スキルはリモコン?
ドーンという音と共に入る子供。
注目を浴びないはずもない。
恐る恐る目を開くと、そこには綺麗なお姉さん。
他にも優しそうなお爺さんもいる。
「大丈夫?坊や、それにお嬢ちゃんも」
「すいません、大丈夫です!」
「今日はどうしてここに来たの?」
綺麗なお姉さんが聞いてくる。
「自分の能力が知りたくって、それでアスル……あっ、この子に聞いたら、教会に行けば良いって言われたので……」
「そうだったのね~。じゃあこっちに来て!今すぐ見てあげるわ」
そう言って、彼女は手招きをしている。
ただ俺はどうも起き上がれない。
さっきからずっと重い何かが、俺の背中に……。
「何よ!別に重くないでしょ」
上からアスルの声がして、急に軽くなった。
ていうか聞こえてたのか?さっきの。
「ごめんって。ただ空気よりは重い訳なんだから……」
「そういう事じゃない!」
あ~あ。怒っちゃったよ……。
確かに俺が悪いんだけどね。
「行こ!」
俺は少し強引にアスルを引っ張る。
能力見れば少しは機嫌も治るんじゃないか?
なんて考えた俺は、アスルを連れて、さっきのお姉さんのところに向かった。
「何か揉めていたようだけど、大丈夫?」
「大丈夫ですよ。そんな大した事でもない……」
「大丈夫です!!」
急にアスルが喋ったかと思ったら、それだけ言ってまた黙ってしまった。
「喧嘩はダメよ。友達は大切にしないと」
「はーい」
「じゃあ今から、能力を測るわね。
そっちの彼女は良いの?」
「私はもう前に測ったから……」
「そうだったの?じゃあ君、この水晶玉に手を置いて」
そう言ってお姉さんは頭くらいの大きさの水晶玉を何もない空間からいきなり取り出した。
「うわぁ、大きい……」
「大きいでしょ。でも王室にはもっと大きいのがあるのよ。これはまだ小さい方」
「どこから出したんですか?それ」
「これ?これは私のスキルの一つよ。あなたも今からわかるから。じゃあ手を置いて」
俺は大きな水晶玉の上に手を置いた。
水晶玉はとても温かかった。
それに何やら、自分の体がスキャンされているような、そんな気がした。
それから1分くらいして、いきなり手の甲から画面のようなものが飛び出してきた。
お姉さんはそれを手に取り、何やら色々と書いていた。
「嘘……。何これ……?」
俺に何かあるらしい。
何度も俺と画面を見比べる。
なんだろう?
別に普通の少年だと思うんだけど……。
お姉さんは言う。
「あなたのスキルおかしすぎるわ」
あなたのスキルがおかしい?
えーー!!
やっぱり平穏な生活は運命的に無理なのか……。
俺はお姉さんに自分のスキルを見せてもらった。
そうするとさっきの反応が普通だったことがわかる。
●スキル
・機械に愛されし者
・超成長
・限界知らず
・夢知
・リモコン etc……
訳がわからない。
“超成長”はまだわかる。
ただ“リモコン”とかはもう何もわからない。
本当に声を大にして言いたい。知るかって。
そりゃね、お姉さんもそんな反応だよ。
「……」
「言いたいことはわかるわ。でも超成長は良いスキルよ。それにSランクのスキルが二つもあるみたいだから、もしかしたら凄いかもしれないし……」
「そうだよ!Sランクのスキルなんて、勇者様にしか持てないんだから!
