強化・作成、掘り掘り1
すみません、新章考えるのに時間がかかりました。これからどんどん投稿していきます。
──シェルファ、町外れの鍛冶屋──
「よぉ、おっちゃん。帰ってきたぜ」
俺――シュウユは、扉を開けながら声をかけた。炉の奥で黙々と槌を振るっていた鍛冶屋の男が、ちらりと顔を上げてこちらを見た。
「ほう……また来たか。今度はどうした?」
「虚ろなる死王を倒してきた」
鍛冶屋の手が止まる。その目が、静かに、だが確実に俺の手元を射抜いた。
「……ほう。見せてみろ」
俺は懐から、死王討伐で得た素材を取り出す。
《死王の黒鱗》《虚ろなる霧珠》《呪詛封じの環》《封王の欠片》。
鍛冶屋はそれらを一つずつ手に取り、陽の光にかざしながら吟味した。
「どいつもこいつも、“まともじゃねぇ”な」
「そりゃ、相手が“まともじゃない”王だったからな」
鍛冶屋は鼻で笑い、素材を作業台に並べたまま、腕を組んだ。
「どうする。こいつら、並の使い方じゃ効果も引き出せねぇぞ」
「メイン武器の《氷晶の片手剣・フロストリーパー》をベースに、こいつらを組み込んで強化してくれ。あと、補助用のアクセサリーも一つ頼みたい」
「なるほどな……“特異仕様”ってやつだ。やれるが、少し時間をもらう。特にこの“黒鱗”と“霧珠”は、魔力の性質が厄介でな……精錬段階で暴走する可能性もある」
「危ない橋は慣れてる。頼むよ」
鍛冶屋は顎で炉を指しながら、短く笑った。
「任せとけ。“お前用”に仕上げてやる」
「ついでになんだが――」
「なんだ、追加注文か?」
「いや、ちょっと鉱山に行きたくてな。許可証とツルハシ、貸してくれ」
「……鉱山、ねえ。今さらどうして?」
「前にちょっと気になったんだ。“ああ、ここなら鉱石掘れるな”って。まあ、言ったら思い付きだが、行ってみたいんだよ」
鍛冶屋はしばらく考え込み、それからカウンターの引き出しから、分厚い手帳と鉄製のタグを取り出して俺に手渡した。
「これが坑道の許可証。使い終わったら返せ。ツルハシはそこの棚から好きなの選べ。変なもん振り回すなよ?」
「真面目に掘るつもりさ」
俺は一番持ちやすそうな中型ツルハシを手に取り、手のひらで重さとバランスを確かめる。
「……お、これ。素直に振れるな。妙に軽いし、扱いやすい」
「それは《採掘補助》っていう地味な魔力付与が施されたツルハシだ。“掘る”ためだけに作られた、誠実な職人道具だな」
「いいね。借りていくよ」
「装備の完成には少し時間がかかる。鉱山に行って戻ってくるにはちょうどいいだろう。無茶はするなよ」
「俺が無茶しないタイプに見えるか?」
「……そうだな、釘を刺すだけ無駄か」
俺はタグとツルハシを腰に収めると、鍛冶屋に軽く頭を下げた。
「最高の一品、頼んだぜ」
「おうよ」
──
店を出て、俺は街の出口に向かって歩き出す。町の外れから見える丘の向こう、遠くに鉱山の入口が霞んでいた。
どうか高評価とリアクションをお恵みください上位者の皆様。




