Christmas Special episode 鮭はどこだ(特別先行公開版)
この作品は天道暁によるオリジナルのスーパー戦隊作品のクリスマス特別編です。現在放送されているスーパー戦隊シリーズを制作・放送している各団体とは一切関係ありません。
普段のシリーズはこちら
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オープニングテーマ「your kind!」
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妖怪の里、ヨーカイジャー秘密基地。
今日はクリスマスイブ。
今夜、食堂でヨーカイジャーのクリスマスパーティーを行うため、メンバーそれぞれ手分けして準備を進めている。
一番センスがいい千影と、男性メンバーの中では一番洋風方面のセンスが良さそうな拓実が飾り付け担当。
クリスマスツリーを飾り、壁に赤や緑のモールを取り付ける等している中、ムゲンブレスの着信音が鳴る。
智和からの、今すぐ司令室に集合しろとの連絡。
司令室に行くと、他のメンバーは既に全員集合していた。
拓実と千影が入ってくると、結月が跳ねるように走ってきて千影に抱きつく。
「智和、悪魔か!?」
「そうじゃないんだが……ある意味それ以上に厄介な事態が起きててな……」
智和がモニターのスイッチを入れると、豊かな自然に囲まれた日本のとある村のリアルタイム映像が映し出された。
と、同時に鳴り響くけたたましい轟音、そしてそれ以上のボリュームで響く村人の叫び声。
≪ダイダラス様の祟りじゃあああああああああ!!!!!!≫
「ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!!!!!!!!????????????」
「夢幻戦隊ヨーカイジャー」
Christmas Special episode「鮭はどこだ(特別先行公開版)」
そこはダイダラスの森近くの村。
画面は激しく揺れ動いており、ずっと見ていると酔ってしまいそうになる。
村民達はパニックに陥り、何人かの老人は、
≪ダイダラス様の祟りじゃあああああああああ!!!!!!≫
と、大声で叫び散らしている。
拓実は画面の中に、叫び散らしている老人の背後を通り過ぎる巨大な何かを見た。
「今のとこもっ回…」
智和がモニターを操作し、画面を巻き戻して一時停止。
老人の背後を通り過ぎた何かは、ステルスモードで普通の人間には見えない状態のダイダラスだった。
「どういうことだ? あいつガチで祟り起こしてんのか?」
「わからない。この前相談しに行った池のブラックバスのことも、役場の人達が動いてくれてるそうだし、あの村の人達がダイダラスを怒らせるようなことをするとは思えないが…」
とにかく原因を確かめなければどうにもならない。
ヨーカイジャー達はカラステングとブルクダンに乗り込み、ダイダラスの森近くの草原に移動。
ビームで地上に降り、森の入り口の祠を確認してみる。
ホラー作品でよくありそうな、祠が破壊されて祀られていた存在が暴れだした、ということはなさそうだった。
ヨーカイジャーは徒歩で、巨大妖怪達はステルスモードで空を飛んで村へ移動。
村に近付くほどに、轟音と振動が大きく強く感じられる。
村に一歩踏み入ったところで耳に飛び込んできたあの声。
「ダイダラス様の祟りじゃあああああああああ!!!!!!」
「すげえ! 生で聞けた!」
「何がすげえんだよ! お婆さん、何があったんですか!?」
「おお、こないだの人達! 村の若い連中はただの地震だって言うが、これはダイダラス様の祟りじゃ!!!」
「誰か、祟られるようなことしたんですか?」
