技術の火花、導く手
明日1話しか投稿できないかも...
「さて、話してもらおうか。どうやって勝つつもりだ?」
広場の喧騒を離れ、シュウユとカイ、そしてアルスは工街の裏路地にあるアルス工房へと案内された。
アルスは、周囲を気にしながら入口の鍵を閉めると、焚きつけるように熱のこもった眼差しで口を開いた。
「俺が使ってるのは、《ノンフォージ・インプリント》って技術なんだ。“鍛造”しない、つまり“叩かない”で武器を仕上げる」
「打たないで作る?……どうやって?」
「結晶構造を崩さず、素材の“原子配列”に直接干渉して形を作る。古代魔鋳技術を応用した、一種の転写術みたいなもんだ」
カイが目を丸くする。
「それはとんでもない技術なんじゃないか?」
アルスが言葉を継ぐ。
「ただ、問題は“再現性”と“信頼性”。だからこそ、親方たち――伝統派の工匠たちは認めようとしない」
「その親方、あからさまにお前潰しにかかってたな」
「……ええ。俺の親父が、もともと工街での地位を持ってて。でも、事故で亡くなった後、ケルドンが立場を引き継いだ。だから、俺が戻ってきたのが面白くないんだと思う」
「なるほどな」
シュウユは視線を少しだけ鋭くした。
「で、その“ノンフォージ・インプリント”ってやつ……どれくらいヤバい代物が作れるんだ?」
アルスは一瞬言葉を迷ったが、静かに棚から試作品の件を取り出して差し出した。
それは、黒曜石のように光を呑み込む刃だった。だが、表面には微細な魔紋が刻まれており、シュウユが指を近づけると、ほんのわずかに“魔力の抵抗”を感じる。
分類:片手剣(魔導結晶刃・試作)
▶ 特殊性能:
《転写魔導核》:攻撃時に敵のMP系リソースを一定確率でコピーし、次回の魔式に付与可能(属性・挙動も模倣)
→コピー内容によっては、一時的に別職業の上位魔法すら使用可能。
→一戦につき最大3種類まで保存。コピー効果は戦闘終了時にリセット。
《加速ブレード構造》:通常攻撃を一定数繰り出すたびに、攻撃間隔が自動で短縮(最大で-60%)
→ただし、“過加速状態”になると反動で10秒間のデバフが発生。
《界穿斬》:敵の魔力障壁、バフ、幻影を無視して直接HPにダメージを与える特殊処理攻撃が一定確率で発生
→確率はLUCに依存。成功時は専用の演出エフェクトが入る。
▶ 副作用・リスク:
《暴走干渉》:魔力制御に失敗した場合、攻撃対象が強制的にシュウユに“記録”され、一定時間後に幻影として再出現し襲撃(HP1/5・攻撃力50%の再戦型イベント)
「で、どうする?」
「決まってんだろ」
シュウユはニヤリと笑った。
「これはもう、勝つしかねぇな。あと……勝ったら、こいつの技術、全部吸わせてもらう」
「ゲスいなあ、お前」
「お互い様だろ。向こうだって、俺を“利用”しようとしてんだからな」
アルスが一つ咳払いをして、何かを取り出した。
「明日正午、技術披露戦の会場で勝負が始まる。それまでに必要な素材を用意したい。……これがそのリストだ」
【素材リスト:ノンフォージ拡張構成用】
・翠晶鉱 ×2
・ルミナイト片 ×1
・雫結晶 ×1
・響きの果実の核部分 ×1
・特級エネル結晶×1
「手持ちの素材だけじゃ足りないんだな」
「ああ。……あと一種だけ、どうしても街でしか手に入らない素材がある。“静触結晶”ってやつです。普通の店じゃ扱ってない、特殊店の裏ルート品で……」
「そっちは私が動こう」
カイが手を挙げる。
「情報収集と裏取引は私の得意分野だよ」
「頼もしいな」
シュウユが笑い、窓の外を見る。もう日は暮れ、リエンザの空に金属煙がゆっくりと流れている。
勝負は明日。
新たな技術を巡る火花が、いま再び火蓋を切ろうとしていた。
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