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タイトル未定2024/07/15 19:22

何日も頭の中の蝉の声に悩まされるニホン国首都知事オオイケ・リリィ。会議に出席している最中も聞こえるその声は…

ポンニチ怪談 その85 ムシのこえ

ミーン、ミンミンミン

ツクツクボウーシ、ツクツクボーシ

ジジジジジジジジ

カナカナカナカナカナ

蝉の声の大合唱が響きわたる

「うるさい、うるさい、うるさいわね!!」

「ち、知事?」

オオイケ・リリィはハッとした

首都庁舎、13階の大会議室。

締め切った大きなガラス窓はぴったりと閉まっている。

彼女の顔を心配そうに見る幹部職員たちの顔、顔、顔。

「よろしいですか、知事、次の議題に…」

副知事の声が聞こえる。

ああ、そうだ、今は会議中だった。しかも昼日中の都会のど真ん中の高層ビルの中にいるのだ。蝉の声など聞こえるはずがないのに

ミーン、ミンミンミンミンミン

頭の中に響き渡る、大合唱。

今だけではない、昨日も、一昨日も、その前から

この近くに蝉のとまる木々などない、メンジ神宮の周辺も、カンダダ球場の近隣も、首都庁舎近くの公園でさえ再開発で、多くの木々を切り倒し、再開発をして…

「…地区の再開発ですが、ミンイ不動産の担当者が次々と変わり…」

「どういうこと?…あの、開発は重要なのよ、何しろ」

ミンイ不動産には何人も首都庁の上級役人が天下りし、かなりの安値で首都の土地を売りさばいたのだ。失敗はもちろん、遅延は許されない、はずなのに、なにを…。

「その我々も重々承知はしておりますが…」

“おい、言った方がいいんじゃないか…”

“いや、さすがにそれは…”

知事と副知事のやり取りをみながらヒソヒソ声で話す職員たち。

「な、なんなの!はっきり言いなさい!!」

頭の中もうるさいが、内緒話のほうだって気になる、オオイケにとってはかなりの重要な案件なのだ、利権が、職が、かかっている。

「は、はい!その、担当者が亡くなって…、その、家族も」

職員が、飛び上がった。

「担当者が?まさか、過労死?そんなに大変なら人を」

しどろもどろに語る職員の口から

「その…、怪死というか…内側から、こ、昆虫に食べられた…とかいう話が」

「え?」

目を見張るオオイケ。だが、職員たちはこの驚愕の事実をすでに知っていたらしい。

“やっぱり、あれだよな”

“あんなに木を切ったんじゃ。だいぶ反対もあったのに”

“人にも虫にも恨まれて当然だよな”

“都民の役にもたたないような開発を幹部だの首都知事だのの利権でやっちまうんだから。相手先のミンイ不動産も天下りしたオッサンらもさあ、同罪だよな”

“ああ、知事と同じように、何日もぼうっとしてたらしい”

“その間に喰われたのかな、しかし、家族まで”

“とばっちりというか、でも利権の恩恵ウケてるしなあ。それに首都知事選でデマ吐いたマスコミだのの連中も似たような目にあってるらしいじゃないか。無茶苦茶をやったのを止めなかったのは全員同罪だろ”

“俺らも、かなあ、怖いよなあ”

“いや、さすがに幹部だけにしてもらいたいよ、だいたい俺は票は…”

「うるさい!何を…」

ゴボッ

オオイケの口から、何かが這出た。

一匹の虫が床に落ちた。

「ム、ムシ?」

「こ、これって」

「セ、セミ?」

騒ぎ出す職員たち。

その間も

「ア、アウウウウ」

苦し気にうめくオオイケ・リリィ首都知事の口から次々と蝉の幼虫が出てきて、床に落ち続け、やがて彼女の周囲はうごめく幼虫でいっぱいになっていく。幼虫たちは机や椅子の足を這い上がって、やがて止まった。

「こ、これってもしかして蛹になるんじゃ」

「そ、そうだよ、子供のころみたことがある、もう少しで蛹になって、蝉に」

「こ、こんなに沢山…、うわ、登ってきた」

「きゃー、いやああ」

「やめろー」

会議室中で悲鳴が上がる中、

オオイケ・リリィは背中をのけぞらせながら幼虫を吐き出し続ける。

数十、数百、数千の昆虫が床全体にひろがり、

もぞもぞと最適な羽化場所をもとめて登り続ける。

椅子や机から職員たちの体にも何匹も何匹も。

「ぎゃあああ」

耐えきれなくなって逃げだそうとする男性職員の足に何十匹もの虫たちが群がり、あっという間に彼は虫に覆いつくされた。他の職員たちの体も蝉の幼虫に埋め尽くされ、声を上げこともできなくなった。

やがて、最後の一匹を吐き出して、干からびたオオイケ・リリィの体がパタンと倒れた。

部屋中床も人も壁も窓も蛹に覆いつくされ、静寂が訪れた。


どこぞの国では四季があるだの、自然がどーの、こーのいうわりにはよくわからん開発を続けてゼツメツキグシュをどんどん増やしているようですが、ついには蝉もそうなるんですかねえ。そういえば、聞こえてるんでしょうかね首都では

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