「それがのぉ…」
一際大きな地響き。
ヨーカイジャーには、まばらに建っている民家をスレスレでかわしながら走り回るダイダラスの姿がはっきりと見える。
「ダイダラス様の祟りじゃあああああああああ!!!!!!」
〔祟りは俺達が止める!!!〕
〔モォ~!!!〕
カラステングとブルクダンがダイダラスの猛進を正面から体で抑え込む。
もちろん村民には姿も見えず声も聞こえない。
〔ガオオオオオオオオオオン!!!!!〕
ダイダラスは咆哮と共に巨体を振り回し、カラステングとブルクダンを振り飛ばしてどこかへ走り去っていった。
〔だめだ、パワーが違いすぎる…〕
〔モォ~…〕
カラステングは腰を摩りながら起き上がり、上半身が埋まったブルクダンを尻尾を掴んで引っ張り出した。
図らずも占い能力が発動し、ブルクダンの目に「大凶」と表示された。
老婆の話によると、この村には毎年12月24日に「大太羅主の祠」に山盛りの鮭を供え、その年の豊作を感謝し、翌年の豊作を願うという風習がある。
自然豊かなこの地域の河川では、毎年丁度いい時期に大量の鮭が獲れるはずなのだが、今年はなぜか全く鮭が登ってこず、供える鮭を手に入れることができなかったらしい。
「毎年お供えしてる分を他所から買うのは、高いからこの村にゃきつい」
「温暖化の影響で獲れなくなってる上に、石油が高くなってるせいで色々な物の値段が上がっていますからね」
「ワシらもお供えできるもんならしとるんじゃが…」
〔ガオオオオオオオオオオン!!!!!〕
またしても普通の人間には聞こえない咆哮と、普通の人間にも聞こえる地響き。
ダイダラスがまた走り出している。
「ダイダラス様の祟りじゃああああああああああああああああ!!!!!!」
「あああああ! とにかく! 勝、ムゲンショーグンでダイダラスを抑えてくれ。俺達はその間に鮭が捕れなくなった原因を調べる」
「わかった!」
勝は民家の陰に隠れてヨーカイシルバーに変身。
ムゲンライザーに召喚カードを入れる。
「サモン、パートナーズ!!」
妖怪の里。
「さわやか草原」を走る爆走妖怪オボログルマ、上空に疾風妖怪イッタンモメン、2体同時に高く飛び上がりオレンジ色と紺色の光になって高速移動を開始。
シルバーの前に2つの光が降り立つと同時に巨大な妖怪の姿を表し、ブルクダンも合流して目からビームでシルバーをコクピットに転送する。
もちろん普通の人間には見えない。
「いくぜ、夢幻合体!!」
シルバーが合体カードを発動。
巨大妖怪達が宙に浮き上がり変形を始める。
ブルクダンの四肢と尻尾が折り畳まれながら体全体が直立、胴体下半分がスライドして2本に分かれて「足」になり、首から上の頭部が真っ直ぐに前を向く。
オボログルマの胴体前部が伸び、全体的にタイヤとガトリング砲の付いた腕といった形状になりブルクダンの左腕部分に合体。
イッタンモメンの尾が折りたたまれ、胴体前部が伸び、全体的に左右両側に鋭いカッターの付いた腕といった形状になりブルクダンの右腕部分に合体。
最後にブルクダンの首が回転扉のように回転、中から人型の顔が姿を表した。
「完成、合体巨人・ムゲンショーグン!!」
シルバーがその名を叫ぶ。
ムゲンショーグンは両腕の武器を交互に力強く前に突き出し、銀色の光を放ちながら腕を組んでポーズを決める。
走りくるダイダラス。
その正面に両腕を広げて立ちはだかるムゲンショーグン。
〔ガオガオガオオオオオオオオン!!!!!〕
ダイダラスは勢いを落とさず突進、ムゲンショーグンはそれを全身で受け止め足を地面にめり込ませる。
〔ガオガオガオガオガオオオオン!!!!〕
カラステングが攻防の傍らに降り立ち会話を試みる。
