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第14話 弟子入り

『爺さん、良くやったな! お疲れさん』


「う、うむ。久々に大技を使ったわい。できるだけ周りに被害を出さない魔法の中で、最も魔力の消費が大きい魔法となれば、限られてくるからのう……。じゃが、王都には大きな被害が出たじゃろうな」


『……もしかして、冠水しているところもあるかな?』


「うむ、冠水した影響で疫病が出るかもしれんな……」


『魔法でなんとかならないのか?』


「流石に、浄化魔法で王都全体を浄化させるほど魔力を使うのは現実的ではないのう。手分けして局所的に浄化魔法を使うくらいはできるが。あとのことは王国の沙汰を待つだけじゃな」


『すまない! 爺さんとクリスに迷惑を掛けて本当に申し訳ない!』


「いやいや、謝罪を受けるようなことではない。むしろ、こちらが礼を言うほどのことじゃよ。魔素が枯れた儂が再び大魔法を使えたのじゃからな! ホッホッホ!」


『魔素が枯れる? 一体どういうことだ?』


「うむ。先ほども話した通り、人は一定の魔素を持って生まれてくる。その量は血筋によって異なるが、魔素を多く持っている者からは、魔素を多く持つものが生まれやすい」


『それはさっき聞いたな』


「じゃが、人の持つ魔素には限りがある。つまり、魔素は使えば使うほど減っていくものなのじゃ」


『えっ!? それじゃあ、爺さんが宮廷魔法師を辞めた理由はもしかして……』


「うむ、儂の魔素の大半が尽きたせいじゃな。まぁ、生活する分には困らぬくらいは残っておるが」


『そんな……』


「これはすべての魔法使いの生涯と同じでの、宮廷魔術師とて変わらん。魔素が尽きるまで活動し、魔素が尽きたら終了じゃ。その後は後進の育成に尽力することが多い。儂も多くの弟子を育てた」


『生まれ持った魔素の量を超えて魔力を作り出すことはできない。それって、魔素が尽きた魔法使いは必要とされないってことなのか?』


「そういうことじゃ。じゃから、儂も宮廷魔法師を辞したのよ」


『そういうことか……』


「クリスは儂よりも遥かに多く魔素を持っておる。そして、持っている魔法スキルは儂よりも少ない。間違いなく、長く活躍できる魔法師になるはずじゃ。儂も今後の活躍が楽しみよ」


「お師匠様……」


『なるほどな。だが、そんな爺さんに悲報、いや朗報か? 俺は新たなスキルをふたつ獲得した。それは魔力供給と魔素吸収だ。魔力供給は文字通り俺が持つ魔素から作られた魔力を使用者に供給するものだと思われる。つまり、魔素が尽きた爺さんも再び大魔法が使えるようになったわけだ』


「なんと、そのようなことがっ!?」


『そして、もうひとつのスキルが魔素吸収で、周囲から魔素を吸収するというものだ。魔素ってどこにでもあるんだろ? 現に、今も吸収できているし。恐らくは魔素を持つ人や物があればあるだけ、俺も魔素を吸収することができるはずだ。つまり、俺は魔素が枯渇しない身体になったというわけ。どうだ、これなら再び爺さんは宮廷魔法師に返り咲くこともできるだろう?』


「周囲に存在する魔素を吸収できるじゃと!? そ、そのような、そのようなことが可能なのか!?」


『あったり前田のクラッカーよ。爺さんだってまだまだ老け込む歳じゃないだろう? 俺がサポートするから、また宮廷魔法師になればいいじゃん!』


「……それが本当ならば、嬉しい限りじゃ。じゃが、クリスはどうする。儂も再び宮廷魔法師に戻れるのなら、戻ってみたい。じゃが、弟子のクリスを放っておくわけにはいかん」


『それなら、クリスはこのまま弟子でいいんじゃね?』


「はぁっ!? 現役の魔法師は弟子を取ることを許されておらんのじゃぞ!?」


『それってこの国の法律で定められてることなのか?』


「……いや。じゃが、この国の慣習にはなっておる」


『だったら、そんな慣習は気にすることはない。爺さんは一度魔素が枯渇して宮廷魔法師の職も辞したんだろ? その後、クリスを弟子にしたわけだ。ちゃんと手続きは踏んでいるじゃないか。今回、偶然枯渇していた魔素が再び戻ったということにすれば、クリスを追い出せなんていう者はいないはずだ。違うか?』


「……むぅ」


『それに、せっかくここまで育て上げた可愛い弟子を放り出したくはないだろう? クリスだって爺さんと離れたくはないはずだ』


「何を悩まれているのか分かりませんが、私のことなど気にせず宮廷魔法師として復帰してください! 私はお師匠様の下で十分に学びました。これからは一人の魔法師として生きて参ります!」


