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0話 始まりの物語
幼い頃、画面の中の英雄に憧れた。
暗い部屋の隅をちかちかと照らした光。煩いほど胸の奥を叩いた脈動。抑えの効かなかった体中の震え。
画面の中、稲妻の様に走った美しい刃の閃きと、轟いた龍の断末魔。
全長二十メートル程もある白い巨体が大地に沈み、数秒の沈黙の後、二人の冒険者が満身創痍ながらも拳を掲げた。
「かっこいい……。かっこいい。かっこいい!」
少年は感嘆の声を上げた。
数え切れない弾幕で溢れ返った画面の向こう側へ、キラキラと煌めく彼等に喝采のコメントを送った。
それが、ずっと攻略不可能とされていた迷宮——『起源ノ迷宮』の三十六階層攻略の瞬間だったと少年が知ったのは、ずっと先の話だ。
幾年の時が経とうと、決して色褪せる事のない記憶。
暗い部屋の中、少年が立ち上がるにたる強い光に焦がされた起源にして原点。
これは、二人の冒険者、否、二人の配信者に憧れた一人の少年の物語。
否——。
——英雄の誕生を垣間見る物語。