〔ダイダラス! お前、鮭を探して走り回ってるのか、怒ってめちゃくちゃ走り回ってるのか、どっちだ!?〕
〔ガオガオガオガオガガガガオオオオン!!!!〕
〔両方っぽいな! 鮭を探して怒ってめちゃくちゃ走り回ってるっぽいな! ヨーカイジャー! なるだけ早く頼む!!〕
「わぁかったー!!」
「鮭が獲れなくなった原因を調べよう。それしかない」
拓実、武士、千影は毎年豊富に鮭が獲れるという川へ向かい、智和、結月は村人達への聞き込みを開始した。
森に挟まれた川に辿り着いた3人。
流れる水は川底が見えるほど澄みきっており、空気も同じく澄みきって旨い。
「俺、この空気だけで麻婆丼3杯は食えそう」
「『だけで』と麻婆丼が繋がらないけど、確かにきれいな所だね」
「川が汚れて鮭が獲れなくなった、ということはなさそうでござるな」
その時、拓実は向こう岸の茂みが不自然に揺れるのを目にして、足元の小石を揺れた茂みに投げ入れた。
「ジャミー!!」
「今の声!」
「明らかに!」
「妖怪変化!!」
3人同時変身。
茂みから飛び出したジャミリアーがマシンガンを乱射。
3方向に散ってそれをかわし、ムゲンソードをムゲンシューターに変形させ同時発射。
銃撃は命中し、ジャミリアーはマシンガンを放り出し派手に倒れて爆散。
「あいつがいたってことは…」
「悪魔が絡んでるね」
レッドがムゲンブレスで智和に連絡する。
≪ジャミリアーがいたか…≫
「捕まえといたほうが良かった?」
≪いや、情報を聞き出そうにもどうせジャミジャミしか言わないし、妖怪の言葉とは違うから俺にも勝にも何言ってるかわかんねえから。こっちも気になる情報を手に入れた。最近、お前らがいる川の下流に水をきれいにするための施設とかいう物が建ったらしい≫
「もしかしてその施設が逆に水を汚くしてるとか?」
≪特にきれいにも汚くもなってないらしい≫
「逆に怪しいな。行ってみようぜ」
勝以外の変身前のヨーカイジャーが下流の施設前に集合。
公園の公衆トイレほどの大きさの建物に、「水質管理施設」という表札が付いている。
窓は無く、鍵の掛かった扉が一つあるだけだった。
「ダイダラスはどんな感じ?」
「カラステングとムゲンショーグンで何とか抑えてるが、あいつらの体力も無限ではい」
「でもクマちゃんの体力は無限かもしれない」
「ああ…急いだほうがいいな」
「例によって拙者が扉を斬るか?」
「うーん、ここにほんとに悪魔がいるなら、なるべく気付かれずに入ったほうがいいだろうし…」
千影が扉の隙間から中を覗こうとしていると、突然扉が開き、4人は変身カードを手にして身構える。
……4人。
扉の向こうから出てきたのはグリーン。
「俺が液状化して隙間から中に入って鍵を開けた」
「ネネコちゃんの能力カード! 愛の力で扉が開いたんだねっ!」
「アイノチカラ? 何だそれは」
「最近意思を持ち始めたばかりの古代兵器みたいなこと言ったな。智和のそういうとこ見てると、この世に完璧な人間なんていないんだって思えて安心する」
「よくわからんが、とにかく行くぞ」
「はいはい」
「はいはーい!」
中には地下に繋がる階段が一つあるだけ。
それを降りる間、結月は終始ニヤニヤしていた。
階段を下りた先にあった扉を音を立てないように開くと、そこは広い倉庫のような部屋で、
顔が鮭、頭にエゾシカのような角が生えていて、時計台のような胴体、右腕がケガニのようなハサミ、左腕がラベンダーの花束のようなマシンガン、トウモロコシのような足、足首から下はジャガイモに似ていて、左腰にホタテ貝のような物体、右腰にバフンウニのような物体が付いている
という姿の悪魔が部屋の真ん中でソファに座ってふんぞり返り、鮭の尻尾を掴んで旨そうに頭から齧り付いていた。
