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虚ろなる死王の試練1

誠に申し訳ございません。掲示板のテンプレートができていないので物語を進めときます。これがひと段落区切りがついたら掲示板にします。

5/9に修正

──シェルファ 宿場──


夜の宿場に足を踏み入れた瞬間、五感が一斉に刺激される。温もりある木造の梁が軋み、琥珀色のランプが柔らかく空間を照らし出す。酒と香辛料、焼き肉と蜜酒の香りが入り混じり、耳には音楽と談笑、そしてグラスが重なる音が心地よく響いていた。


《NeoEden》。ただのゲームとは思えない──いや、これは“もう一つの現実”だ。


「……やっぱ、すげぇな」


俺──シュウユは、改めてこの世界の完成度に感嘆する。感触、重さ、香り、味。何一つ妥協がない。ここでしか味わえない“体験”がある。それが、このゲームを遊ぶ者たちを虜にしてやまない理由の一つだ。


そんな中、目当ての人物を探す。目線を走らせた先、カウンターの片隅に見覚えのある後ろ姿を見つけた。


初心者装備。モノクル。背中には小ぶりな弓。──だが、俺は騙されない。


「よう、カイ。性格のひねくれ具合は相変わらずで何よりだ」


その言葉に、ゆっくりと男が振り返る。皮肉めいた笑みを浮かべたその顔──昔馴染みの“あだ名:カイ”だった。


「久しぶりだね、シュウユ。誉め言葉ありがとう。まずは一つ、言わなければならないことがあるんじゃないかい?」


「……アノ、エト、ヒサシブリデスネ?」


「今、何時だと思う?」


「……ニジュウジデス」


「つまり、言うべき言葉は?」


「オクレテシマイ、スミマセンデシタ」


「よろしい。罰1だね」


「やっぱりかあああああああ!!!」


このやり取り。変わらないな、カイは。


──カイ。昔から一癖も二癖もあるプレイヤーで、見た目とは裏腹に狡猾さと情報収集能力に長けた、いわば“策略家”だ。だが、信頼もできる。表裏が明確で、約束は必ず守る。


「それで、今日の“罠”はなんだ?」


「罠じゃないよ。情報さ。君が食いつくであろう極上のやつを用意してある」


「……ふむ」


カイがテーブルに投影したマップには、シェルファ東の山岳地帯──“死者の谷”が赤くマークされていた。


「通常レベル30以上推奨の危険地帯だ。その奥にね、隠しダンジョンがある。最深部に、《虚ろなる死王》と呼ばれるボスが潜んでいる可能性がある」


「根拠は?」


「アンデッド系レアドロップから得られた“日記の断片”だ。その中に『王は悼む者を待つ』と記されていた。加えて、洞窟入口に立つ石碑には──」


『死者を悼む者のみ、虚ろなる死王に挑む資格を得る』


「……挑む者、じゃなく“悼む者”か。物理的な力じゃなく、行動か感情に関するフラグ条件ってわけか」


「そういうことだ。条件の解明と攻略には、私一人では心許ない。君の戦術と機転があれば、突破の目も見える」


「なるほど……報酬は?」


「第一フィールドに存在する“未公開エリア”の座標。そして、死者の谷にある隠しレベリングスポット。一定条件を満たせば、爆速で経験値が稼げる」


「ほぉ。確かに魅力的だな……よし、乗った」


カイと硬く手を握り交わし、俺は武具とアイテムを整え、シェルファの東──死者の谷へと出発する。


──


風が冷たい。地形は険しく、砂と岩が混じる乾いた地面が足元を滑らせる。昼の陽光さえも霞み、谷の入口は“黒く濁った口”のように大地を開いていた。


「ようこそ、死者の谷へ」


カイの声が、谷に沈んだ空気を切るように響く。


進むごとに霧が濃くなり、視界が狭まっていく。周囲の温度も下がり、吐いた息が白く曇る。


足元には散乱する白骨。壁には朽ちた剣と盾。気がつけば、空気そのものが“死”の匂いを帯びていた。


「おい……」


青白い光が一つ、浮かぶ。霊魂か。だが、こちらに向かってきたわけではない。ふわふわと漂い、しかし距離を詰めすぎると──


ピリッ。


「……呪いか」


「直接攻撃はしない。だが、呪いでステータスが削られる。視覚、聴覚、そしてMP回復速度。気をつけて進め」


「了解」


足を進めるごとに、ガシャリ、ガシャリと金属の音が近づいてきた。


「来たか……!」


霧の中から姿を現したのは、朽ちた鎧を身に纏う“アンデッドナイト”。巨大な剣を肩に担ぎ、蒼く光る目がこちらを捉えている。


「下がれ、カイ。こいつは俺がやる」


「お任せするよ」


その瞬間、俺は駆けた。剣の振り下ろしを〈短距離転移〉で避け、一瞬で背後を取る。距離を保ち、ファントムクラッチで片脚を引き、体勢を崩す。


「――サヴェージ・スティング!」


鋭く、深く。一撃が敵の核を突き抜ける。瘴気が噴き出し、アンデッドはくぐもった呻きをあげて崩れ落ちた。


「やるじゃないか、シュウユ」


「こんなの、まだ序の口だ」


そう言いながら、奥へと進んでいく。だが、そのとき、視界の先に“石碑”が立っているのを見つけた。


近づく。風がざわめく。その文字が、霧の中に浮かび上がるように現れた。


『死者を悼む者のみ、虚ろなる死王に挑む資格を得る』


「……やはり、ここがその扉か」


カイが静かに頷く。


「だが、何も反応がない。おそらく、この石碑を起動させる“条件”がどこかにある」


「つまり、探すしかないってわけだ」


風が、霧を巻き込んで渦を成す。死者の谷は、まだその全貌を見せてはいない



少し長めの戦いを書いていきます。うまくできるかな?

どうか高評価とリアクションをお恵みください上位者の皆様。

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