愛い存在が大好きなんで、幼い『あやかし』のチビちゃんたちを優しげな瞳で見つめていた。
ななつちゃん、安心して!
ふたりの面倒なら、たぬちゃんも
バッチリするからね!
そんなこんなと玄関口で話していた私たちの後ろから、残りの住人ズがやって来ました。
まず、わらしちゃんがわらしくんの両手を握って大歓喜!
「わあ!私とおんなじ座敷わらしの男の子だあ!私はあなたとおんなじ座敷わらしの女の子のわらしちゃんだよ!仲良くしようね♪♪」
「うん。今まで一人ぼっちだったから、僕も嬉しい♪♪」
ちなみに、ぽんくんも二人と一緒に居るわね。ぽんくんにしてみたら、わらしくんは初めて出来たお兄ちゃんポジションかな?
ミケタマちゃんは自分と同じくらいの女の子、花子ちゃんが気になったみたい。でも、最初に話しかけたのは花子ちゃんでした。
「にゃんこのお耳が可愛い♡」
「にゃ!私はにゃんこの『あやかし』のミケタマにゃ♪花子ちゃんってにゃんこ好きにゃの?」
「うん。私が住んでいた小学校が無くなって一人ぼっちになってからは、ずっと近くに住んでるにゃんこたちと一緒に遊んでいたの」
「にゃあっ!? 一人ぼっちはダメにゃ!そんなの寂しいにゃ!
でもココなら、お兄ちゃんもお姉ちゃんも妹も弟も、お爺ちゃんも居るから寂しく無いにゃ!……だから、もう安心だにゃ♪」
良し良し。この二人は間違い無く親友になるわね!
お、ユウキは、ななつちゃんと親しげに会話してるわね。
二人は(元)リアル女子高校生と、女子高校生っぽい感性の『あやかし』だから、たぶん同世代感覚で気が合うはず!
ななつちゃんの友人は、もう速攻で決まったんじゃないかしら?
大家くんの「さぁ、皆さん。こんな玄関口で話し合って無いで、奥の大部屋に行きましょう!」
の号令を受けて、皆んなの移動が始まった。
その行列のいちばん後ろを、私とたぬちゃんがついて行く。
「このアパートも賑やかになって来たね。ぽんにお兄ちゃんが出来たみたいだし、私も嬉しいな」
「ホント、賑やかになって来たわね♪ 最初なんか私とぬら爺の二人しか居なかったのにねぇ……」
そこでぬら爺の姿が無い事に気がついた。
でも、まぁ。彼が突然現れて、突然居なくなるのなんて、いつもの事だもの。そもそも、それが『ぬらりひょん』だものね!
私は気にするのを止めて、たぬちゃんと大部屋に入って行った。
ーーーーーー
アパートの敷地の端に立って閉まっている扉を見つめているひとりの女性の姿があった。
その女性は、突然後ろから声を掛けられ、驚いて振り向いた。
「なんじゃ。お前さんは中に入らんのかい?」
「なんだ、ぬら爺か!ビックリさせおって! しかし九尾の狐である私に、一切気配を気取られずに側に近寄るなんて、さすが爺さんよね。腐っても『ぬらりひょん』だけの事はあるじゃない♪」
「こりゃ!勝手に人を腐らせるでないわ! …まぁ、それはともかく、泥爺さんの塩梅はどうじゃ?
元気になったかの?」
「う〜ん。まだちょっと落ち込んでる感じかしらね。暴走中の記憶は全く無いみたいだけど、それだけに自分が暴走して無意識に暴れてしまった事が、かなりショックだった様ね。
本来のあの爺さん、凄く気立ての優しい人だからね」
「ふむ、そうか。彼の暴走化には、ワシもまんざら無関係とは言えんからのう。まさか自分の住んどる街の地下であ奴が眠りこけているとは思いもしなかったよ。
気付いていたら、色々と助けてやれたかも知れんからな」
「まぁ泥爺さんの事は私に任せてくれ。彼は大切な友人だからね。
今は私が新たに見つけた綺麗で大きな田んぼの地下深くに居るから、直に元気になるだろうさ」
「そうか。あ奴が落ち着いた様なら連絡をくれるかの。久しぶりに顔を見に行くから。と伝えておいておくれ」
「了解したわ。さて、それはともかく、妹の件について先にお詫びを伝えておきたい。
とりあえず、住人の皆さんには妹を受け入れていただけた様で安心したものの、あの娘はなかなかの問題児だからね。今後、色々と迷惑をかける事があるかも知れない。もし扱いに困る様ならいつでも追い出してくれて構わない。
……そんな妹を押し付けるかたちになるのは本当に申し訳無く思うのだけど、ただ、先日出逢えたあの二人ならば、きっと上手く妹を導いてくれると思うのだ。
どうか、この通りよろしくお願いする」
そして彼女は深く頭を下げるのだった。
「ほっほお。お前さんがワシに頭を下げるとは珍しいの。まぁ、安心しておれ。ワシなぞは役に立たぬが、このアパートの住人は皆、心優しき連中ばかりであるからのう。大丈夫じゃよ」
「ありがとう。では私はこれにて失礼させてもらうよ。あまり長い事、今の泥爺さんをひとり放っとくのも心配だからね」
「うむ、またそのうちにな」
ここのつ を見送ったぬら爺は、次は、アパートの扉に視線を移して『彼』が出てくるのを待った。
そして、出てきた『彼』に声をかけた。
「これから歓迎パーティーの買い出しに行くのじゃろう?ワシもお付き合いするとしようかの」
「あれ?ぬら爺さん、さっきまで皆んなと一緒に大部屋に居ませんでしたっけ?いつの間に外に?」
「まぁ、細かい事は気にするでない。人数が一気に増えたからのう、買い出しの量も多くなると思うたのじゃよ。つまり、力仕事となるなら男手が必要になる。…という事じゃよ。それでは、いざ参るとするか」
「いやあ、ありがとうございます。それではよろしくお願いします!」
そして、アパートに住む二人の男性(力仕事の男手要員)は、談笑しつつ商店街へと続く階段を降りていった。
アパートからは、時折り賑やかな笑い声などが聞こえてきた。
もしこのアパートが『あやかし』の「迷い家」であったなら、きっと彼はその活気あふれる懐かしい雰囲気に喜んだろう。
いや、それは『感涙』となるかも知れない。
かつて、多くの学生たちが楽しく過ごし活気あふれる毎日であった『学生寮』だった頃の、自分を思い出して………。
【続・○○○姉さんに花束を♡】
「お姉ちゃんにおまかせ♪」
(完)