その一人に選ばれたんだよ!」
後ろからアスルが言う。
「でもどんなスキルか分からないと使えないだろ?それに使えるかも分からないんだし……」
「大丈夫だよ!きっとリクなら」
そんな根拠なく言われてもな~。
でも、女神様にも会ったんだし、きっと大丈夫だよな。
「それで、冒険者登録って出来るんですか?」
元々の予定はそれをすることだ。
だけどどうやらそう簡単にはいかないらしい。
「今すぐは無理ね~。だって今7歳なんだってね。16歳にならないと登録できないの。だからこの町で修行すると良いわ」
と、お姉さんに言われてしまった。
まぁこんな歳から冒険者なんてのも、大変だ。
なので、俺はアスルと一緒にこの町で、暮らすことにした。
アスルも一緒に居たいと言うので、こうなったのだけど。
出来れば会った時に強くなってる、みたいなのをやりたかった。
この世界のことを知らないから、ありがたいことはそうなんだけどね。
それから俺たちはこの町で、修行に励んでいた。修行→休み→修行。
それの繰り返しだった。
そのせいもあって、俺は夢を見た。悪夢だ。
しかも二つも見ると言う豊富なバリエーション。
一つ目は単純に、時を忘れて修行をやり過ぎて、結局冒険者になることなく、寿命が来ると言うものだ。
至って普通な悪夢だ。
問題は二つ目にあった。
それが魔王によって倒されると言う夢だ。
この世界に魔王はまぁ勇者がいる時点で、テンプレだろう。
ただ何故俺が魔王と戦って倒されなくてはならないのか、と言うことだ。
それに俺はSランクのスキルを二つも持っている。
それはとても珍しく、ほぼ無敵に近いはずだ。
修行もアスルとこんなにしている。
レベルという概念が無いため、どれくらいの成長かは分からない。
ただ結構強くなっていると思っている。
という事で、忘れることにした。
夢は所詮夢だ。起きたら忘れてしまうような、そんな存在だ。
そしてついに16歳を迎えることになった。
やっとだ、これで冒険者になれる。
俺が強えんだって、世界に発信できる。
最強勇者はここだって、そう言わしめれる。
修行はきつかった。
だけどアスルと一緒だったから良かったんだ。
やっぱり仲間は大切だ。
スキルに“ボッチー”なんてのがあったけど、知らないな~、そんなのは。
「やっと冒険に出れるね!」
アスルが嬉しそうに俺に話しかける。
アスルは見た目も中身もすごく成長した。
エルフ族は大人になるのが早いらしい。
それからその大人時代が長いのも特徴だ。
「ああ、やっとだよ!でもまだあんまりスキル使いこなせないからな~。それが心配だけど、大丈夫か」
「そうだよ、きっとリクなら大丈夫!」
これから俺たちの冒険は始まる!!
世界には何が待ち受けているのか?
魔王だって絶対倒す!
登録を終えた俺たちは、すでに町を後にしていた。
最初の目標は“はじめの遺跡”だ。
そこにはあまり強くないモンスター達がいるらしい。
それもあってはじめのと、付いているらしい。
「どうせ、そんな遠くないんでしょ?」
俺はアスルに聞く。
はじめ的なのが付くものは大抵近くにあるものだ。
「2日もあれば着くと思うよ。ただ遺跡は人が多いし、あと一人くらいは仲間がいると思うよ。私たちだけじゃ、少し厳しいかも」
そうなのだ。
結局修行の間に、仲間を作ろうと思っていたのだけど、誰もいなかったのだ。
まぁ募集しているとこやら、ソロの人だとかもいそうだから、遺跡前の所で探してみることにしよう。
それからまぁ特に何もなく、はじめの遺跡がある町に着いた。
この町はどうやらはじめの町と言うらしい。
何とも区別のしにくい名前だ。
しかし町ははじまりの町同様賑わっている。
それに沢山の店もあり、見応えもありそうだ。
「遺跡ってどこにあるんだろう」
アスルに俺は聞いた。
「分かんない。だけど多分人が多い所だと思うよ。ここの遺跡は毎日沢山の人が訪れるらしいから」
と言うことで、とりあえず人の集まっている場所を探した。
そうしたら、明らかに遺跡じゃないような気がするが、人だかりを見つけた。
「あそこじゃないよなぁ?でも何かやってるみたいだし、行ってみよ」
俺とアスルはその人だかりに入っていった。
すると中心には二人の人がいる。
一方は男の人で、もう一方が女性だ。
どうやら何か揉めているようだ。
「俺とパーティー組んでくれよ。良いだろ?どうせ一人なんだから」
「イヤよ、知らない人と組むなんて。それにあなた強いの?」
「あぁ?おいおい、俺を誰か知らないのか?俺はDランク冒険者だ。ここら辺じゃあ強い方だぞ!」
Dランク冒険者は、やっと一人前と言われるラインだ。
ただ、この辺りにはそれ以下の人ばかりだ。
当然はじまりと名のつく場だから当然だが。
「あなたがDランク?私でも勝てそうだわ。一戦勝負してみない?私も強いのよ」
「イイぜ!やろうか。ただ俺が勝ったらパーティーを組んでもらうぞ!」
「イイわよ。ただ私が勝った場合はもう私に関わらないでよね」
と言うことでいきなり決闘が始まった。
俺は小声でアスルに聞く。
「日常なのか?決闘が行われるのは」
「いえ、ただこの辺りは他に比べると多いかもしれません。弱い奴ほどよく吠えるってよく言うからね」
毒舌だ……。
てかこんなキャラだったか?