『健気じゃないか、クリスは。爺さんはこれでいいのか?』


「…………分かった。儂も覚悟ができた。王国中のすべての魔法師を敵に回そうとも、今後もクリスを弟子として扱う! クリスを立派な魔法師に育てるのが儂の最後の仕事じゃからな!」


『よく言ったぜ、爺さん!』


「そんな……。お師匠様、本当によろしいのですか……?」


「うむ、構わぬ。あの方を除けば、クリスが儂の最後の弟子じゃからな!」


「……そう言って頂けるのはありがたいのですが、先ほどユーマ様に直接魔法を教えると仰られてましたよね? そうなると、ユーマ様が最後の弟子となるのではないですか?」


「そ、それは言葉のアヤじゃ! 今はそんなこと気にするでない!」


「それに、先ほどの魔法で王都が水浸しになってしまいました。あれが急激な天候の変化などと考える者は少ないでしょう。多くの者は魔法によるものと考えるはず。そして、あのような魔法を扱える者は王都にただ一人しかおられません。つまり、お師匠様に何らかの問い合わせがあるはずです!」


「しかし、あれくらいならば他の魔法師にもできるじゃろう?」


「いいえ! 現役の魔法師の中にあれほどの魔法を使える者はおりません! 例え、現役の宮廷魔法師長であるバーシャ様が水魔法を使えたとしても、あそこまでの魔法制御は難しいはずです! それに、水魔法はお師匠様の得意技ではありませんか。すぐに王城から騎士が押しかけてきますよ!?」


「皆まで言うな、分かっておる! 覚悟はできておる!」


「はぁ……。それならば、これ以上私からは何も申しません」


「うむ、そうしてくれ……」


「しかし、騎士による尋問となると王城に連行されることになるでしょうね。そして、魔法に詳しい者に尋問されるとなりますと……。お師匠様、バーシャ様と顔を合わせる可能性が高いですよ?」


「……嫌味のひとつくらい聞かされる覚悟はできておる!」


「それならばいいのですが……」


「…………」


『と、とにかく、部屋に戻ろう。な?』


 うーん、なんだか重い空気になってしまったぞ。だが、爺さんが宮廷魔法師に復帰できる可能性が出てきたのはいいことだと思う。ただ、まさか弟子の扱いに変な慣習があるとは思わなかった。なんだよ、現役の時は弟子を取れないって。


 でも、爺さんは一度魔素が枯渇して宮廷魔法師を退職した身だ。だからこそクリスを弟子にした。まぁ、弟子はクリスだけではないみたいだけど。ともかく、多くの弟子を育てたわけだ。そんな爺さんがたまたま俺を手に入れて魔力を供給してもらえるようになったからといって、何の問題がある? むしろ、経験豊富なベテランが現役時代と同じくらいのパフォーマンスを発揮できるようになったのだ。受け入れられることはあっても、拒まれることはないと思う。


 今回の件で爺さんが不当に罰せられるようなことがあったら、俺は許さないからな。まぁ、俺に何ができるかという問題はあるが、それくらい俺は怒るという意味だ。


 クリスが言うには、王城には爺さんの息子のバーシャもいるのだと言う。何でも現役の宮廷魔法師で、そこのトップなのだとか。まぁ、優れた魔法師である爺さんの息子が優れた魔法師であることはなんとなく想像できたけどな。蛙の子は蛙ということだろう。


 しかし、魔法師って王城に勤めているのか。大変そうだな……。俺的には在宅勤務がいいのだが。爺さんも宮廷魔法師に復帰したら王城勤務になるのだろうか。そうなると、クリスの面倒は誰が見るんだ?


 うん、さっき爺さんが言ってたな。クリスを放ってはおけない。だが、王城に連れて行くことなんてできるのだろうか? 前世で働いていた会社でも流石に子供同伴は許してはくれなかった。というか、世間一般的に許されていないことのほうが多いだろう。


 そうなると、何か理由をつけるしかない。とはいえ、俺はこの世界の常識も知らなければ、当然王城の常識も知らない。ここは爺さんを頼るしかないな。良いアイデアがあればいいのだけど。


 そんなことを考えているうちに、再び俺たちは爺さんの部屋へと戻ってきた。クリスは爺さんと濡れた身体を拭くための布を用意していた。あぁ、洗面台の棚に置いてあった布だな。それを使って雨に濡れた衣服や髪を乾かす。そして、仕上げに爺さんが魔法で暖かい空気を作り出して髪を乾かした。ドライヤーの魔法だ。便利なものを知っているんだな。俺も魔法を使いたくなってきた。


