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異端の創造1

今日なんとか間に合った。今日も読んで頂き誠にありがとうございます。

勝負は終わった。


ケルドン派の工匠たちが渋々ながらも判定を受け入れ、広場にざわめきと評価が渦巻いていた。


勝者は、アルス。

……そして補助クラフターとして彼を支えた、シュウユ。


周囲の視線が賞賛と驚愕に変わっていく中、アルスは人波を抜け、シュウユの前で足を止めた。


「ありがとう。お前がいなければ……ここまで来れなかった」


そう言って、彼はひとつの《クラフトデータ・キー》を差し出してきた。中には、例の技術――


《ノンフォージ・インプリント》


が封じられていた。


「……受け取ってくれ」


シュウユがデータを受け取った瞬間、視界にシステムログが走る。


《新規クラフト方式を獲得:ノンフォージ・インプリント》

《リエンザ工匠評判:大幅上昇》

《アルスとの親密度:親愛+》


アルスは深く息を吐いた。


「この技術は……もともと、“あっち側”では禁じられた手法だったんだ」


「“あっち側”?」


「まあ、気にするな。ここで言えば“伝統派”だ。あの人たちは“秩序ある創造”を信じてる。

だけど、俺は――“創造そのものの可能性”を信じてる」


彼の視線が、一瞬だけ遠くを見た。


「……この技術を使えば、素材そのものの“声”が聞こえる。形や枠に縛られず、素材が望む形を作ることもできるようになる。

ただし、それはときに……“異端”と呼ばれる。」


「異端の創造、ってやつか」


「そうだ。“禁じられた創造”、とも呼ばれてる」


静かな炎のような情熱が、アルスの言葉に込められていた。


シュウユは、手にしたばかりのデータキーを見つめた。


そこに込められていたのは、常識を踏み越える可能性――

そして、まだ誰も知らない“創造の未来”だった。


「……やるさ。どうせなら、誰も知らないほうが面白い」


アルスが目を細めて笑った。


「やっぱり、君はこっち側の人間だったな」


クラフト勝負の喧騒が過ぎ去った後、シュウユとアルスはリエンザ工街の奥にある、ひっそりとした作業小屋へと向かっていた。


人の気配が遠ざかるにつれ、溶鉱炉の熱も、喧騒も、まるで別世界のように思える。


「どこなんだここ?」


「俺が……というか、親父が昔使ってた工房だ。今じゃほとんど俺専用みたいなもんだけどな」


無骨な鉄扉を開けると、室内には使い込まれた作業台や、試作装備の残骸、魔力を帯びた触媒石などが雑然と並べられていた。


どこか“研究室”にも似た、混沌とした空間。


「……他に見せられる場所がなくてな。静かに話したい時は、ここに来ることにしてる」


アルスは軽く手を振りながら、部屋の隅にある椅子に腰掛ける。シュウユも向かいに座った。


工房に満ちる、魔力の残滓。微かに震える空気。その中で、アルスの目がふと真剣になる。


「君のクラフト、普通じゃない。いや、異常だ」


「……急に物騒な言い方だな」


「褒め言葉だよ。少なくとも、ここで“普通”って言われるよりはな」


アルスは笑ったあと、そっと懐から一枚のカードを取り出す。それは、クラフト技術者にしか配布されない“特殊技術保持者証”。


「俺がさっき渡した《ノンフォージ・インプリント》の技術。あれは、本来なら“研究段階で破棄された技術”だ」


「なんでだ?」


「危険、“素材そのもの”の情報に干渉するからだ、俺は、これを“異端の創造”と呼んでる。伝統派からは完全に敵視されてるけどな」


そして、視線をまっすぐシュウユに向けた。


「本当に君が、“この技術を扱える器”かどうかは……これからの“結果”で証明してくれ」


その声に、どこか祈るような響きがあった。


アルスはわずかに肩をすくめながら、手のひらに光のパネルを展開した。

パネルには、精緻な製造式と、複数の素材構成図。


「さあ、見せてくれ。君が選んだ“素材”と、“形”を」


シュウユの視界に、クラフト画面が浮かび上がる。


“異端の創造”の扉が、いま静かに開かれようとしていた――。



どうか高評価とリアクションをお恵みください上位者の皆様。


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