第一話 雲泥万里
この世界には大量の異常が蔓延っている。
世界人口の約八割が異能力と言われる超常の力を持っている。
魔法と言われる技術は理論的には全人類が行使可能であり規模に差はあれど日常的に使用されている。
◇
2003年7月14日19時20分 レムリア湾沖
大日本帝國海軍第3艦隊 大型巡洋艦 天城
CIC
「レーダに感あり!!本艦6時方向、距離3万!!」
「スタンダード発射!!空母を守れ!!」
艦橋には怒号にも似た報告が飛び交う。
「対空ミサイルは現在、目標に向かって飛翔中」
「インターセプト5秒前……4、3、2……マークインターセプト」
艦橋内ではでかでかと表示されたスクリーンに7つの目標と自軍の放った対空ミサイルが写っていた。
「5発撃墜、1発は依然として接近中」
対空ミサイルと目標の接触と同時に5つは表示が消え1つは速度を落とさずに突っ込んでくる。
「スタンダード防空圏、突破されました!」
「残りは1発だ!!シースパロー攻撃はじめ!!」
「シースパロー攻撃はじめー!!」
「目標ロストコンタクト。全弾撃墜」
「よし、敵艦隊の位置は」
「補足済みであります」
ニヤリ、と男は笑みを浮かべると飛び切り大きな声で船員に命じる。
「反撃に移る!!SSM-3攻撃はじめ!!」
「SSM-3攻撃はじめー」
号令と合わせてVLSからは合計で10発のSSM-3が発射される。艦隊では合計、30発近くが発射されそのまま、地面スレスレを飛び一直線に敵艦隊へと突撃していく。
「駆逐艦吹雪より入電。SSM-3、27発命中により敵重巡2隻及び駆逐艦3隻を撃破。駆逐艦3隻と中型空母1隻、戦艦1隻が未だ健在とのことです」
「ふむ……なかなかに魔導兵器というのも有能ではないか。てっきりオカルト連中の戯言だと思っていたが……やはり、偏見は良くないな」
「栗田司令、駆逐艦隊が敵残存艦隊の追撃許可を求めております」
「第5艦隊の位置は?」
画面が切り替わり地図がさらに大きく表示される。
「ここより南東に40キロほどの地点で航行しております」
「なら、追撃の必要はない。今頃、第5艦隊が攻撃を仕掛けている頃だろう。わざわざこれ以上、攻撃して位置を知らせてやる義理もない」
「では……」
「うむ。我々はこれより友軍の上陸支援へと向かう」
◇
レムリア湾沖上空
「こちら鳳中隊、敵艦隊を補足した。攻撃準備はできている。オーバー」
『了解した。航空隊の攻撃に合わせて攻撃を開始せよ』
そう言い無線が途切れる。ざあざあと雨音の煩い空を自由自在に飛び攻撃準備を行う。
「だいたいちょー、まだっすか?」
「ああ。もう少し待て。航空隊と同時に攻撃を仕掛ける。いいか、我々の役割はあくまで艦の制圧であって撃沈ではない。マッテオ・ダルーミアの確保のためにここにいる。くれぐれも撃沈しようなどということは考えるなよ」
隊長と呼ばれた男に釘を差された隊員は口を尖らせて不満をブツブツと言っていたが逆らう様子は無く準備に取り掛かっている。
「全く、血の気の多い奴らばっかりだ。こんな部隊作って上も何がしたいんだか……」
海軍特別異能大隊、通称白鷺。
近年、創設された海軍の部隊。人員は60名程度であり全員がランクD以上の能力者だ。加えて全員に新開発された飛行補助魔道具『天空』が支給され長時間の滞空が可能となっている。
継戦能力もさることながら瞬間火力も優れておりこの大隊から繰り出される統制射撃は最新の発展型イージスシステム(仮称)を搭載している艦であっても簡単には迎撃できず直撃すれば装甲のある重巡や一部の戦艦であっても撃沈ないし戦闘不能状態に追い込むことができる。
更に大隊予算は一般的な陸軍の連隊と同等かそれ以上とされている。
非常に優遇された大隊でありそれに恥じない実力の部隊でもある。かつて、ソマリア内戦のPKOに駆り出された際は死者を一人も出すことなく帰還した。
当時と大隊長こそ変わったものの練度は変わっていない。否、更に洗練されている。
「なあ、賭けしようぜ!!」
「お、いいな。何賭ける?」
「キルスコア?それとも……」
「一番、撃破数が少ない中隊の隊長が帰ったら居酒屋奢りな!もちろん大隊長もやりますよね」
「はぁ……」
ただ、見ての通り戦闘狂が多く常に戦いを求めているような輩ばかりなのだ。かく言う大隊長たる芥伽耶もため息を吐くだけで止めるつもりはない。
「分かった。追加で30年物のワインも発注しておいてやろう。破産したくなければせいぜい頑張れよ」
そんなふうにくっちゃべっていると、航空隊からの攻撃が始まった。敵艦隊の対空システムが作動し多数のミサイルと砲弾が飛び交っている。そんな様子を超高空から見下ろしていた大隊は隠蔽状態を解くと艦隊中央に鎮座する中型空母へと突っ込んでいく。
こちらの存在に気付いた艦による幾ばくかの対空攻撃があったが大した効果はなく目下には迎撃に上がろうとしている魔道士や異能者が見える。
彼らが上る前に叩き潰すのが理想だがこのままでは間に合わないだろう。
冷静にそう判断し伽耶は対異能戦闘を指示した。
「対異能戦闘。各自の判断で突入せよ。決して前に出過ぎるなよ!!」
「「「了解!!」」」




