表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/34

虚ろなる死王の試練2

読みやすいように虚ろなる死王の試練を分けます

谷の深部は、まるでこの世の理が届かぬ“死の底”だった。


俺とカイは石碑の前を離れ、辺りを探索していた。濃霧は視界をじわじわと奪い、時間感覚さえ狂わせる。だが、それもまた《NeoEden》が生み出す“現実以上の世界”の一部だ。


「この空間、まるで“生きてる”みたいだな」


「うん。プレイヤーの行動に応じて、空気や霧の濃度が変化してるように感じる。動的環境AI……さすがに手が込んでるね」


会話を交わしながら進むと、ひときわ異質な気配を放つ場所が見えてきた。


そこは小高い丘の上にぽつんと立つ、朽ちた祠だった。


骨で組まれた小塔が周囲に点在し、祠の中心には青白い炎がゆらゆらと燃えている。誰が灯したのか分からぬ炎。それだけで十分、不穏だった。


近づいた瞬間──空気が震えた。


『死者の試練を乗り越えよ』


虚空から響いた声が祠の周囲に結界を展開し、黒い霧が地面を這う。そこから、数体のアンデッドナイトが浮かび上がった。先ほど倒したものより、明らかに重厚で、禍々しい。


「見ろ、あのオーラ……通常種とは比較にならない」


「強化個体か。しかも数体同時に……やれってんだな、上等だ!」


俺は即座に〈身体強化〉と〈熱源消失〉を発動し、気配を断って空中へ跳ぶ。そこからファントムクラッチで一体を引き寄せ、強制的にバランスを崩す。


「今だ――サヴェージ・スティング!」


地を這うような低空からの突進一閃。敵の腹部を貫き、砕けた骨が宙を舞う。


だが、他のアンデッドは即座に包囲に入った。後方のカイが矢を放ち、俺の背後をカバーする。


「いい動きだ、カイ!」


「そっちもね、だが油断しないで。こいつら、何か企んでる」


それは直後に明らかになった。


残った三体のアンデッドが突如、祠の中心に向かって駆け出す。まるで──何かを“捧げる”かのように。


「まずい!あれを阻止しろ!」


俺は〈短距離転移〉で一体の前に出て、剣を振るった。斬撃が骨を砕き、霧を裂く。だが、別の一体が炎に手をかざしかける……!


「間に合えっ!」


再転移。時間ぎりぎりで二体目を阻止。残る一体もカイの矢が心臓部を貫き、崩れ落ちる。


静寂が戻り、青白い炎が一瞬、空高く燃え上がった。


『資格の一部を得た』


システムウィンドウが開き、俺のインベントリに“青白い紋章”が追加された。


《死者の紋章:資格の断片1/3》


「……やっぱり、これが“鍵”ってわけだな」


「あと2つ、同じような試練があるのかもね」


「なら、全部集めて“虚ろなる死王”を起こしてやるさ」


谷の奥は、まだ霧に沈んでいる。

どうか高評価とリアクションをお恵みください上位者の皆様。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