「いやぁ、うめえなあ! やっぱこんなうめえモン、人間に食わしてやるの勿体ねえよなあ!!」
「ジャミジャミ!」
周りにジャミリアーが8体、同意するように頷く。
「さぁて、獲った分は全部食ったし、様子見に行った奴が戻ってきたらまたデビルギー回収に行くか。うめえモンが食えて、デカい奴が勝手に人間どもを苦しめてくれる。全く、やめらんねえなこの作戦!」
「ジャミジャミジャミ!!」
周りのジャミリアー達が大笑いするように全身を揺らす。
「しかし遅ぇなアイツ。油断してデカい奴に踏み潰されたかな?」
その時、ドアの隙間から聞こえてきた声。
「ジャミジャミ!」
「お、帰ってきたか?」
「ジャミ!」
拓実が叫びながらドアを開け、同時にグリーン以外のメンバーが変身。
ムゲンシューターで鮭顔の悪魔を中心に一斉銃撃。
「あだだだだだだだだ!!!!」
「ジャミジャミジャミジャミー!」
悪魔はソファーから転げ落ち、ジャミリアー達は慌てふためき走り回る。
「誰が呼んだか旅烏 鼻高々にてんつくてん 天に代わって只今参上! 空の勇者、ヨーカイレッド!」
「誰が言ったか川流れ 流れるどころか掻き分けて 登って飛び出せナイアガラ! 水の戦士、ヨーカイグリーン!」
「誰が言ったか猫かぶり 花も恥じらうJK3 嘘はいらない夢見る乙女! 獣のアイドル、ヨーカイピンク!」
「誰に言われどカマわない イタチごっこにピリオド刻み 腹を切らずに悪を斬る! 風の剣士、ヨーカイブルー!」
「誰を染めるか狐色 こんこん今夜も手鞠歌 お目にかけましょ万華鏡 幻の賢者、ヨーカイイエロー!」
「夢も現も守るが仏 夢幻戦隊!」
「ヨーカイジャー!!!!」
「そうか、お前らがヨーカイジャー……」
鮭顔の悪魔は立ち上がり、左腕のマシンガンをヨーカイジャー達に向ける。
「俺はクランプス。腹ごなしにブッ殺してやる。かませ、ジャミリアー!!」
「ジャミジャミ!」
8体のジャミリアーがクランプスを挟んで4体ずつ横並びでマシンガンを連射。
ヨーカイジャーは5方向への前転でかわしムゲンシューターを連射。
この攻防で3体のジャミリアーが倒れて爆散、2体がマシンガンを撃ち落とされる。
「やるな。だがこれならどうだ!」
クランプスがラベンダー状のマシンガンからマリモのような緑の球体を連射。
ヨーカイジャー達はこれをかわすが、壁に当たったマリモ弾は爆発して背後から粉塵の混ざった爆風をぶつけてくる。
前方へ吹っ飛ばされたヨーカイジャーへ更なる銃撃。
「うわあああああっ!!!」
銃弾とマリモ弾によるダメージで膝を突くレッド、ピンク、ブルー、イエロー。
「緑の奴は跡形も無く消し飛んだか?」
「そうだな」
「そうだろ? ん? 今のどっから聞こえてきた?」
「こっちだ」
液状化していたグリーンがクランプスの背後で元に戻りそのまま羽交い絞めにした。
「何ッ!?!?」
「ジャミ!」
3体のジャミリアーがグリーンにマシンガンを向けるが、グリーンはクランプスを盾にしてそれを牽制する。
「お…お前ら助けろ! でも撃つな!!」
「ジャミ!?」
「お前ら撃て!」
「あいよー!」
ヨーカイジャー4人は大勢を立て直し、敵陣営にムゲンシューターを向ける。
「何だ!? 仲間に当たっちまってもいいのか!?」
「当てないもん!」
4人でムゲンシューターを連射、同時にグリーンはまた液状化して床を移動。
クランプスの体で火花が散り、マシンガンを持っていたジャミリアー3体が爆散。
「おのれええええええ!!!!!」
クランプスが走り出し、残る2体のジャミリアーもそれに続く。
ヨーカイジャー達はムゲンシューターをムゲンソードに変形させ、クランプスが突き出してきたハサミをブルーが弾き返し、がら空きになったボディにレッドとピンクがすれ違いざまの2連撃を食らわす。
