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vtuberさんただいま炎上中  作者: なべたべたい
第2章 vtuberさん偽物現る
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17話 久しぶりの再会

よくわからない炎上の仕方をしてから1週間後、最近はハジメやこの前の配信のお陰で少しずつだがファンの数も増えてゆき、楽しく配信をしていたのだが、その配信の感想を調べていると何やらまだよく分からない理由で炎上しており、それも前よりもその範囲が拡大している様に思えた。


それに最近は俺が何故かコラボをブッチしたなどがよく書き込まれる様になったのだが、今俺とコラボしているのはハジメだけで、念の為ハジメに俺がコラボを断った事があったかと聞いてみたところ、今のところは全部やっていると帰ってきたので、やはりどういう訳で俺が炎上しているのかがよく分からなかった。


「いっそのこと、リスナーに聞いてみるか?」


そんな事を考えながらも原因を調べていると、仕事用のスマホに誰かからメッセージがきたのか、通知音が鳴り響いた。


ハジメか?と思いながら目線はパソコンに向けながら、手探りでスマホを探し硬いものが指に当たりそれを持ってきて、そのままメッセージを確認するとまさか予想もしていなかった運営からのメッセージで、反射的にスマホを投げ捨て、椅子からも飛び降りスマホから極力距離を離れた。


それと同時に俺の中には一つの疑問が浮かび上がった。


それは、


「何故今連絡が来たんだ?」


そう、今このタイミングで運営が俺に連絡をする必要性が全くと言って無いからだ。


もし前の炎上戦隊の件ならもうお偉いさん達の前に引き摺り出された後だし、今の謎の炎上だって今までの炎上に比べたら弱火でほとんど害のないものだし、それともまさか、炎上戦隊のアーカイブをそのままにしているから?


いや、それこそ無いな。


それだったらもっと早くに連絡が来ているはずだ。


結局何故連絡が来たのか分からなかったので、覚悟を決めてそのメッセージを見ると、一言「九重ホムラさん話したい事があるので一度事務所に来てください」と書かれていた。


名指しという事は送り間違えでも無いし、本当になんで呼び出されるのか分からなかったが、流石に自分でもこの前の配信はやり過ぎたという気持ちもあるので、ここは黙って従う事にした。



そうしてこんな短期間で事務所に訪れるのは、久しぶりだなと思いながらビルの中に入り、呼び出しの通り集合場所である控え室で待っていると、フラフラとした足取りでなんとかまっすぐ立とうとしている社員がこちらに近づいてくるのが、扉についているガラス窓から見えた。


大丈夫かあの人と思いながらその人物を見ていると、その人物はゆっくりとした足取りでこちらに近づいてくると、俺が入っている控え室の前で立ち止まり、部屋の扉をコンコンコンとノックした。


いや俺に用があんのってお前かい!


と思いながらも決して口には出さずに俺は静かに一言、「どうぞ」と言うとその社員は失礼しますと言いながら、ゆっくり丁寧に部屋の扉を開きおぼつかない足取りで部屋の中に入ってきた。


その際足を自分の足に引っ掛けて転びそうになったので、咄嗟に手を貸すとその時今までは俯いていたせいでわからなかったが、その社員の目の下にはパンダの様なくっきりとした隈があり、本当にこの人と言うかこの会社は大丈夫なのか?


と思いながら俺はその人を近くの椅子まで案内した。


案内してもらった社員は感謝の言葉を述べながらも、時間がないのか直ぐに今日俺を呼び出した本題を話し始めた。


「本日ホムラさんにわざわざ来ていただいたのは、少し確かめたい事がありましたので」


そう言うとその社員は手にずっと持っていた、3枚ほどの大量に人の名前が書かれた紙を俺に見やすい様に机の上に並べた。


「これは?」


軽く見てもよく分からないどころか、ここに書かれている名前に一つも覚えがなかった俺は、その社員さんに聞き直すと、社員さんはこの名前についての説明を始めた。


「やはり身に覚えがありませんでしたか。コレはここ最近で九重ホムラにコラボに誘われたのに、当日になっても本人が現れなかったと言う、声明を我々に言ってきた個人で活動していらっしゃるvtuber達ですね」

「……は?」


いや何それ?俺がコラボに誘った?どゆこと?


そう俺が困惑している様子を見た社員は安堵からかホッと息を吐き、こちらをはっきり見つめて笑顔で


「やっぱりホムラさんがそんな事する人じゃなくて安心しました」


そう発した。


そしてハッキリとその社員の顔を見た俺は思い出した。


以前よりも数倍やつれており、そのせいで以前までは色々な機材を運んでいた事もあり、筋肉質だった体は今や簡単に折れてしまいそうなほど細くなっており、声もハッキリと遠くまで聞こえる声だったのが、少し掠れた声になっており、何より顔が前はそこそこのイケメンだったのに、今はその見る影もなく死にそうな顔になっていた、為築くのに遅れたがこの人は、ユメノミライが買収される前まで、応募してくる社員が全くいなかったせいで、俺たち一期生全員の動画の編集を1人でやったり、俺たちの無理難題と言ってもいい配信内容もを何とか実現可能まで持って行っていたりした、美人な奥さんと可愛らしい息子さんを持った、俺たち一期生を裏から支えた1人なのだが、あんなにもブラック企業さながらの仕事量をこなしていた時でさえ、もっと元気な姿だったのに今では元気の下の字もない様な姿になっていた。