「ふぅ、やれやれじゃわい……」


「お疲れ様でした」


「しかし、ユーマはこの短い時間でふたつものスキルを獲得したと言う。まったく、信じられんな。インテリジェンス・アイテム特有のものなのかな?」


『さぁてな、俺にもまったく分からん』


「じゃが、其方を身に着けることで魔法が再び使えるようになるとはの。本当に良い買い物をしたわい!」


 フォッフォッフォッ! と笑い声を上げる爺さん。それを嬉しそうに見つめるクリス。うん、俺も爺さんに買ってもらって正解だったと思う。あのとき神様にお願いして本当によかったよ。


『それで、魔法は教えてくれるのか?』


「もちろんじゃ。ユーマには魔素も魔力もある。そして、魔力を使用者に供給でき、魔素を吸収することができる。ということは、魔門に近い機能は備わっていると言えるじゃろう。魔法を使える可能性は十分にあると言えるな」


『おっしゃー! この世界のすべての魔法を覚えてみせる!』


「その意気じゃ! それから、ユーマを儂の弟子として認める。今後は爺さんではなく、師匠と呼ぶように!」


『分かったぜ、爺さん……じゃなくて、師匠!』


「ということは、私に弟弟子ができたのですか?」


「うむ。ユーマ、これからクリスは兄弟子となる」


『そうか! クリス先輩、よろしくお願いします!』


「クリス先輩、よろしくお願いします、と言っておる」


「先輩……。分かりました。私もユーマ様のことをユーマと呼ばせて頂きます。よろしくね、ユーマ」


『こちらこそ!』


 こうして、爺さんが俺の魔法の師匠となった。そして、師匠の弟子であるクリスは兄弟子となり、クリス先輩となった。つまり、これで俺もザンテ一門に弟子入りしたというわけだ。早く魔法が使えるようになりたいところだ。


 しかし、俺が魔法を使うとどういう状況になるんだろう。俺は師匠の目に貼り付いているわけで、そこから魔法が放たれるとなると、師匠に危害を与えることにならないか心配だ。


 俺的には師匠が目から魔法を放つみたいでかっこいいと思ったのだが、師匠もクリス先輩も同意してくれなかった。やはり、目元から魔法が出るというのは拙いという反応だ。だからといって、魔法を教えないというのはダメだぞ。約束したからな!


 ひとまず、魔法について勉強するのは今日はもうやめておこうということになった。まぁ、先ほど大変な目にあったばかりだしな。


 そろそろ昼飯時かと思ったが、どうやら二人とも昼飯は抜いているらしい。いや、それ確実に腹が減るでしょ?


「昼飯などもう何年も食べておらんからな」


「お昼に食事をするなんて贅沢ですよ」


『いや、腹が減るだろ?』


「水を飲んでおるから大丈夫じゃ!」


「お金に余裕があればお茶にすることもあります!」


『いやいや、どっちもダメだろ!』


 そんなやり取りをしていたら、屋敷の外に人の気配がした。それもたくさん。金物の擦れる音もする。これは金属製の鎧の音だな、リーファからもしていた。そう思っていると、師匠が窓から外を眺めた。


 うん、デザインが統一された白銀色の騎士鎧っぽい姿の一行が玄関の前に屯していた。全部で十人いるようだな。どうやら一行は馬に乗ってきたようで、屋敷の門前に何頭かが繋がれている。それを二人の騎士が面倒を見ているようだ。


「ごめんください! ザンテ・ノーザ様はご在宅でしょうか? 王城より参りました、第二近衛騎士団のマッケンであります! 先ほど王都を襲った豪雨について王城にてお話を伺いたいと、ライラ王女殿下の命を受けてやって参りました!」


 王城の「ほう」からやって来た詐欺師ということはなさそうだ。しかし、近衛騎士団って、王族を守るための騎士団じゃないのか? こんな雑用を任されるなんて、どうなってるんだ?


「ふむ、思ったよりも早かったな」


「ライラ王女殿下からの命令では断れませんね」


「出かける支度をしよう」


「そうしましょう」


『俺は留守番をしておく……』


「ははは、何を言う。ユーマがいなければ説明ができんではないか」


「さぁ、あまり待たせてはいけません。急ぎましょう」


 一難去ってまた一難だ。ぶっちゃけありえない。ため息が出そうなのを堪えて師匠とクリス先輩と一緒に玄関へと向かう。まさか、初の外出が王城になるとは思わなかったが、一度は見に行きたいと思ってたので、夢が叶ってちょうど良かったとポジティブに考えよう。


 さて、騎士たちは馬でやってきたようだが、俺たちは徒歩で向かうのだろうか。こちとら爺さんと子供だぞ。せめて馬車くらい手配してほしいものだが、その辺はどうなんだ?


 ちらりと門前を見た感じでは、それらしいものは見当たらなかったが、まぁいい。その辺も含めて、第二近衛騎士団が二人をどう扱うのか見極めさせてもらうことにしよう。




いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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