丸腰で襲ってきたジャミリアー1体をイエローが流れるような連続斬りで撃破。
もう1体は液状化を解除したグリーンが背後から突き刺し撃破。
クランプスが蓄積されたダメージでふらついた隙にレッドがムゲンブレスに必殺カードを入れると、5人の専用武器が一つに合体、さらにレッドのムゲンソードがムゲンシューターに変形、5つの武器が合体した物の底の部分に合体、この合体武器を発動するためのトリガーとなった。
「いくぜ、ムゲンバズーカ!!」
レッドが完成したバズーカを構え、反動に備えてグリーンがレッドの右肩、イエローが左肩を支える。
更にブルーがグリーンの背中、ピンクがイエローの背中を支える。
「うおおりゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
気合いと共にトリガーを引くと、5色の光が表面を駆け回る球形のエネルギー弾が発生、轟音と共に撃ち出された。
避けきれないと判断したクランプスはマリモ弾を連射するが光弾は爆発をものともせず突き進みクランプスを直撃。
「Devils, be ambitious !!」
爆散。
「うよっしゃああああああああああああああああ!!!!!!」
ムゲンバズーカは分離しそれぞれの持ち主の元へ戻る。
「で、鮭は?」
部屋には空の木箱がいくつか置いてある。
「匂いと大きさからして、これに鮭が入ってたんだろうが……」
「あの悪魔言ってたよね、獲った分は全部食べちゃったって」
「悪魔を倒したところで鮭が手に入らねばダイダラスの暴走は止まらぬ」
グリーンがムゲンブレスでシルバーに連絡。
「勝、そっちはど…」
≪うわあああああああああああああああ!!!!≫
「勝!?」
ムゲンブレスの向こうから聞こえた絶叫と轟音にただならぬ雰囲気を感じたヨーカイジャー達は急ぎ村へ戻る。
目に映ったのは走り回るダイダラスを掴んだまま地面を引きずられるムゲンショーグンと鯉幟の吹き流しのような体勢で引っ張り回されるカラステング。
〔ガオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!〕
〔止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれええええええええ!!!!!!〕
〔モォ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!〕
「ダイダラス様の祟りじゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「のどかー! のどかどこー!?」
「ダイダラス様の祟りじゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
止まらない地響きに村人達は家を飛び出し逃げ惑う。
「これどうにかしなきゃ被害出るぞ!」
グリーンが再びムゲンブレスで連絡。
「勝ー! なんとかあの、森の入り口の広い所! あそこに誘導できないか!?」
≪やってみるー!!≫
シルバーが力いっぱい操縦桿を引く。
引きずられていたムゲンショーグンは腰を落として強く地面を踏みしめ、更に数十m引きずられながら体全体を捻る。
〔よっしゃ俺も!!〕
カラステングも地に足を着け、ムゲンショーグンと同じ方向へ体を捻る。
〔ガオオオオオオオオオオオン!!!!!!〕
ダイダラスはまたムゲンショーグンを引きずりカラステングを吹き流しにしながら森の入り口の草原の方向へ走っていった。
「……よし、これで被害は最小限に…」
