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明日を巡る  作者: 朝日影
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プロローグ

 それは在りし日の放課後だった。

 高校1年の夏、良く晴れた夏の日の午後、四人の男女が楽しそうに花を咲かせながら帰路を辿っていた。


 「なあ、一つ良いか?」


 ふと俺の前に居た遠野樹(とおのいつき)が言う。


 「今年の夏休み、何処かに行かないか?」


 遠野樹の提案に、その隣に居た宮前(みやまえ)眞心(まこ)が楽しそうに頷いた。


 「良いねー!何処に行くのか予定とか決まってるの?」

 「それを今、皆に聞こうとしているんじゃないか!」


 いつも通り遠野樹と宮前眞心の二人から会話が始まって行き、その次に遠野樹が俺達に確認して来た。


 「……そうだな。その時の予定にもなるが、比較的空いている方だと思う」

 「わ、私も同じかな」


 そう答えたのは俺と隣を歩いていた一色(いっしき)いさな。

 俺達の確認を取った遠野樹は『分かった』と言った後に、俺達の顔を見て口を開く。


 「折角、このメンバーで一緒に過ごす夏休みなんだ。色々普段は出来ない事とか沢山して見たいな!」

 「例えば何かな?ウチ的には海とか花火大会とか?」

 「それも良いな。後は──」


 グループのリーダー的存在である遠野樹に、ムードメーカーの宮前眞心。そして活発な二人のストッパーである俺こと東雲晴夏(しののめはるか)と癒し系小動物の一色いさな。

 この四人が高校に入って以来、いつも一緒に居るグループだった。


 「「「「あ」」」」


 それは奇しくも全員同じタイミングで漏らした声だった。

 今日は七月七日。世間で言う所の七夕祭りが開催されていた。


 「そう言えば今日は七夕だったか。如何する?少しやって行くか?」

 「ウチは賛成。面白そうだし、やって行きたいかもー♪」

 「私もやって行きたいな……」

 

 三人がそう言うのであれば、俺も取り敢えず頷いた。

 寧ろ興味は無かったが、誰かと一緒ならやってみる価値はあるかも知れないと思ったからだ。


 「そんじゃ、やって行くか!」


 遠野樹を中心に七夕祭りに参加させて貰い、全員で短冊とマーカーペンを頂いてから机に其々の願い事を書いて行く。


 ――うーん、何て書けば良いんだろうか。


 俺は少し悩みつつ、周囲で書いているメンバーの顔を見た。

 遠野樹、宮前眞心、そして俺が密かに一方的に恋心を抱いている一色いさなへと視線を移していると、ふと一色いさなと目が合う。


 ――やっべぇ!?


 俺は慌てて会釈だけし、そのまま思った事をそのまま書いた。


 ──このメンバーと何時までも居られますように。


 そう書いた短冊を笹に糸を通して結び、綺麗に飾る。

 他のメンバー達も其々のタイミングで笹に飾り、皆は自分の物を見上げていた。


 「他の皆が何を書いたのか気になるんですけどー?」

 「ハハッ!僕……じゃ無くて……俺は見られるのは恥ずかしいから見せたくねぇな!」

 「へぇ〜?なら絶対に見つけてやるんだから!」


 そう言って遠野樹の書いた短冊を探し始めた宮前眞心。

 それを必死に止めようとする遠野樹を見ながら俺と一色いさなは苦笑しながら見つめていた。


 すると、隣に居た一色いさなが俺の目を見て言った。


 「そう言えばさっき、私を見て頷いていたけどどうしたの?」

 「へっ!?いや…何と無く皆を見てたら目が合ったって言うか…別に深い意味は無いんだ……ただ皆とこれからもずっと一緒に居られたら良いなって思ったって言うか何て言うか……」

 「そうなんだ……」


 俺は必死にそう弁解し、取り敢えず納得して貰えたようだ。


 「って事は東雲君が書いた内容ってそんな感じの事なのかな?」

 「……あー、うん。少し恥ずかしいけどそうだな」

 「そうなんだ……けど嬉しいな。私も皆と一緒に居たいと思ってそう書いたから。他の皆も同じだと良いなぁ〜」


 そう言って一色いさなは遠野樹と宮前眞心の方を見て微笑んだ。

 俺はそんな一色いさなの顔を見ては頬を赤くしていた。

 ……だって好きな人と同じ願い事だった嬉しさがあるし、何より彼女が俺と話してくれた事が何より嬉しかったのだ。


 その時だった。

 

 「「あっ!晴夏の見っつけた!」」

 

 そんな遠野樹と宮前眞心の声が同時に聞こえた。


 ――はぁ!?何で俺のが見つかるんだよ!?

