虚ろなる死王の試練4
《魂刈りのレヴナント》が空間を裂くように現れた瞬間、祠の内部に満ちていた霊気が一層濃くなり、空気そのものが震えを帯びた。
その異形は半実体、半霊体──黒煙のように揺らめく輪郭の中、怨念のような瞳がこちらを捉えて離さない。手にした大鎌が闇そのものを吸い込むかのように歪みを生み出している。
「シュウユ、気をつけて。あれ……通常の攻撃が通らないよ」
「見れば分かる。こっちの剣がすり抜けちまった」
レヴナントが鎌を振るう。空間が割れたかのように、真横に黒の衝撃波が走る。俺は咄嗟に〈短距離転移〉で回避。次の瞬間、地面が裂け、黒い霧が吹き上がった。
「クソッ……!あの水晶が力の源か……?」
カイが叫ぶ。
「そう!祠の中央、あの水晶がレヴナントと同調してる。あれを叩けば、実体を引き出せるはずだ!」
「任せろ!」
俺は魔力を集中させ、〈空中歩行〉を展開。一気に上空へ跳躍し、水晶の上空から転移して真下に落下。
「貫け……!」
《サヴェージ・スティング》が水晶へと突き刺さる。青白い光が一閃し、衝撃とともに霊気が爆発する。水晶に亀裂が走った瞬間、レヴナントの身体がぐらついた。
「今だ、実体化してる!」
カイの矢がレヴナントの右肩に突き刺さる。怨嗟の叫びとともに、鎌がこちらを狙う──
「行かせねぇよッ!」
再転移で横に躱し、右脇腹から斜めに剣を突き上げる。
「ファントムクラッチ……!捕まえたぞッ!」
魔力の手がレヴナントの背から現れ、動きを封じる。その隙に、カイが一気に三本の矢を連射。それぞれが狙い澄ましたように、レヴナントの胸部・喉元・額を撃ち抜いた。
「あと一撃……!」
「終わらせるッ!」
俺は最後の魔力を刃に込め、蒼く光る剣を構える。足元に魔法陣を展開し、加速。
「《疾翔》──《転移強化》──《スティング・ゼロ》ッ!!」
空間が一瞬凍り、次の瞬間にはレヴナントの眼前へ。振り下ろされた剣が、まっすぐにその心核を貫いた。
「うおおおおおおおおおおっ!!!」
光が炸裂し、レヴナントが断末魔の咆哮を上げながら爆散。祠の中の霊気が一気に霧散し、静寂が訪れる。
──『試練を乗り越えし者よ、資格を授けよう』──
再び響いた声と共に、青白い紋章が浮かび上がり、俺のインベントリに収められる。
《死者の紋章:資格の断片2/3》
「……やったな」
「うん、ようやく二つ目か……でも、もう疲れたよ。精神的に」
ふたりは祠を後にし、沈黙の谷をさらに奥へと進む。
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