その時、突然大型化したマリモ弾が村に降り注ぎ、ヨーカイジャー達がいる場所を中心にいくつもの爆発を起こす。
「うわああああああああああ!!!!」
「まさか!?」
見ると、先程戦った施設の方向から巨大化したクランプスが迫ってきていた。
「でっかいどー!!」
叫びながらまたマリモ弾を連射。
家も田畑も焼かれ、人々は更なる大混乱に陥る。
「ダイダラス様の祟りじゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「これは違う! 別のやつ!」
「まずあっちから何とかするぞ!」
「サモン、パートナーズ!!」
妖怪の里。
「春夏秋冬山・南エリア」で木々の間を歩いていた伝説妖怪ゲキリンダーが空を見上げ、天を駆け上がりながら金色の光になって高速移動を開始。
「河童ヶ沼」の底から長老妖怪メガガッパーが水飛沫を上げながら浮かび上がり、緑の光になって高速移動を開始。
「妖怪電気街」のステージのモニターに「きんきゅーしゅつどー」の文字が表示され、ステージ上の偶像妖怪ネコマタンがそれを見て敬礼、客席の妖怪達が振るサイリウムに見送られながらピンクの光になって高速移動を開始。
「試し斬りの竹林」で瞑想していた斬空妖怪カマイタチが空を見上げ、青い光になって高速移動を開始。
「妖怪稲荷神社」の神殿の扉が開き、奥から幻惑妖怪キュービルンが「お座り」のポーズのまま前進、その足元から機械的なカタパルトが伸び、どこかから響いてきた「five,four,three,two,one,zero!」というカウントダウンでキュービルンが「お座り」のポーズのまま空高く射出され、黄色い光になって高速移動を開始。
ヨーカイジャーの前に5つの光が降り立つと同時に巨大な妖怪の姿を表し、5体のパートナー妖怪達が並び立った。
遠くを見渡せるゲキリンダーの目に引きずられるムゲンショーグンとカラステングの姿が映る。
〔あいつら楽しそうなことやってるな〕
「いや楽しそうならやってこいよ」
〔悪くないだろう〕
「いやいやほんとに行くな! 早く乗っけろ!」
「ん?」
パートナー妖怪達は目からビームを出してヨーカイジャーをコクピットに転送。
「いくぜ、夢幻合体!」
レッドがムゲンブレスに合体カードを入れると、5体のパートナー妖怪達が宙に浮き上がり変形を始める。
ゲキリンダーの両前足と尻尾が外れ別次元へ転送され、後ろ足が背中側へ折り畳まれ、体全体が垂直に起き上がり首が体内に引っ込むようにして合体に適度な長さになる。
メガガッパーの両腕が引っ込み、甲羅が上にスライドして体の下半分が2本の足の形状になったところでゲキリンダーの体の下に合体して「下半身」となる。
ネコマタンの尾と後ろ足が折り畳まれ、前足は爪が出た状態で頭に被さるようにスライドし、全体的に鋭い爪の付いた腕といった形状になりゲキリンダーの左腕部分に合体。
カマイタチの刃物状の尾が外れ、後ろ足が折り畳まれ、鎌の付いた前足は頭に被さるようにスライドし、鎌の間に刃物状の尾が収まり全体的に鋭い剣の付いた腕といった形状になりゲキリンダーの右腕部分に合体。
キュービルンの体が前部と後部で半分に分離、前部は中心にキツネの顔が付いたプロテクターといった形状に変形しゲキリンダーの胸に合体、後部は九本のキツネの尾が付いたプロテクターといった形状に変形しゲキリンダーの背中に合体。
最後にゲキリンダーの首が回転扉のように回転、中から人型の顔が姿を表した。
レッド以外の4人もゲキリンダーのコクピットに転送され、ヨーカイジャー達から見て左から、ピンク、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの順に席に着いた。