 

 一色いさなは俺の顔を見て少し笑いそうになっていた。

 可愛い……じゃ無くて!!


 「……何で俺のが一番最初に見つかるんだ!?」

 「知らないよ。近くにあったのが晴夏のだったんだし」

 「それな。悪いがお前の見させて貰うぜ!」

 「や、止めろォォォォォ!!」


 だが、そんな俺の抵抗も虚しく全員に共有されてしまった。

 は、恥ずかしい……


 「“え”っ!?何か意外かも……クールそうに見えて実は可愛い所あるじゃん!!」

 「それなぁ〜?なぁなぁ晴夏!そんなに俺達の事を思ってくれて居たのか!いっ君さん嬉しいぞ!!」

 「……う、うるせぇ!!」

 

 そんな俺達の様子を見ていた一色いさなは『ぷっ』と吹いた。

 俺達三人は一斉に一色いさなの方に視線を向けると、彼女は可笑しそうに笑っていた。


 「あはははっ!!やっぱり皆と一緒に居ると楽しいな!それと余り東雲君を弄らないであげて?私も同じ事を書いてるんだ」

 「え!?いさなも!?いさなも可愛い所あるじゃーん!」

 「なーんだ。全員同じ事しか書いてねーじゃん!」


 俺達全員の短冊を見つけたのか、遠野樹はそう言った。

 な、何だよ……人を散々弄っておいて他の皆も同じなのかよ。


 「「「「……あはははっ!俺達/私達仲良しか!!」」」」


 結局、俺達は同じ事を書いていたと言う事で正直に想いを吐露した。


 「……正直、今の俺達が一緒だって事が奇跡みたいなもんで永遠にこのまま一緒に居られたら良いなって願いちまう」

 「そうだな。俺達は腐れ縁でずっと一緒に居るけど、これからもずっと何があっても四人全員で居たいよな」

 「……うん。きっとこれから色々な事があるとは思うけど、出来ればこの関係だけは維持していたいね」

 「大丈夫だと思うよ。だって私達は仲良し四人組だもんね」


 俺達はいつの日か約束した“仲良し同盟”と言う名の絆の関係。

 小学校の時に俺と遠野樹、中学で一色いさな、そうして高校では宮前眞心を加えた四人が今の関係を結ぶモノであった。


 ――何があろうと四人で相談し、四人で解決して行く。


 それが俺達を繋ぎ止める確かな友情であり、これまで様々な問題を皆で解決して来た盟友であり、仲間であり、友達でもあった。

 そんな不思議な関係が俺達であった。


 「そんな“仲良し同盟”の盟主様は何か一言はありません?」

 「……そうだな…盟主のいっ君さん?此処でカッケェ事を言って下さいよ」

 「あはは…盟主様!」

 「お前ら……!」


 盟主の遠野樹は少し困った表情をしつつも、直ぐに笑みを浮かべると人が居ない所に移動し、コソコソと四人で近付く。


 「我等は仲良し同盟!」

 

 先ず、盟主の遠野樹が手を上げるとそう言い、俺に移る。


 「……第一に皆、仲良しである事!」


 俺の次に一色いさなが恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらもノリに乗って言う。


 「だ、第二に……何かあれば皆で相談し、解決する事!」


 一色いさながそう言った後、宮前眞心がノリ良く続けた。


 「第三に今を楽しみ、希望を持って明日を生きろ!」


 俺達は一周して言い終わると、盟主の遠野樹が口を開く。


 「盟約に誓い、我等は対等に在り続ける事を誓う!」

 「「「「アッシェ◯ッテ!」」」」


 何処かで聞いた覚えのある言葉を言ってから俺達は気恥ずかしくなって一斉に顔を赤くする。

 ……こんな小学生みたいな事をする遠坂樹もそうだが、それに乗る俺達も同類だよなぁ。


 「なーんて事をしたが……俺達の友情は不滅だから平気だな!」

 「おう」「うん」「……だね」


 遠野樹の言葉に俺達は其々返事したのだった。

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