そんなことよりも決闘が始まる。
決闘が始まったが、秒殺だった。何と女性の圧勝だ。
男は一歩も動くことなく、気絶してしまったのだ。
すると歓声が周りから上がる。
そして観客達(ほぼ野次馬だが)が女性の元に駆けていく。
ただ明らかに女性の方は困惑しており、その時俺と目が合った。ほんの数秒だ。
その後はすぐに人に隠れてしまった。
「良いものが見えたな~。やっぱり世界には強い人が沢山いるんだな」
「そうだね……」
アスルが何故が元気がない。
「どうした?元気ないけど」
「いや~、何でもないよ」
と言った直後、彼女のお腹が鳴った。
すると顔を真っ赤にして、
「昼食にしない……?」
と恥ずかしそうに言った。
それから俺たちは少し早めの昼食を取ることにした。
店を探していると、たまたま目の前に食べ物屋さんがあった。
「あそこはどう?アスル」
「美味しそう~!いいねー!あそこにしよ♪」
中に入るとそこには……
「さっきの……」
そこにはさっきの女性がいたのだ。
決闘に圧勝し、目が合った、あの。
「さっきはお見苦しい所をお見せしてしまってすみません」
「いえいえ、こちらこそ良いものを見させてもらいました」
何故か敬語で始まるこの会話。
アスルはというと、
「早くご飯食べよう?」
なんて言っている。
本当にかわいい奴だ。
「一緒に食べませんか?」
彼女は俺たちにそう言った。
俺としては大歓迎なのだが、アスルが何と言うやら。
なんて思っていたら、意外にもオッケーだった。
と言うことで、彼女と一緒に食べることになった。
「まだ自己紹介してなかったですね。俺はリク。そしてこの子がアスル」
「私は、スイと言います。宜しくお願いします!」
「こちらこそ、よろしく!」
「よろしくね!スイ!」
「アスルさんもよろしくね!」
なんて他愛もない話をしていた。
その時間は本当にあっという間だった。
「ご馳走さまでした。すみません、奢って貰っちゃって」
「良いんですよ。お話も沢山出来ましたし、それに私の方が年上ですから」
「ソロなんですか?」
「いえ、所属しているところがあるんですけど、今は少しお休みしているんです。それでこの町に来ていたんです」
「そうだったんですね。やっぱり強いんですね!それじゃあまた何処かで会えそうですね。また会えたら、今度は決闘しましょう」
「喜んで。いつでも良いですよ~」
それから俺たちは彼女と別れ、遺跡に向かった。
「あーー。名前聞いてない……」
「誰の名前?」
「さっきの女の人の。まぁいっか、また会えるだろうし」
一夜明けた朝。
俺たちは昨日と同じように、遺跡の前で仲間を探していた。
そこに昨日の女の子がやってきた。
「あれ?昨日の子だ。どうしたんだろう? 」
しかも真っ直ぐ俺の方に歩いてくる。
「昨日はどうも。
何か仲間を探しているって言ってたから、私ソロだから出来れば入れて欲しいと思って。
多分今日もいるんだろうなって思ってここにきたの」
「仲間になってくれるの!? 」
「ええ、何か良いこと何起こりそうな気がするの! 」
「ありがとう! 本当に嬉しいよ! これでようやく遺跡に入れるよ」
ということで俺たちはようやく遺跡に入れることになった。