「完成、合体巨人・ムゲンビルダー!!」
5人声を揃えてその名を叫ぶ。
ムゲンビルダーは足を高く上げて振り下ろし、歌舞伎の見栄を切る動きでポーズを決める。
足元の村では、駆け付けた妖怪治安維持部隊が避難誘導を進めている。
ムゲンビルダーは左手にクロノジャベリンを装備し、風車のように回転させ巨大クランプスのマリモ弾を弾きながら前進。
近接したところで回転斬りを繰り出すが毛ガニのようなハサミにクロノジャベリンを掴まれ阻まれる。
〔派手な見た目は伊達じゃないようだな〕
「お前もな」
そのままラベンダーマシンガンをムゲンビルダーに接触させ0距離発射。
「うわああああああああああ!!!!!」
爆発の衝撃が高熱と共にコクピットに伝わりヨーカイジャーにもダメージを与える。
一方その頃、村を飛び出し草原にまで暴走を続けるダイダラスと全力で食らいつくムゲンショーグンとカラステング。
〔モォ~~~~~~!!!!!〕
〔止まれ止まれ止まれ……ハッ!?〕
その時、カラステングの視界で動いた小さな影。
小学校低学年ほどの少女が森に向かって草原を歩いている。
〔おい! ほんとに止まれ! 女の子踏み潰しちまう!〕
「マジか!? ……マジだ!!」
少女の姿はモニター越しにシルバーの目にも入り、シルバーは更に力を込めて操縦桿を引っ張る。
「止まれえええええええ!!!!!!!」
〔モォ~~~~~~~~~!!!!!!〕
少女は振動に足を取られ転びながらも、小さな手で体を起こし、立ち上がりまた歩き続ける。
〔こんにゃろー!!〕
カラステングは空からダイダラスの前方に回り、前から押して勢いを抑えようとする。
「止まれ!」
〔止まれ!〕
〔モォ~~~!〕
〔ガオオオオオオオオオオオン!!!!!〕
草原は抉れ、空と大地は激しく揺れ動き、それでも少女は歩みを止めず、倒れ、また立ち上がり、歩き続けて森の入り口の「大太羅主の祠」に辿り着き、ダウンジャケットのポケットから取り出した鮭缶を供えて手を合わせる。
「ダイダラス様、どうか怒りを鎮めてください」
ダイダラスは動きを止める。
〔ガオン…〕
体から光を放ち、鮭缶を浮き上がらせ自分の方へ引き寄せ、口に入れて咀嚼する。
少女の目からは、ひとりでに浮き上がった鮭缶が光に吸い込まれて消えたように見える。
〔ガオオオオオオオン!!!!〕
一声叫び、落ち着きを取り戻したダイダラス。
ムゲンショーグンとカラステングは大の字になって寝転び、コクピットのシルバーは全身で息を吐いて脱力する。
「はぁ~~~~~~、止まった…」
混乱の根源にあった振動が止まり、少女は笑みを浮かべてまた手を合わせる。
それを寝転びながら見守っていたカラステングが、おかしな点に気付いて呟く。
〔こいつ缶ごと食ったな?〕
〔ガオオオオオオオン!!!〕
一方その頃、0距離発射のダメージに怯んだムゲンビルダーはハサミによる追撃にボディを切り裂かれ、更なる0距離発射に体力を奪われる。
「大丈夫かああああああ!!!!!」
〔まだなんとか……だがこのままでは……〕
その時、彼方から聞こえてきた、先程までのそれより軽快に思わせる地響き。
「おーーーーーーーーーーい!!!!」
〔ガオオオオオオオオオン!!!!!〕
ムゲンショーグンを背に乗せたダイダラスと、荷が降りて伸びやかに空を行くカラステングが戦場に駆け付けた。
ムゲンショーグンが左腕のガトリングを構えたと同時にムゲンビルダーが身を翻し、巨大クランプスが銃撃に押されて後退。
「止まったんだな!」
〔ああ、ちっちゃいサンタさんのお陰でな!〕
「ちっちゃいサンタさん?」
〔ガオオオオオオオオオン!!!!!〕
