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天ヶ室学園(5)


「でも良かったよ」


「何が?」


「友達できてて」


「あー。まぁ、エンジョイするって約束したし」


「愛華は良い子だよ。私が保証する」



 光誠は、紬と会話しながら校舎内を歩く。



 宮應(みやおう)(つむぎ)


 明るい茶髪ショートの、スレンダーな美少女である。制服を少し着崩し、おしゃれに気を遣う女子といった風貌を持っている。


 彼女と光誠は、一言では言い表すことのできない関係である。

 マンションでは隣室で、生活面においてかなり面倒を見てもらっているため、半同棲のような状態だ。


 立場的には、一応光誠が主人ということになっている。

 学園内ではタメ口だが、普段は敬語だ。


 とある目的の元で学校にも通わず、日々馬車馬の如く働く光誠を心配し、渋る彼を一喝してこの学園に通わせた張本人である。



「夜の仕事量、ちゃんと減らさなきゃダメだかんね」


「大丈夫。これまで頑張ってきたからもう大分材料もそろってるし、今後に向けての事務仕事だけでも多分いける。どうにか学園生活と両立させられそうだから」


「……あとはやっぱり、決定的な何かってヤツ?」


「そ。マジで出て来ないのよ」



 光誠の仕事について話しながら廊下を歩いていると、前方から近付いてきていた上級生に、突然声をかけられた。



「待ちたまえ、そこの一年生」


「……俺ですか?」


「そう。君だ」



 眼鏡をかけた、委員長っぽい雰囲気の少年だった。光誠に怯えることもなく、彼の背後に回り込んで背中に手を当てる。



「姿勢が悪いぞ。せっかく良い身体してるんだ。背筋を伸ばせ」


「は、はぁ」



 ソッチ方面(失礼)の人じゃないよな、なんて思いつつ、背筋を伸ばす。



「よし。引き留めてすまなかったな。行って良いぞ」


「はい。失礼します」


「あぁ。……っと、すまない。最後に一つ」


「何ですか?」


「名前は?」



 何で聞くんだ? やっぱりソッチ系? 目を付けられたとか……とぐるぐる思考しつつ、普通に答える。



「外空光誠です」


「『屋外』の"外"に、天にある"空"で『外空』?」


「……はい」


「なるほど。いや、ありがとう」


「では、失礼します」



 そう言って歩き去る光誠の後ろ姿を、メガネの少年は目を細めて見つめた。



「……普段は姿勢が良いな。わざとか」



 そうこぼし、背を向けて歩き出す。



「しかしまぁ、なんというか。どんだけ込み入った事情があるんだか」


















(聞き方怪しかったな。まぁバレるはずはないだろうが)



「どうかした?」


「いや、なんでもない」



 学園から出て、駅への道すがら、考え事をしていた様子の光誠に、紬が声をかける。

 

 心配させたと感じた光誠は、切り替えて元気よく言った。



「よし! まだ時間余裕あるし、二人でどっか適当な店で打ち上げしようか!」


「良いけど……眠気大丈夫?」


「大丈夫大丈夫!」





 結局、食後に光誠は眠気に敗北した。

 紬はそんな彼に膝枕をし、時間ギリギリまで頭を優しく撫で続けたのだった。



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