カージむ
フウワケ有余町には時々雲が降る。
見渡せば街のどの家も白い色の壁をしてる上、濃霧が頻繁に起きる気候を説明するときに、町民はよくこの表現を使うのだ。
「バツーカの安全装置外してる?」
ミカはこれで三度目の確認をする。
「わかってますよ。敵が来たら引き金を引くだけでしょ?」
サトシの軽い返事に、ミカは長めの息を吐いた。
刀槍高等学校、特別処理委員会に所属する2人が狩るのは、【ハム】である。
勿論、名前そのままのような可愛らしい存在ではないが、この表現が最適だと2人は教えられた。
「先輩って、過去何キルしました?」
霧の中から現れる赤い化け物から地域を保全するため、有余町の各地区の高等学校には、同様の委員会が複数存在する。
そして今日のような濃霧には、互いに連絡を取り、協力して見回りと狩猟を行う手筈になっていた。
「三十、、、四だったかな?」
「うわすっげ!シリアルキラー級じゃないっすか!」
ばきり。
言い終わるか否かのタイミングで、前方の十字路から音がする。
見るとおよそ3メートルはあるような、赤い肉の塊が姿を現した。
目や口、手足もなく、それはスーパーで売っているブロック状のソレが巨大化したような見た目をしている。
「撃って!」
掛け声と同時にサトシの持っていた筒状の武器からは弾頭が発射された。
それは確かにハムのいる方角に発射され、まもなく数十センチ横を挨拶するように通り抜けていく。
「あっ」
サトシの言い訳を待たずして、肉は近づいてきた。