「もしかして園野さんですか?」


その代わりようから全く信じられなかったが、俺がそう聞くと社員は力無い声でハハハと笑いながら、俺の問いを肯定した。


「いやいやいやいや、どうしたんですかその顔と言うか体は!」

「ハハハ、ちょっと人手不足でしてね、実は自分もここ数ヶ月家に帰れてないんですよね」

「いや、ちょ……」


久しぶりに会った相手から、びっくりする様な爆弾発言をされた俺は、その衝撃から一瞬思考が停止した。


そんな固まっている俺をよそに、先程までの緩い顔から真剣な顔へと変わった園野さんは、俺に対していきなり頭を下げ始めた。


「ホムラさん、申し訳ありませんでした。」

「え?な、何がですか?」


何故今自分が謝られたのか分からず、それよりもどちらかと言うと言うと、今の様子を見るに俺やユメノミライが園野さんに謝らないといけない様な気がするんだけど……


「私は昔からホムラさん、いや他の一期生の面々を近くでよく見ていました。なのに、それなのに自分はホムラさんが大変な時に仕事が忙しいからと、ホムラさんに対して何も出来なくて、それどころか上の意向に従って、ホムラさんと他の皆さんを極力関わらせない様に動いたりと、ホムラさんを孤立させることに加担したんです」


そう涙を流しながらに謝る園野さんを見て俺は、それは社会人なら当たり前なのでは?と1人考えていた。


と言うか園野さんは奥さんやまだ小さなお子さんも居て、稼ぎ頭なのだから首を切られたらダメなのだから、仕事を一生懸命するのは当たり前だし、何より他のメンバーは俺から離れてからの方が、圧倒的に伸びてる訳だから、俺個人としては悲しいけど園野さん含め運営の方針は正しいと思ってるので、別にその辺は俺は気にしていないのだが、それよりも俺的にはそんな事よりも、小さなお子さんが居るのに園野さんが何ヶ月も家に帰ってない方が、問題に感じるのだがコレはおかしな事なのだろうか?


そんな事を思いながら俺は椅子から降りて、片膝を地面につけて項垂れている園野さんの肩に手を置いて、


「大丈夫ですよ園野さん。俺今でも普通に楽しくvtuberやってますから、それに最近は少しずつですけどファンも増えてきてるんです。そら今か昔どっちが楽しかったかって言われたら、まだ昔の方が伸び伸びいろんな事ができて楽しかったですけど、だからと言って今が楽しく無い訳でも無いので、その辺は安心してください。それに俺から見ればどっちかと言うと園野さんの方が大変そうに見えますよ?数ヶ月も家に帰ってないって言ってましたけど、奥さんやお子さんは大丈夫なんですか?」


俺がそう聞くと園野さんは泣きながらも、震える手でポッケから自分のスマホを取り出し、そのホーム画面を見せてきた。


そこには今よりかは少しマシな状態な園野さんと、その奥さんと2人の間には3歳になる可愛らしい男の子が写っていた。


「大丈夫ですよ、この通り今でも妻とは仲が良いので。それに最近は妻も忙しいのに、わざわざ自分の為にお弁当を作って事務所まで持ってきてくれますからね。まぁでもその度に他の子も良いけどホムラくんもしっかり面倒見なさいよって、怒られてるんですけどね」

「なら、今度奥さんに会った時には、俺はこれからどんどん上に行っていつかは昔みたいにvtuber界のトップに立つ、って言ってたとでも伝えといてくださいよ」

「ハハハそうだね、今度妻に会った時にでも伝えておくよ」


その後も俺と園野さんは久しぶりにあったと言う事で、少し先にあるユメノミライの初のライブの事や昔の事などを少し話していたのだが、そろそろ園野さんが仕事に戻らなくてはいけない時間になり、それに合わせて俺も家に帰ろうと帰りの準備をしていると、またしても園野さんが真剣な顔でこちらを見つめてきた。


「どうかしたんですか?園野さん」

「ホムラさん何か自分にできる事はありませんか?」

「できる事とは?」

「ホムラさんに大丈夫だと言ってもらえても、やはり自分で自分がやった事が許せなくて、今更なんですが少しでも罪滅ぼしと言うか、どうにかホムラさんの手助けをしたくて……」


そう言う園野さんの表情は真剣そのものだったのだが、正直今のところそこまで困ってることもないし、俺的にはこれ以上園野さんの仕事を増やしたく無いどころか、今すぐにでも家に帰って休んでもらいたい気持ちで埋め尽くされているのだが、多分その事を園野さんに言ったところで、自分が休んだら他の人に自分の仕事の皺寄せがいくとか考えて聞いてくれないと思うので、出来るだけ簡単で俺の役に立つ様な仕事はないかと考えたところで、最近俺が謎の炎上をしている事を思い出した。


どうせコレも俺のアンチが嘘をベラベラ並べてるだけだろうとは思うけど、一応俺は困ってるし何より運営が力を入れたら犯人なんて一瞬で見つかると思うし、コレで園野さんの気も晴れると良いなと言う気持ちで、解決した時の達成感が大きくなる様に出来るだけ深刻そうに園野さんに相談すると、園野さんは昔の様に自分の胸を叩いて「任してください!」と言うと、俺に一度頭を下げるとすぐにどこかに連絡を繋ぎ、何やら色々と話しながら部屋に入ってきた時の様な暗い顔ではなく、昔の様な明るい顔で部屋を出て行った。


そしてその様子を見送った俺は、


「やっちまったぁぁ!園野さんたちが家に帰れない理由って、絶対に俺のせいじゃん!くそッ過去の俺もっと考えて行動しろよ、馬鹿野郎がぁぁ!」


1人控え室で過去の行いを悔いながら大声で叫んだ。

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