その時突然、ダイダラスの体が光に包まれ、その光は1つに集まってムゲンビルダーのコクピットに飛び込み、レッドの目の前で1枚のカードになった。
レッドが手に取って見てみると、それは赤や緑のクリスマスカラーに彩られた必殺カード。
「何だこのカード?」
〔ガオオオオオオオオン???〕
「何かわかんないカードが無意識に出たってー!!」
「無意識に? 無意識に何かしちゃうって人間にもあるけど……とにかく使ってみっか!!」
レッドがそのカードをムゲンブレスに入れると、ムゲンビルダー、カラステング、ムゲンショーグン、ダイダラスは頭にサンタ帽子が装着され、金銀の光の粒に包まれながら浮き上がる。
戸惑う巨大クランプスの頭上で4体が輪になって上昇。
気づけば巨大クランプスも金銀の光の粒に包まれながら上昇を始めていた。
「何だ何だ何だ何だ!?!?!?」
光は地上にも降り注ぎ、破壊された村や草原が字少しずつ修復されていく。
上空から鐘の音が聞こえた気がした。
巨大クランプスは次第に意識が遠くなっていき、4体が描く輪を通り過ぎて高度を上げていく。
コクピットにも届く光に包まれながら、ヨーカイジャーは6人で声を揃えて叫ぶ。
「必殺大妖技・夢幻ジングルベル!!」
巨大クランプスがいきなり高速で急上昇。
「ええええええええ!?!?!?!?!?!?!?」
一際眩しい金銀の光に包まれた直後、上空でクリスマスツリー型の花火のような爆炎を上げながら爆散。
「るーるるるるるるるるるー!!!!!!」
〔コン……?〕
ムゲンビルダーの胸のキュービルンが首を傾げる。
「うよっしゃああああああああああああああああ!!!!!!」
いつもの勝利の叫びの後、金銀の光とサンタ帽子は消え、夢幻ジングルベルのカードもレッドのムゲンブレスの中から消えて無くなっていた。
「一回きりの必殺技だったのか……」
地上では、祠に鮭缶を供えた少女が母親に抱きしめられていた。
「のどか! もぉ~、どこ行ってたの!」
「お母さん! あのね! あのねあのね!」
〔あれがちっちゃいサンタさんだぜ〕
「あの子が?」
〔ガオオオオオオオン!!!〕
村の民家の屋根に乗って戦いを見ていたベルゼブルが、クリスマスツリー型の花火が消えた空に「チェケラ!」の指を向け、
「Merry Christmas!」
と呟いてどこかへ飛び去っていった。
その後、妖怪情報統括部による記憶操作と情報操作が行われ、村人達は平和なクリスマスイブを迎えることとなった。
夜、ヨーカイジャー秘密基地で予定通りクリスマスパーティが行われた。
サンタ衣装を着て、ごちそうを囲んでクリスマスソングを歌う。
ごちそうには急遽、スーパーで買ってきた鮭缶が加えられた。
秘密基地の外では巨大妖怪達が、キュービルンが生成した幻のサンタ帽子を被って盛り上がる。
ダイダラスも誘われたが、いつもの森でクリスマスを過ごしたいということで参加しなかった。
翌朝。
目を覚ました少女は枕元に置かれていた物に気付く。
それは村の近くの山で採れる宝石の原石。
窓から差す光に照らすと、内部で乱反射した緑色の光が少女の瞳をキラキラ輝かせる。
「サンタさんからのプレゼントだ!」
少女はそれを両親に見せるため階段を駆け下りる。
「お父さんお母さーん!!」
その声を聞いたダイダラスは静かに頷き、飛び去った。
【Merry Christmas…】
このエピソードはもうしばらく後に公開する予定のクリスマス回を先行公開用に編集したものです。
本編でこのエピソードを本来の形で公開できる日をお楽しみに!
デジタルイラスト集公開中!
その他の情報は作者Instagram「 @satoruyoukaidaisuki 」とX(旧Twitter)「@shousetuyokai」をご覧ください




