技術披露戦
2話いけるかも
工街リエンザ中央広場。
その心臓部には、工匠たちの威信がぶつかるための「技術披露戦」専用の舞台――《鋼の環亭》が設置されていた。
円形の広場中央に、溶接済みの鋼鉄板を並べただけの無骨なフィールド。
周囲にはすでに数十人の観衆が集まり、ギルドの職人やプレイヤーがざわつきながらその瞬間を待っている。
「緊張してきたな……」
アルスが、素材が詰まった木箱を抱えながら呟いた。
その背中を、シュウユは軽く叩く。
「大丈夫だって。俺が付いてんだろ?」
「……そうだな。頼りにしてるぞ」
彼は深く息を吐いた。
その一方、対戦相手――伝統派の筆頭であるケルドン親方は、巨大なハンマーと共に堂々と現れた。
古風な鍛冶服に、分厚い前掛け。腰には金属鎖で結ばれた三つの工房印が揺れている。
「ようやく現れたか、小僧。貴様の“お遊び”に終止符を打ってやる」
「こっちは本気なんで、“遊び”で潰される気はありませんよ」
アルスが真っ直ぐに言い返した。
◇ 製造パート:準備開始
披露戦では、“制限時間内での即時製作”が条件となる。
使用素材、製造技術、完成品――
そのすべてが審査対象であり、リエンザ工街の《技術評価会》に所属する10名の至工匠が審査員を務める。
「素材、出すぞ」
「おう!」
翠晶鉱 ×2
ルミナイト片 ×1
雫結晶 ×1
響きの果実(核部) ×1
静触結晶 ×1(カイが昨晩裏取引で入手)
素材を受け取ったアルスは、光を灯した加工台へと一歩踏み込む。
《ノンフォージ・インプリント》発動。
彼の手元に、淡く青い魔力の輪が展開される。鉱石の分子構造が解析され、空中に“焼き写し”のような設計図が浮かび上がる。
「これが、“叩かない”鍛冶か……」
カイが隣で見守りながら、小声で感嘆した。
その間も、ケルドン親方の工房は伝統通り、火花と轟音を立てて物理的な鍛造を行っていた。
「どう見てもこっちの方が派手だな」
「でも、“熱”じゃ再現できない領域もある……はずだ」
◇ 最終品完成──時間ギリギリ
《魔鋼指環》
分類:アクセサリー(リング)
効果:
魔式詠唱速度 +20%
MP回復速度 +小
特殊効果:魔力共振 → MPが最大のときに魔式を発動すると、次の魔式の威力が1.4倍になる(ただし次のMP消費は+25%)
仕上がったのは、薄く鋳造されたリング。中心には響きの果実のコアが埋め込まれ、蒼く淡い音を鳴らしている。
それは戦うために作成されたとは思われないほどの繊細の細工でまるで芸術品のようだった
「できた……!」
アルスが震える声でリングを掲げる。
対してケルドン親方は
「そこまでできるのか...しかし!これが製造っつうんだ」
《鍛鋼絶槍》
分類:長柄武器(戦槍)
クラフト方式:重圧鍛接鍛造(ハンマーフォージ・コンプレッション式)
素材構成:
純化鋼鉄柱(リエンザ産)
強化重芯鉱
炎化炉灰
鋼精の髄石(伝統式燃焼で不純物を極限まで除去)
特殊効果:攻撃を3連続で命中させると「強撃」状態に入り、次の一撃のダメージが2.2倍になる
「評価タイムだな」
10名の評価者たちが一人ずつ評価札を掲げていく。
1……2……3……
カイが数えながら息を呑む。
──6対4。
《勝者:アルス工房》
その瞬間、歓声とどよめきが広場を包み込んだ。
アルスがその場で膝をついた。
「……俺、勝ったんですね」
「おう。そうだ、お前がやったんだ」
シュウユはそう言って手を差し出す。
その背後――
一人の評価者が立ち上がり、静かに言った。
「アルスよ。そなたの技術、リエンザにおいて正式登録とする。加えて、“技術革新者”の称号を与える」
システム通知が鳴り響く。
《称号獲得:技術革新者の庇護者》
▶ 効果:クラフト時、特殊なものができる可能性が微増/製造時、特殊効果が付与されやすくなる
どうか高評価とリアクションをお恵みください上位者の皆様。




