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ホラー短編シリーズ

異界の灯り

作者: 仲仁へび



 昼を歩いていると思っていたら、もう夜になってしまった。


 時間の経過を早く感じるようになったのは、人生に繰り返しばかりが訪れたからだろう。


 子供の頃のように、目に映る全てが新鮮であった頃は違った。


 あっという間に過ぎて見えても、思い返せば昼の中身は濃密だった。


 大人になるという事は、こんなにもつまらない事だったのか。


 この夜もまた、すぐに過ぎ去るむなしい時間だろう。


 時の流れを思うことが苦痛になって、どれくらいの時間が過ぎただろう。




 だから、引き寄せられたのかもしれない。




 きれいな明かりがある。


 目の前に、とてもきれいな明かりが。


 子供の頃に祖母からもらった、ビー玉のようだった。


 太陽の光を反射して、手のひらで輝く小さなおもちゃのよう。


 手に取りたくて、どうしようもなく欲しくなって、吸い寄せられるように向かった。


 あきらかにあやしいけれど、どうなるかなんて考えられなかった。


 考えても、意味がないと思ったのか。


 日常にもはや、未練を感じなくなってしまったのだろう。


 夜の道が段々と明るくなっていく。


 それは無意味に過ぎ去る昼の明かりではなかった。


 頭の中に染み込むような、真っ白な光だ。


 光は、電柱やアスファルトの道を消し去っていって、すべての色を白へと変えていく。


 一歩、一歩進むごとにその白い光は強くなるばかりで、しまいには自分の姿さえも見つめられなくなった。


 あきらかに異常で、あきらかに危険。


 それでも、戻らず、引き返さなかった。


 そうできるようなものは、もはや背中には存在しなかったからだ。


 



 やがてたどり着いた白の終着点。


 意識すら吹き飛ばすまっさらな光は中に立って、ようやく振り返った。


 さきほどまで無為な時間を過ごしていた、夜の世界を。


 長く生きてきた、人の世界を。


 様々なしがらみや思い出がある、その世界を……。


 静かに見つめる。


 その心に波風は存在しない。


 小さな黒い点のようなものになってしまったそれは、しかしやはり何も戻そうとせず、引きとめようとしなかった。



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